Semih İdizコラム:西側・シリア・トルコ
2011年05月09日付 Milliyet 紙

アンカラでは、政治家たちの間でも外交官の間でも、もはやバッシャール・アル=アサドがシリアの動乱を解決できるとは信じられていない。先週、リビアに関する会合に出席するため飛行機でローマに向かう途中、ダヴトオール外相が述べたこともこれを裏付けている。

アスル・アイドゥンタシュバシュ氏の報じたところによると、ダヴトオール外相は「バッシャール・アサドは改革にノーと言っているわけではないが、実施を引き延ばせると考えている」と語り、「しかしすでにいくつかのことを為すのに手遅れになっている。もはやそれらを実行したところで無意味になってしまった。今シリアに望んでいるのは、国を揺さぶるような施策である」と続けた。

このように、政府にはまだアサド大統領を見放すつもりはないようだ。これをエルドアン首相とアサド大統領との個人的付き合いと結びつけるのは間違っている。公正発展党(AKP)政権は、必要とあらばカダフィを見放したようにアサドも見放すだろう。

けれども今、それを行なうことはできない。よく言われているように、これから起こりうるシリアでの内戦は、チュニジアやエジプトや、イエメンやリビアのケースとは違う。シリアの内戦がシリア国内を分裂させるに留まらず、中東をも深刻な危機に陥れるであろうことは、皆の共通の理解である。

このような状況であるから、トルコは、たとえ望みは薄くても、改革を速めるようアサド大統領を説得しようとしつづけるだろう。西洋諸国も同様のアプローチを行なっていることは興味深い。要するに西洋諸国もまだアサドを見放すつもりはないのだ。

アメリカとEUは、シリアに対し一方的に制裁措置をとることを決定した。非常に重要となるその内容も、このことを示している。アメリカが10日ほど前に決定した制裁でも、EUが金曜日に決定した制裁でも、バッシャール・アル=アサドは名指しされなかったのだ。

こうした制裁は、バアス党の重要人物とアサド大統領の側近数名を対象としている。また、同国の石油産業と輸出部門を制裁の対象としていないことも注目に値する。このことからも、シリアを崩壊させようといった意図はないことが分かる。

アメリカやヨーロッパの政府関係者らは、この興味深い状況の理由をはっきり説明せず、ただ「今後の展開によってアサド大統領も制裁の対象に加える可能性がある」と述べるにとどまった。

シリアの「絶対的指導者」なのだから、アサド大統領は今日までの事態の責任を自らとらなければならない。にも拘わらずこのような運びになったいうことは、もちろんそこに重要な意味があるのだ。ここで我々は、これまで気に留めてこなかったある点に注目しなければならない。

アサド大統領は世俗的で西洋的な生活様式に慣れ親しみ、条件が許す範囲で常に西洋と近い距離を保ってきた。このことは、ヨーロッパへの公式訪問や数々の声明、アメリカについての発言に垣間見ることができる。

他方で、常にアサド大統領に圧力をかけていたとはいえ、アメリカ政府もシリア政府との外交関係を断ち切ったことは一度もない。それどころか2005年に「代理大使」レベルまで下げた外交関係を、今年の初めに大使レベルまで上げていた。

金曜日にロイター通信が報じたところによると、「なぜアサド大統領の追放を呼びかけないのですか?」という質問に対し、アメリカ政府関係者は「オバマ大統領はシリア国民を差しおいて振る舞うことを望んでいないので」という不明瞭な説明を返した。

これは決して納得できる説明ではない。ただ明らかなのは、アメリカ政府もトルコ政府と同様にシリアの事態を見通せず、アサド大統領がさっさと退陣してしまったら次に何が起きるのか予測できずにいるのだ。要するに、ここでは「知らぬ悪魔よりは馴染みの悪魔」の法則が働いている。

さらに奇妙なことに、シリアの天敵であるイスラエルさえ、アサドの退陣を「危険」と捉えている。この動きは、計算された賢明な政策というより、不透明な現状に対し施すすべがないことを示している。

そんな中でも上に挙げたダヴトオール外相の言葉は、動かしがたい現実を的確に指摘している。アサド大統領はほんとうに、いくつかのことを為すのに手遅れになってしまった。もはやそれらを実行したところで無意味である。だから今になってアサド大統領に助力を乞うことは、不可能なことを望んでいるようにみえる。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:22437 )