Murat Yetkinコラム:KCK裁判でエルドアンは何を目指しているのか
2011年11月08日付 Radikal 紙

首相の言葉は、クルディスタン社会連合トルコ議会(KCK)関係者の逮捕がクルド問題において平和への希望を消すという、左派自由主義者側からの批判にどのように影響するのだろうか。

KCK、正式名称ではクルディスタン社会連合に対する捜査は二年以上つづき、2000人以上が逮捕される結果となった。逮捕者の中には平和民主党(BDP)の幹部、自治体首長・議員、また最近の事例にあるように、著名な出版社経営者のラグプ・ザラコル氏や大学教員のビュシュラ・エルサンル教授のような社会的な有力者の名前があることが、世の人々に「容疑の有無を問わない一斉検挙」という疑問を引き起こした。似たような疑問はエルゲネコン捜査やバルヨズ事件の捜査でも起こり、今も続いている。

エルドアン首相が昨日(7日)バイラムのために訪れたリゼで、民衆に向けて演説をし、KCK捜査が続けられることと、これに反対する者はテロ活動を支援しPKKを援助したと考えられる、「二重の国家は認められない」という厳しい言葉を発した。この発言が、首相が北イラク・クルド自治政府のマスード・バルザーニー大統領と、イスタンブルで行なった緊密な会談のあとに出たことは非常に興味深い。

エルドアン首相のこの言葉は、KCK関係者の逮捕がクルド問題における平和への希望を消すという、今後暫くでるはずの、特に左派自由主義者らからの批判にどのように影響するのだろうか。この点はいずれ明らかになるであろう。しかしながら、首相のKCKに対し厳しく弾圧をおこなうとの、また誰も邪魔しないようにとの警告の背後にあるものは何かを考えるて見ることは、その成り行きを理解するという点で、より有用である。

このためには、まずKCKとは何かを知る必要がある。KCKは、いわばPKK、すなわち「非合法のクルディスタン労働者党」の“フロント”組織なのだろうか?つまり、村落部でも都市部でも、PKKのために居住地を見つける組織。では、このために必要なのだろうか?PKKは、(アフメト・トゥルク氏の言葉を借りれば)自身と同じ支持層を共有している平和民主党(BDP)のような合法的な基盤を持っていながら、KCKのような別の非合法組織、“フロント”組織が必要なのだろうか?そしてどこからこの概念が出てきたのだろうか?

それは、次の事情から現れてきたのだ。アブドッゥラー・オジャランは、自身の回想録でも明かしているように、1970年代の初め以来、アンカラ大学政治学部で左派の活動家の若者たちに影響を受けた。マーヒル・チャヤン、デニズ・ゲズミシュ、オラル・チャルシュラル、ジェンギズ・チャンダル、ドウ・ペリンチェクのような活動家に対しかつて強いあこがれを抱いていたのが、徐々にクルド性の意識、レーニン主義、毛沢東主義の理念を、彼なりにクルドの革命に応用できる可能性があると考えるにいたった。オジャランは1978年に、トルコ、イラク、イラン、シリアから土地を奪いクルド国家を設けるという目的でPKKを立ち上げた。

二重権力という概念を政治理論に初めて用いたのは、1917年にロシアで起ったソビエト革命のリーダー、ウラディミル・レーニンであった。レーニンは中央政府の政治権力とともに、それと競い、平行するものとして、その存在を維持するようにと、労働者、軍人、知識人から成る地域委員会、議会、つまりロシア語でいうところのソビエトを作った。そしてこの状況が、“古い世界の殻の中で新しい世界が設けられる”まで、つまり革命まで続くように概念化されたのだった。

産業労働者や労働者の組織化が弱く、農民が力を持つ中国では、毛沢東がまた違う手法をとった。「ゲリラは魚が水中で泳ぐように容易く民衆の中で活動する」という言葉は毛沢東のものである。そして彼以降、武力闘争を基本方針とする世界各地の共産主義者リーダーや組織により彼の手法は用いられた。

オジャランが行なったのは、この二つの概念を折衷した形でまとめながら、イメージ上のクルド革命に当てはめたことだ。KCKは、PKKが二重権力を実現させるための装置であり、同時にPKKがその中で生きてゆくための培養池でもある。つまりレーニン主義者の政治理論をクルド主義に基づいて実現させた形なのである。

エルドアン首相が“パラレル国家”や“国家内国家”という概念を用いていることは、エルドアン首相に、PKKの政治イデオロギーの基盤や実践を十分に調査するアドヴァイザーがいること、そして首相が彼等に耳を傾けているということを示している。

KCKの培養池は今回の逮捕劇で枯れることがあるだろうか?PKKのテロは、この捜査で終わるのか。これらは別の問題だ。それがわかっているからこそ、エルドアン首相は、(PKKとの武力闘争と並行し)、一方で民主主義的権利を拡大するという形で、2面的な戦略をとっていると言っているのである。

ここ最近のできごとの背景にはこうした構図がある。この構図をわからずに[首相の発言の意図を]理解するのは容易ではない。

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( 翻訳者:猪股玲香 )
( 記事ID:24482 )