Ferai TINÇコラム:アラブの春とトルコの新たな役割
2011年05月09日付 Hurriyet 紙

進展を注意深くみていくと、次の時代は周辺諸国において脱・独裁の時代になることは疑いの余地がない。

チュニジア、エジプト、リビアに続きシリアでも(民衆蜂起が)始まったが、他の諸国もこれに続いていくかもしれない。
健全な民主体制の構築のためには、ことを急いではならない。トルコは、この不確定要素の多い移行過程に対し、冷静に、対応の準備を整えている状況にある。
この変化の過程は、トルコと周辺地域との関係が新たに形づくられていく過程となるであろう。とりわけ、現政権下において、中東におけるトルコの影響力は増したのではなかろうか。
そう、増している。
トルコは建国以来初めて、2009年に、中東諸国との国際貿易において85億ドルの黒字を計上し、売買高は300億ドルに達した。
これらは非常に重要な進展である。
しかしトルコは、他の諸国同様、「独裁者」と良好な関係を築くことによってこの好況に至ったのである。経済に関しては、最終決定システムが入札ではなく各国リーダーの独断であるため、トルコに黒字という新境地をもたらしたこの歩み寄りのプロセスは「独裁者」にとっても利益をもたらすものとなった。
そして彼らの利益はといえば、トルコのおかげで国際社会における「合法的な」稼ぎとみなされたのである。
イランのアフマディネジャド大統領しかり、シリアのバッシャール・アサド大統領しかり、スーダンのアル・バシール大統領しかり・・・。

現在、独裁者は1人、2人と失脚している。カダフィー大佐後のリビアでトルコの投資がどうなるかは不透明である。カダフィー大佐との間の合意がどうなるかも疑問符がつく。
今後、トルコは独裁者と交わした合意をどうするかという問題を解決しなくてはいけない。
しかし問題はこれだけではない。
独裁の後に訪れる移行期間に、トルコが担う役割、そしてトルコに期待されているものはどのようなものなのであろうか?
トルコは周辺地域のソフトパワーとして影響を与える存在となるべきである。
他に方法はない。
こうした国々の新しい指導者階層や市民の下で、トルコの80年にわたる民主主義の経験、EU加盟の選択、市民社会の創設は最大限に活用されることであろう。
保守的な人々が、イスラーム文化や伝統に基づく独自の民主主義があるといい、中東やアフリカの変化がこの形での民主化を選択すると主張しても、そうはならないであろう。
保守派の主張は、一時的にはいくつかの国において、支配的になるかもしれない。しかし、中東において権利や自由、平等に基づく真の意味での民主的な変化がないままではアラブの春は開花しない。
独裁者から逃れるために一歩を踏み出した人々の一部はもう気づいているし、残りの人々も戦いの中で民主主義という目的にはこの道からしか到達できないと気づくであろう。

トルコは、市民のほとんどがムスリムであるからでもなく、軍隊の力によってでもなく、また経済的な可能性といったものからでもなしに、変化をつかもうとする人々に影響を与えることができるのだ。
第2次世界大戦の後、アメリカが興隆していくにあたり、最も影響力をもつ切り札の1つとなったのがハリウッドとともに作り上げたアメリカンドリームだった。
トルコが、上で述べた全ての特徴によって、ここ最近、この地域においてターキッシュドリームを生みだす兆しもある。
観光シーズンのイスタンブル、アンタリヤといった大都市に大挙して押し寄せる人々やそこでのライフスタイルに対する羨望といったものをみれば十分分かるであろう。
しかし、ソフトパワーで周辺地域の各国へ影響力を発揮する国となるためには、トルコはまず何よりも自国の問題を解決しなければならない。クルド関係の問題や暴力を終結すること、検閲をやめることは、解決すべき問題の列挙の冒頭に来るものである。

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( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:22444 )