Semih İdizコラム:一歩一歩、内戦に近づくシリア
2011年06月08日付 Milliyet 紙

シリアは徐々に内戦へ進んでいる。アレヴィー派とスンニー派の対立は国内全土に影響を及ぼすほどに深まっている。トルコ国境までわずか12kmのところにあるジスル・アッ=シュグールの町の人々は、アサド派に対する報復の準備をしている。イブラーヒーム・アッ=シャッアール内務大臣は、外国メディアへの規制により詳細は知られていないものの、一昨日120名もの治安部隊が殺害されたことに対し、最も強い返礼をおこなうと約束したという。1980年代にハマーで起こったムスリム同胞団に対する虐殺を経験しているジスル・アッ=シュグールの町の住民は、この意味をよく理解している。トルコ国境に近いため、わが国のハタイ県にいる軍関係者や要人も厳戒態勢に移ったと言える。結果として多くの難民が生まれれば、多数の怪我人がハタイの病院に送られるのは想像に難くない。怪我をしたシリア人がすでにハタイの病院に搬送されているという報道もある。

 難民に関するジュネーブ条約の中に「地理的制限なし」という但し書きがあるからといって、シリアからの難民をトルコが受け入れる義務はない。しかし人道的な観点や、トルコ国境付近のシリア住民がもつトルコ居住者との親戚関係などを考慮すると、アンカラが国境を閉ざすことに難渋するのは明白だ。

 一方で、エルドアン首相とダヴトオール外相のバッシャール・アル=アサド大統領への忠告ももはや意味をなさなくなった。ダヴトオール外相は、最近アサド大統領が発表した恩赦を喜ばしいことだと歓迎し、この件に関してアンカラの積極的関わりを示すコメントを出した。しかし、シリアの反政権側は治まる様子はない。入手した情報によると、表向きは恩赦が出されたが、同日に何百人もが逮捕されているという。

 我々から見れば、エルドアン首相はイスラエルを選挙活動のネタにするよりも―これによって欧州でトルコをネタにしているサルコジ大統領などを批判する筋合いはなくなるわけだが―、情勢をより現実的に観察しながら状況に応じたメッセージを発する方がより効果的だろう。また、トルコは中東地域でもっとも影響力をもつ国であると盛んに言われている。しかし現状に対してアンカラは成り行きを見守る以外のことをしていない。そうこうする間に、リビアのように結局は米国や欧州の力がものを言うといった見方が強まっている。

 これを見たレバノンのシーア派ヒズブッラーのリーダー、ハサン・ナスルッラーは、シリアで反政権で立ち上がり、多くはスンニー派である人々を「米国の子分」として揶揄し、シーア派とスンニー派という違いでイランと冷戦状態になっているサウジアラビアを威圧するようになった。これによりナスルッラーは、アサド大統領の退陣がヒズブッラーにとっても打撃となることを遠回しに証明している。

 この危機的な状況に対してトルコがすべきこと、できることは何か?答えは簡単ではない。しかしはっきりしているのは、シリアの内戦が完全に展開されることで最も影響を受ける国の筆頭がトルコだということだ。個人的には好まないが、イスラム系メディアがアルメニア問題に関することでトルコに侮辱的な表現をしたのに目をつぶり、単にイスラエルを攻撃したことで評価をあげることにしたロバート・フィスクというイギリスの記者は、先日アンカラを憤慨させるような主張をしている。

 彼によると、トルコはシリア国境を超えて緩衝地帯(設置)のために準備をおこなっているという。これは具体的な根拠に基づいてというよりも、イラクの例に影響されて「強いて言うなら」記者としての立場から書いたものだと推測される。

 しかし、トルコで「西側がリビアでやったような攻撃をシリアでも繰り返してはならない」という声が高まっている一方、「皮肉にも軍事的観点からシリアへ攻撃の可能性が最も高い国はトルコである」と書いたのも我々である。そういう意味で、フィスク氏の記事にも一部正しい部分があると言えるだろう。アンカラがこれに怒りを示したのも、まるで肯定しているかのようである。要するに、シリアは非常に危険な方向へ進んでおり、トルコがいつまでも傍観者でいられる理由は客観的にみても一切ない。

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( 翻訳者:湯澤芙美 )
( 記事ID:22812 )