シロピ衝突で死亡の少年、テロリストでもなく、殉教者でもなく…
2011年07月28日付 Radikal 紙

シロピで亡くなったドアン少年のことを、目撃者は「テロリスト」であるとか「殉教者」だったと語ったが、彼が単に貧しい少年であることがわかった。

7月24日、シロピにおいて 冬期用の小学校の前でガス爆弾を頭に被弾して昏倒した13歳のドアン少年が、搬送された病院で二日後に亡くなった。シロピでは、「殉教者」と書かれた遺影が掲げられ、黄色、赤、緑の旗で包まれた棺でもって埋葬された。しかし、その少年の実態は(「殉教者」ではなく)ひと部屋で6人の弟妹と両親と暮らし、アイスクリームを売ることで家族の生活を支えようとするけなげな男の子だった。

ドアン・テイボアのドラマは彼がこの世に誕生する前から始まっている。両親が生活していた村は20年前に焼かれ、村人はシロピへ移住したの だ。ドアン少年自身は一度もその村を見たことはなかったが、大人たちからその村の話を聞きながら育った。その短い生涯の中で、村で起こったことの真実はいつも彼の心に絶えず浮かんでいた。彼が暮らすシロピの街角でも、炎上する車や、銃弾の音、白い煙を出して燃え上がるガス爆弾が日常の光景として存在した。デモと警察の介入は終りなく続いた。

しかし、彼にとってこれらの出来事より、自らの貧困の方がより現実的で切羽詰った問題だった。お金がないため、おじの家のひと部屋に家族9人が住み着いた。両親と、一番下の一歳児を含めて6人の弟妹がいた。父親のイスマイルは(事故発生当時)、北イラクに向けて何人かと共にトラックを走らせていた。母親も遠い村で、他の女性たちと共に羊の乳搾りに勤しんでいた、わずかな日銭を稼ぐために。

■アイスクリーム売りの少年

両親が出稼ぎで家に不在の間、幼い弟妹の世話はドアンが行っていた。子供達の面倒をおばが見ている間は、街頭でアイスクリームを売り歩き、その売り上げを家計の助けになるようつとめていた。

7月24日、混乱はいつもながらの衝突であった。 警察官に向かって石を投げる群衆の中に、ドアン少年の姿があった。警察の見解では、PKKの支持者が子供達に石を手渡し扇動したとのことであり、またある者によれば、生活苦が原因で彼ら自身が政治的行動に目覚めたとの見解が示されている。

しかし、そういった見解の真偽はどうあれ、ひとつだけ真実がある。ドアン少年が倒れたその日、石を投げる子供達を諌める大人が誰もいなかったということである。危険地帯にいた誰もがその行為を黙認していた。警察は、そんな彼らをガス爆弾で沈静化しようとしたのだ。

警察官の投じたガス弾が、公立小学校の前にいたドアンの頭に当たり、彼は流血しながら昏倒した。目撃者によると、一時間半その場で放置され た。搬送されたディヤルバクル公立病院で7月26日の朝、亡くなった。ドアン少年の母は、少年の身に起こったことを彼が亡くなった後、知らされた。父のイスマイルもハブル県境で入国審査を行う列に並んでいた。このため、遺体は最期のお祈りの場で二時間待機されたが、父は息子の最期に間に合わなかった。

弔問客に挨拶をしながら、父イスマイルは本紙の取材に応え、「一家の柱を喪ってしまった。私がいない間、彼が家のことや弟妹の面倒を全て見ていてくれた」と語るその一方で「これを誰がやったにせよ、私はその人物を生涯許すことは出来ないだろう」と悔しさをにじませた。

シュルナク県のある関係者は、今回のドアン少年の死を非常に遺憾に思うとの見解を示した。自身でも、この事件に関する調査を開始したと述べたこの関係者は、こうも語っている。「テロ組織は、このような子供達を無理矢理に、脅して彼らの活動に参加させている。現に多くの家族が警察に駆け込ん できて、『子供達を、テロ組織のメンバーがデモに連れて行った。自分たちだけでは抗えないのでどうか助けて欲しい』と訴えてきたそうだ。」

関係者は、しかし、ドアンが1時間半後に搬送されたという噂を否定した。警察は、その事件が起こった15分後にドアンを搬送したとの発表を行っている。誰もが、この事件に胸を痛めているが、ことの真偽は暴力(発生)が予想された少年の運命を変えはしない。

■ガス爆弾の犠牲者たち

ガス爆弾は、今までにも多くの犠牲者を出している。
2009年9月9日シュルナク県のジズレでガス爆弾を被弾した生後18ヶ月のメフメト・ウイトゥンが死亡。
2009年4月4日ジャンダルマの投げたガス爆弾があたってムスタファ・ダーが死亡。
2011年4月27日、ビスミルでガス爆弾の影響で、心筋梗塞を起こした60歳のカズム・シェケールが死亡。
2011年5月31日ホパで誘涙ガスを吸ったメティン・ロクムジュが心筋梗塞を引き起こし死亡。

■「これは児童の悪用だ」

子供達を政治的活動に無理やり参加させることに関して専門家の見解は以下の通りである。

メルダ・アランタル教授:「子供達は思考が成熟しているわけではないので、保護が必要である。子供達を活動に投じることは、子供の権利を侵害している。人生観に悪影響を与え、信頼という感情に傷を付けている。そして、暴力の記憶が消えるのには、長い時間が必要である。」

児童犯罪防止協会のギュルハン・シシマン副会長:「これは、ある意味気持ちの悪用である。子供は自分の意思とは関係なく、彼らに良いように使われてしまっているのだ。これは子供達の現況と将来とに深刻な影響を与えるだろう。」

■新たな子供の負傷者

ドアン・テイボアの死に対する抗議活動が、シロピで行われている際、抗議グループと警察官の間で再び衝突が起こり、その中で新たな子供の負傷者が出た。病 院で治療を受けているのは、警察側の投げたガス爆弾を被弾した8歳のゼイネップ・オデュクで、今のところ命に別状はない。


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( 翻訳者:沓澤実紗子 )
( 記事ID:23476 )