Mehveş Evinコラム:部族時代の終焉―ユーフラテス河畔で考える
2011年06月20日付 Milliyet 紙

私は今、ユーフラテス川の畔、ビレジキにいる。そよ風が吹き、昼間照りつけていた強烈な日差しは嘘のようだ。色とりどりの電球で飾り立てられたオープンカフェは、夜になると魚や肉を出すレストランに変身する。クナの夜や婚約式、結婚式もここで行なわれる。
ウルファのこの地方の名物であるハシュハシュ(ケシの実)ケバブを食べながら、ビレジキの住人達とお喋りする。選挙結果には誰も驚かなかったらしい。ウルファでは、公正発展党(AKP)が64.8%の票を獲得し、大差をつけて勝利した。部族から無所属で出馬した候補者の敗北は、最も大きな話題の一つである。
そうなのだ・・・。長年あちこちの党から出馬してきたイゾルやジェブヘリ、ブジャクといった一族は、新しい議会で姿を消した。「なぜ?」という疑問には、次のような答えが有力であろう。

1.農家は、これまでついぞ受けたことのなかった手厚い支援に大変満足している・・・。長い年月を経て初めて借金の泥沼から抜け出すことができた。彼らは低利子のクレジットでトラクターを購入し、ディーゼル燃料の購入には奨励金もある。高利貸の災厄は終わった。かつてはトラクター1台のために約40ヘクタールの土地を担保に取られるケースが見られた南東アナトリアにおいて、これは大きな進展である。

2.就学率が上昇している。南東アナトリアにおいて最も憂慮される問題の一つであった就学問題が解決された。国は教科書を配り、スクールバスの費用さえ出している。通学の安全が保証されたため、村人は安心して子どもを学校へ送り出している。特に女児にとって安全性は非常に重要である。

3.医療サービス・・・。以前は診療を受けなくても、病院に入るやいなや写真複写の料金のためだけに5リラもかかっていた。しかし今では住民カードを提示すれば医療サービスを受けることができる。患者の顔も見ずに「私の個人診療所に来なさい」と言うような医者もいなくなった。

4.個人化・・・。テレビの普及と共に異なる生活スタイルが紹介され、それを見た人々は部族に忠誠を誓うことをやめた。もはや経済的にも誰もが自立しているのだから、部族への古い繋がりを維持する意味は無くなってしまった。

5.部族の最大の力の源は土地にあった。しかし今、土地は昔ほど重要ではない。自由経済が発展するにしたがって、人々は自らの知能によって収入を得たり、生産物を自分で市場に出すことができるようになった。病院に行くにも部族長の車が必要だったのに、今では誰でも自分で交通手段を確保できる。

■どのクルド語?

南東アナトリアというと、私たち都市生活者には一つにまとまった地域が思い浮かぶ。県だけでなく、市、さらに町や村単位においても、異なる人口構成や傾向があることに気付かない。例えばウルファのビレジキ郡では、住人の40%がトルコ人、50%がクルド人、10%がアラブ人である。クルド語よりもトルコ語が話されている。

このため、「新憲法」や「母語教育」の話になると、クルド語に関する考えの相違が表れてくる。民族主義者行動党(MHP)に投票したあるクルド人は、学校ではクルド語が使われるべきだと考えている。AKPに投票したあるトルコ人は、「どのクルド語?」と疑問を投げかけ、次のように続ける。「ザザ方言がある。クルマンジ方言もある。私はウルファで話されているクルド語を理解できません。それにアルファベットはどうなるんでしょう?」

数年来の友人であるこの2人は、話に解決策を見出せないと分かるとさっさと話を切り上げた。しかしイスタンブルやアンカラでは、この問題は大きな議論を招いている。
では平和民主党(BDP)の後援を受けた無所属候補者たちは?選挙前のエルドアン首相の言葉が相当数のクルド人有権者の反発を招いたというのが一般的な見解だ。ご存知の「クルド問題は存在しない」から始まり「オジャランは絞首刑に処されるべきだった」と続く首相の発言は、南東部の有権者の多くを憤慨させた。

明日のコラムでは、ビレジキ~ハルフェティ地域についての、おかしく、しかし同時にむつかしい問題に触れる予定である。この地域の自然遺産や、自然保護協会の若く活発なメンバーたちの活動についても明日書きたいと思う。

■ユーフラテス川での生活

・ユーフラテス川は5つのダムを抱えているにもかかわらず、依然肥沃である。しかし収穫される果物や野菜の種類は昔ほど豊富でない。ダムの水位が上がることで、いくつもの居住地が水に沈んだ。
・ダムによる気候の変化も大きい。もはやフラト(ユーフラテス)・メロンは育たない。たくさんの種類の動物や植物が失われた。
・ビレジキ特有の村チーズは、極上のモッツァレラチーズといい勝負だ。羊の乳から作られ、軽く焼かれて温かい状態で出されるこのチーズは、最高の前菜である。
・ハルフェティの人口はビレジキの十分の一である。歴史あるハルフェティの町は、とても幸運なことにSİT(国家による景観保護地域)に認定されたため、醜いアパートは無く、古い石造りの建築物が残っている。
・ハルフェティでは夜になっても一日が終わらない。ユーフラテス川に船上レストランが4軒浮かぶ。生で民謡が歌われるか、イブラヒム・タトルセスの歌が流される。そしてもちろんハライ(アナトリアの民族舞踊)が踊られる。
・水上にいるため、座っている場所でプカプカと上下しながら自然とハライを踊っているような気分になる。若い女性たちが向かい合って食事をしている。ある舟では婚約式が行なわれている。打ち上げ花火を背景に!

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:22977 )