Joost Lagendijkコラム:トルコ政府はイランと距離を
2011年08月21日付 Zaman 紙

数日前、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合(EU)は自らに求められていたことを遂に実行した。協調するかたちでシリアのバッシャール・アサド大統領に(軍事的弾圧から)手を引くよう呼びかけた。ワシントンとブリュッセル(EU)によれば、シリアのリーダーは、自国民に対する継続的かつ残忍な暴力行為を行った結果、すべての正当性を失った。

しかしこの呼びかけが行なわれるもっと前に、アメリカ合衆国のヒラリー・クリントン国務長官は、アメリカとヨーロッパの要求は、トルコやサウジアラビアといった国々も参加した形でなければ影響力をもたないであろうと公言していた。クリントン国務長官によれば、これらの国々はシリアに対してより大きな影響力を持つ地域的勢力であった。ホワイトハウス筋も、この2週間をかけて進めた外交的アプローチにおいてトルコに時間を与えるために、オバマ大統領の最後通牒を遅らせたと記者に話した。残念ながらアンカラ政府のアサド大統領への圧力は効果がなかった。このため、われわれは今また次の段階へ移っている。問題は、トルコがアサド大統領に撤退の呼びかけを行った時点で、アメリカやヨーロッパと肩を並べるか否かである。

私の考えでは、トルコは自らすすんでサウジアラビアとともにこれを行うべきであり、おそらく行うだろう。このトルコとサウジアラビアとの連携は、シリア危機が地域的均衡に大きな影響を及ぼすという現実の一つの表れに過ぎない。サウジアラビアのアブドゥッラー国王は、シリア政府に反対すると決断した。国王の算段によれば、アサド大統領から(市民を)救うことは、ダマスカス(シリア)への親近性を、レバノンにおいて(ヒズブッラーが)、そして占領下にあるパレスチナの土地にて(ハマスが)一定の役割を演じるために利用しようとするイランを、かなり弱体化させることになるため、間違った行為とはみなされない。リヤドはペルシャ湾の支配という観点から、テヘランを長年にわたって最大の敵であり主要なライバルとして見ている。サウジアラビアが、イランのこの地域における影響力の低下により利を得ることは明らかだ。では、トルコとイランはどうだろうか?

アンカラ政府が国連安全保障理事会にてイランに対する制裁に反対票を投じ、原子力の平和利用に関する問題で、テヘランとどれほど近い関係を保っていたかはわれわれみなが知っている。トルコがシリア反体制派を支持したことで、イランとの関係においていくつかの溝を作ってしまっているが、トルコ政府は過去におけるこの親近性ゆえに、今でもイランの政策に影響力を及ぼしうると主張している。エルドアン首相とダヴトオール外相にとっての不安は以下のようなものだ。徐々に数を増す国際監視団(国際社会)がこれらの問題に関与するとき、この影響力が本当に及ぶのか否か。アンカラ政府はシリアとの関係に関し同様な主張(すなわちシリアに影響力を及ぼしうる)をするとしても、トルコが繰り返し述べている「改革実行」の呼びかけはアサド大統領にとっては馬耳東風であった。イランのこの地域において見込まれる役割が危険にさらされたとき、イランのアフマディネジャード大統領は、トルコのシリアに関する懸念にどうして耳を貸そうか?(いや、貸すわけがない)

私の考えでは、アサド大統領がシリア大統領という肩書きを有したままでの未来はまったくないことを証明し、このようにイランとわざと反対の立場に立とうとする国々が群がる位置に、トルコが立つのには3つのもっともな理由がある。

まず1つ目に、スアト・クヌクルオール氏が今週のコラムで書いたように、「もしトルコがリーダー的アクターで且つ中東の市民にとって活力を吹き込む存在となるなら、シリア危機問題では正しい側に立ち、それを切り抜けなければならない」。このことがイランではなく、アメリカやヨーロッパの側に立つことを意味することは、もはや周知の事実だ。2つ目の理由は、トルコのイラク内のPKK(クルディスタン労働者党、非合法組織)に向けた新たな攻撃である。イランはその気になれば、トルコが頭を抱えること;すなわちテヘランはPKKのリーダーであるムラト・カラユランの逮捕に関して周到に用意された言葉で、これを行うことができると自信をもって示した。しかし、結局はPKKとの戦争という点から、トルコがアメリカとこの上なく明白かつ有効な情報連携によって獲得できるものはもっと多くある。なぜならイラク内のテロリストの存在とその影響力を取り除くことは、この2カ国にとって利益であるからだ。

そして最後の理由は、以下の通りである。私の推測では、トルコ及び世界のその他の国々は、予測可能な未来において、イランにおける新たな抵抗運動の波と直面することになるだろう。2009年にトルコは、不正な大統領選の最中とその後により多く起こった民主主義の要求を暴力で押さえつけたイラン政府に賛成の立場をとった。トルコが「アラブの春」に支援を与えた後、アンカラ政府は「ペルシャの春」が訪れそれが叩かれることに黙っていることはできないはずだということを理解すべきである。この点においても、「正しい」立場にいることがより有益である。

これらすべての理由から私はシリアにおける混乱を、地域的な連携を再び整え、アンカラがテヘランとの間に一定の距離をとるために利用するといった稀有なチャンスが今トルコの目の前にあると考える。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:23711 )