社説:シリアで再び流血の金曜日
2011年05月20日付 al-Quds al-Arabi 紙


■ 社説:シリアで再び流血の金曜日

2011年05月20日『クドゥス・アラビー』

金曜礼拝の後、シリア各地でデモ参加者数万人が街頭に出ていくことは当たり前のことになってきた。また、治安部隊が民主化や自由を求めるデモ参加者に向けて発砲するのもお馴染みの光景になってきた。しかし今回の新しい展開は抗議行動が拡大する様相をみせていることで、抗議行動は当局が用いる治安部隊による解決策の成功によって後退し始めたという考え方が誤りであることが示されたかたちだ。

人権団体が金曜日の抗議デモで27人が亡くなったと語ったのは事実であり、この数はあらゆる基準に照らして大きな数字ではあるが、それより重大なことは、以下の根本に関わる2つの点に体現されるものだ。ここでそれらに言及しておかないわけにはいかない。

一点目は、抗議行動が北東地域、特にダイル・アッ=ザウルやカーミシュリーといったクルド人の人口密度が高い地域に拡大していること。

二点目は、ビラード・アッ=シャームのコーラン読誦者の長老カリーム・ラージフ師がテレビの生放送で、礼拝堂の常連たちが金曜礼拝の後に始まるデモに参加することへの不安を口実に治安部隊が彼らの礼拝を妨害し乱暴な対応をしていることに抗議して、辞任を表明したことである。

昨日(19日)クルド人がこのように一斉に抗議行動の表に出てきたことは、彼らの立場の変化を反映しており、おそらくシリア当局にとっては重大な問題が引き起こされるだろう。シリア北部のクルド人地域は、あちこちで限定的な例外はあったものの、過去5週間完全に平穏な状況だったのである。

シリアのバッシャール・アル=アサド大統領はクルド人がアラブ人同胞の抗議行動に加わることの危険性に気づいたため、クルド人20万人にシリア国籍を与える大統領令を発するという非常に巧妙な先手を打った。しかしこの措置は重要なものだったとは言え、それがもたらしたのは一時的な休戦状態であり、昨日になってそれは急速に崩壊し始めた。

シリア政府は困難な状況に置かれている。デモ参加者たちの殺害が続けば、市民の怒りがエスカレートする。殺害行為が増せば、葬儀の回数が増える。葬儀では怒りの感情が燃え上がり、それは治安部隊の介入とさらなる発砲を招き、新たな犠牲者がでて、また葬儀が行われるという事態をもたらすのである。

これは本当の出口のない恐ろしい循環であり、いかなる政治的解決策も存在せず、愛国的な反体制勢力やその指導部との真剣な対話ができない状況では、緊張状態が高まり、状況はいよいよ危機化することになるのだ。

デモ参加者の一人が掲げた「戦車との対話はあり得ない」というプラカードはこの問題をよく要約している。プラカードに書かれた内容は、シリア当局がヒムスやダルアー、バーニヤース、ダマスカス近郊県の村々など、蜂起の起きた町に軍の戦車を投入したことを指すものだ。

シリア大統領は治安機関の指導部に殺害行為をやめるよう命令を発したが、犠牲者の数は昨日さらに増えた。このことは、治安機関の幹部が事態を統制し民衆蜂起を終わらせるために最も有効な手段と信じて、あくまで血生臭い手段をとろうとしている証拠だ。それは得るものがないだけでなく、完全に真逆の結果をもたらす手段だということは、これまでの展開によって証明されているのだが。

我々は今、昨日の金曜日に何が起きたのか知っている。しかし我々は、次の金曜日に何が起き得るか知らないし、予言することもできない。ただ分かっているのは、さらなる死傷者が出て葬儀が行われるだろうということだ。それはシリアの国や当局や国民にとって同時にも悪い結果をもたらすことに他ならない。

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( 翻訳者:松尾愛 )
( 記事ID:22599 )