Sami Kohenコラム―世論無関心の中、EU加盟交渉はどこへ?
2011年10月15日付 Milliyet 紙

 欧州委員会の進捗報告書は、トルコのEU加盟に関する現在の見通しをより明らかにするきっかけとなった。

 簡潔にまとめると、トルコはこの長く面倒なプロセスにおいて、もはや「なるようになれ」という状態になっている。以前のように、世論においても政府においてもEU加盟問題は話題にのぼらない。もう、昔のようなEUに対する熱狂や希望はない。あまりにもないため、今年の進捗報告書もさほど注目されなかっ た。昔はこの報告書について毎日議論が交わされていたほどだった。

 今回外務省は、報告書(の内容)が「進展よりも要望や不足に」集中していると不満を漏らした。

 実際には、この報告書は以前のものと比べると、トルコ側から見て大変よいものである。忘れてはならないのは、この種の報告書は、EUの視点で出来上がった一枚の写真であるということだ。民主化の進歩(例えば、軍に関する文民統制の構築、新憲法のためのプロジェクトの開始など)は、この写真の一部であ る。もう一つの側面は、報道や表現の自由の制約、逮捕、司法制度の不備などに関するものがある。

 これらは、トルコで知られており、議論されていることである。この中には、(すでに)達成された進展もあれば、実現されていない望みもあるのだ…。

■報告書には「何が書かれているのか」?

 しかし、私たちから言わせれば、本当に重要なのは、こうした確認の戦果、つまり実際上の価値である。

 はっきり言って、進捗報告書が全ての側面から「完璧な」ものになったら、EUはトルコの加盟を即座に許可するのだろうか?

 現在、サルコジやメルケル、その他の反対者がトルコの加盟に反対するのは、進捗報告書に書いてあるような不足や不十分な点があるからなのか、それとも他の感情や考えによるものなのだろうか?

 根本的な理由を知らない者はいない。結局、EUとの加盟交渉のプロセスが「全く進展せず」、完全に膠着しているのは、こうした諸国のネガティブな態度に起因しているのだ。トルコのEUに対する熱狂や興奮を揺さぶり、世論や政府の周りで退屈さを生み出していたのは、これである。

 トルコでEU問題の無関心を引き起こしているもう一つの要因は、トルコが最近自信を強めていることである。トルコの経済面での上昇、地域における強国としての外交上のパフォーマンスが、「トルコにおけるEUの必要性が、EUにおけるトルコの必要性を下回っている」という考えを強めている。

 一方で、EUの経済及び政治面で起きている危機は、一部関係者の間でEUの未来や、加盟の利益についての疑いも生み出している。さらに言えば、EUが経済的崩壊局面に入り、瓦解する可能性があると考えている人もおり、「この同盟からは利益を得られない」という考えを生み出している。

 間違いなく、EUが現在直面している問題を見て、同盟の崩壊を考えることは間違いである。ヨーロッパはこの危機を乗り越える潜在力と能力を持っている。少し時間がかかるかもしれないが、EUは落ち着きを取り戻すはずだ。

■見解は続いてくのか?

 トルコにとって重要なのは、外交においてEUをどこに位置付けているかである。EUと合体することは、今でもアンカラの第一の目的なのか?この方向での見解は続いているのか?

 最近では、トルコ外交は中東で積極的な役割を果たすことに重点を置いており、アフリカやアジアでも開始された。これも、ヨーロッパとの関係が二番目に転落してしまったという印象を生み出した。

 アンカラは、公式には、こういった状況にもかかわらずトルコの新しい多面的な外交においてEUが今でも第一の地位を保っていることを強調する。

 そうであるべき多くの理由がある。しかし、公式発言通りの「進展」が記されるには、双方が同程度に希望と意思を–言葉だけでなく、行動でも–示す必要がある。

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( 翻訳者:小松裕美子 )
( 記事ID:24244 )