İbrahim Karagülコラム:CIA新長官ペトレアス氏のトルコ訪問が意味するもの
2011年07月19日付 Yeni Safak 紙

なんでこんなにあせっているのか

米中央情報局(CIA)の新長官の最初の訪問がトルコであるというのは、みなさんにとっても興味をひくものではないだろうか?15日前に長官に承認されたデイビッド・ペトレアス氏は、(駐留先のアフガニスタンから)母国へ帰る前にトルコを訪れた。カブールでのハミド・カルザイ大統領のメダル授与式の後すぐに飛行機に乗り、トルコにやってきた。

トルコを大好きなのか、トルコがアメリカにとってどのくらい重要であるかを身を持って示そうとしているのか、はたまた非常に重要な進展があるのか。リビア・コンタクト・グループの第4回会議のためにトルコを訪れ、シリアや周辺地域の問題を重点的に取り上げたヒラリー・クリントン氏の訪問に相次ぐかたちで、さらにディヤルバクルでの13人の兵士の殉教があった中でのペトレアス氏の突然の訪問は到底尋常なこととは思えない。

ペトレアス氏はNATOとアフガニスタン駐留米軍の司令官だった。それ以前にはイラク駐留米軍司令官も歴任し、イラク、アフガニスタン双方における重要な任務でアメリカを救ったペトレアス氏は最終的にこのたびCIA長官に就任した。

当然のことながらこの突然の訪問には非常に多くの疑問がある:
テロとの戦い、直近のPKKの攻撃、そしてトルコとアメリカの立ち位置。CIAとのパートナーシップといった完全にアメリカの地域的恩恵のための協調路線の行く末。トルコのイラン、シリアとの関係の今後。リビアでは崩壊寸前のNATOの軍事行動の今後。ヒラリー・クリントン氏が示唆したトルコとアメリカの間の新しい協同とは何か。中東を揺さぶる変化の波がトルコにどのような役割を与えているか。

周辺では、トルコとアメリカが周辺地域の変化に合わせて新しいパートナーシップを発展させるだろうとか、アンカラに中心的役割を求められるようになるだろうとか、変化に対するリーダーシップを求められるとか、とりわけシリアに関しては重要な進展がありうるが今後トルコとアメリカではシリアに対して異なるアプローチをとるだろう、などといったことが言われている。トルコはシリアに対して、軍事的な介入を伴わないで何とか変化を遂げ、バアス党の支配を禁じ反対派、とりわけムスリム同胞団と連立政府をつくり、この政府によって改革を実現させていくことを希望している。一方でアメリカはこうした動きに慎重であると言われている。

周辺地域の衝撃や、自由と民主主義を求める動きがトルコに有利に働き、モデル、リーダーといった位置に置かれた結果、トルコはこの新しいポジションを支援するスタンスをとることになると言われる一方で、こうした変化がクルド問題を触発し問題をより大きくしてしまい、トルコやあらゆる地域が不安定化する可能性が否めないことがアンカラを不安にさせていること、そしてそのためにシリアが分裂してしまうのは一種の悪夢のシナリオであると受け止めているとも言われている。

近いうちに必ずやペトレアス氏の訪問の詳細が明らかになるだろう。(訪問の目的が)単にテロとの戦いに限られているのか、それともより幅広いパートナーシップの先駆けであったのか、そのときになればわかるだろう。しかし今現在の情勢でみればその理由はテロ、周辺地域の問題、リビアにみえるこの訪問が、実はシリアに焦点があったことをそのときになればわかるだろう。シリアで体制の変化がないままではイラン問題を片付けることができないからだ。

もちろんこれら全てはアメリカの妄想である。イラクやアフガニスタンを占領し、次々と地域的なプロジェクトを適用させているアメリカに、昔ほど力がないことも忘れてはならない。

しかしペトレアス氏といえば、別のことも想起される。大きな希望を掲げイラクの駐留米軍司令官を務めた後の軍のオペレーションの一部は、この地域のハートを傷つけ、いまだに傷つけ続けているのだ。つまり、こういうことだ:

第2次世界大戦時、ナチスがユダヤ人に対する「解決策」として作り上げた方策は、イラクのムスリムに対して試された。パレスチナでは極秘の合意によって築かれた分離壁(アパルトヘイト・ウォール)で、この国の実態が広まった。バクダットでは、人々が地区と地区、路上と路上、通りと通りが互いに厚い壁で分離された。宗派や民族の別によって、あるいはアメリカの支配戦略によって、さらには経済状況によって従来の街は過去に埋葬されてしまった。イラクに対してデイビッド・ペトレアス氏と「有識者チーム」の見出した唯一の解決策は、ナチスが考え出した「ゲットー(ユダヤ人地区)」の形式を利用することであった。彼らはイスラエルの指揮を受けバクダットに分離壁を設置した。バグダットで完了した後、アダミヤ地区のスンニ派と地区の周辺のシーア派を互いに引き離す分離壁も設置され、ハイファ通り、アル・アミリイェ、ダウル、アル・ファドゥルといった地区や大学のある地域までをも分断してしまった。

タル・アファル、ファルージャ、アル・カイム、ハディーサ、サマラ、アル・ハリディエ、イェスリブ、アル・ラトゥバといった都市や地域にも分離壁を設置する計画がある。人々は分け隔てられた地区の外には出られなくなり、「野外刑務所」で生活することになる。そして他の地区に行ったり親類と会ったり、商売を行ったり、そして必要なものを調達したりするためにはチェックポイントを通らなくてはならない。パレスチナで行われているのと全く同じように。

ゲットーごとに新しい身分証明書が発行され、ゲットーごとに新たな市民集団が形成される。世界がこの国のために同盟を議論している一方で、イラクではもはや都市はバラバラになり、何百年も一緒に暮らしてきた人々は小さな収容所に収監され、互いの距離は遠くなり、疎遠になっていくだろう。

メソポタミアは確実にアパルトヘイトの時代に入りつつある。バグダットに「アメリカ版の強制労働収容所」を作っている。それはイラクだけでなく、実は全ての地域にやりたいのである。
意識的に暴力を振るい、強欲的に振舞うというのは、支配欲の表れである。
バグダットやイラクのために作られた計画は、もともと実は全ての地域に対するものである。明日、アラブ人とクルド人を、あるいはアラブ人とトルコ人を分け隔てるために、こうしたことをやりかねない。

ぺトレアス氏がシリアのためにどんな計画を考えているのか、見守ろうではないか。そのうち分かるだろう。占領なのか、内戦なのか、新たなゲットーの建設か!

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( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:23336 )