オルハン・パムク、「エルドアン首相の最大の功績はエルゲネコン地下組織捜査」
2011年05月14日付 Milliyet 紙


オルハン・パムクはエルゲネコン捜査を全面的に支援し、軍の政治への影響力を減らしたことに、エルドアン首相首相の最大の功績だと語った。

ノーベル文学賞作家のオルハン・パムクは、公正発展党(AKP)は軍の力を弱め、このことがレジェプ・タイイプ・エルドアン首相の最大の功績だと述べた。エルゲネコン捜査を全面的に支援し、世俗主義のためのクーデターは防がれたとするパムクによれば、今の政府は信仰心のある政治家達から構成されているが、国はより宗教的な体制へは向かってはいないという。

パムクのもうひとつの批判は、刑務所に収監されている新聞記者達の件である。パムクは、新聞記者たちが収監されていることを受け入れることが出来ないという。

パムクはアメリカのPBSテレビの有名なインタビュアーであるチャーリー・ローズの質問に答えた。
パムクは、トルコが文明国の仲間入りするための歩みからそれたり、ムフタファ・ケマル・アタテュルクの近代文明に到達するという目標を裏切ったというような見方はしていないと述べ、「しかしながら、(トルコの)このプロセスはゆっくりと進んでいる。私たちが望むテンポでは進んでいない」と語った。

パムクは、与党の地位にあるAKPは、以前の与党に比べてより信仰心の強い政治家から構成されているが、だからといって、トルコがより信仰を重視する体制に向っている とは思わないと述べた。

パムクは、トルコでの生活様式と文化的構造では、急激な変化が生じていないと述べ、また「世俗主義を擁護に不安はあるが、私の考えではトルコがより宗教的にはなってはいない。今から10~20年前の街の通りでは酒を飲んでいる人たちを見かけることは出来なかったのだから」と語った。

■スカーフを身につけた女性の数が減ったか増えたかを判断の基準にすべきではない

パムクは「しかし以前よりスカーフを身につけた女性が見られませんか?このことをどう説明されますか?」との質問に対し、「スカーフを身につけた女性の数が少ないか、或いは多いかということを、この問題の判断基準にしてはならない」と述べた。

「私の価値観では、皆が何を望もうとも、それをできなくてはならない」と言うパムクは、「軍が、我々に、もし大学や病院に入ることを望むのなら、スカーフを外せと言うべきではない。トルコ人女性達に二級市民的な扱いをするべきではない。私は、自由、表現の自由、民主主義、世俗主義、文化及び社会的な価値が、大事だとおもう。これらのことを我々が自分のものとするとき、人々は自分が感じるままに振る舞うことが出来るのだ」と語った。

パムクは、トルコにおいてはリベラル派と保守派の間にある対立は新しいものではなく、この状態が百年も続いていると述べた。

■軍の力が減っていることを私は幸せに思う

ある質問に対し、パムクは、AKPは軍の力を減らしており、このことをエルドアン首相の最大の功績だとし、それをうれしく思うと述べた。しかしながら、このことにより、一部の人々の世俗主義についての不安が増大していると述べた。

トルコにおける表現の自由、寛容、伝統文化と現代性の間には、いつも「ジグザグ」であったと述べる パムクは、「世俗主義の擁護への不安が、不幸にも軍が民主主義に干渉する環境を作っている」と語った。またパムクは、トルコ国民は、世俗主義を軍の力を必要とせずに 守れるようでなくてはならないとのべ、「軍よ、どうぞ来て、我々を救い給え」と考えることは間違っていると思うと述べた。

パムクによれば、世俗主義を守るためにクーデターを行うことが、アタテュルクの近代的で開かれた社会の理想とは合致していないという。

■エルゲネコン捜査をでっちあげとは思わない

エルゲネコン捜査についての考えを質問されたパムクは、この裁判はでっちあげではく、またクーデターの計画について新聞で読んだことが彼自身を納得させていること、トルコ国民がこれに納得してることを考えていると述べた 。

パムクは、トルコの歴史において、数々のクーデターやクーデター計画があったことを指摘し、従って裁判官らがクーデターの疑いについて調べることは良いことであると話した。

■新聞記者達が収監されていることは認められない

ある質問に対してパムクは、トルコで複数の新聞記者達が収監されていることを受け入れることは出来ないと語った。

政府を支持する新聞でさえ、この逮捕を批判していることを述べるパムクは、「不幸にも現在の トルコでは50名以上の新聞記者達が刑務所にいる。この国の最も愛されている政治家達のうち、スレイマン・デミレル元大統領や故ビュレント・エジェヴィト元首相も収監されていたが、再び彼らが政権に復帰しても、表現の自由についての改革は行われなかった。これを行わなければならなかったのに」と話した。

パムクは、過去に書いた作品やコラム、発言によって彼自身が訴えられていることに関する質問に対して、彼自身の状態が過去の作家達が体験したことよりも「軽い」ものであり、しかし国際社会で自分は有名なので、より目に見える状態に至ったと述べ、「不平を表明することや、或いはこんなことがあった、あんなことがあったと述べることを私は望んでいない。私は未来を見ている」と述べた。

■いくつかの党で使用されているレトリックは私を心配させる

トルコで選挙前に各党の間での「政治闘争」で使用されているレトリックを憂慮していると述べたパムクは、これらは、表現の自由の産物というよりも、むしろファナテッィクだとと述べた。

パムクは、普通の人々はこの論争にそれほど影響を受けることはないとし、未だにトルコにおいて定着していない寛容と和解の文化や言葉、表現が、今後、定着することに関し楽観的だと述べた。

■EUに対する怒りを復讐心に変えるべきではない

パムクは、ある質問に対して、EUがトルコを「二級市民」的な扱いを行っていることが、トルコで怒りを作りだしていることを理解しているが、「復讐心」によって、この怒りを、「私たちを受け入れないなら、アラブへと向かおう」のような態度に変わらないようにする必要があると述べた。パムクは、トルコがヨーロッパから遠ざかっているという風に不安には思っていないと述べた。

「アラブの春がトルコにも到来すると思うか」との質問に対してパムクは、トルコには「アラブの春」が必要ではなく、アラブ諸国がこの民衆運動によって単に政治だけではなく、文化や社会という意味でもより開かれた(国の)体制へと向うと考えていると述べた。

パムクは、「トルコが、ある国がムスリムの国家であると同時に、多元的で世俗的な、そして民主的な国家でありえることを証明していると思いますか?」との質問に、トルコがその努力をしていると述べ、「トルコが近いうちに、完全な民主主義と、発展した力強い経済力(を持つ国に)になると私は強く 信じている。まだそうなってはいないが、その道を進んでいる。それに向かい、自信を失ってはいけない」と語った。

■この国を私は愛している

作家のオルハン・パムクは、「何故イスタンブルに住んでいるのか?」との質問に「ここは私の人生であり、全人生を私はこの街で過ごした。そう、圧力をかけられたり、護衛付きで歩いたりしているけれど、この国を私は愛している」と答えた。

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( 翻訳者:濱田裕樹 )
( 記事ID:22493 )