元ディヤルバクルMUSAID会長、モラ(モッラー)雇用問題に関する見解
2011年12月18日付 Radikal 紙

独立実業家協会(MÜSIAD)ディヤルバクル支部のヴァフデッティン・バハドゥル元会長が、宗務庁の「モラ(モッラー)」雇用問題についての見解を述べた。「背景に政治的意図があるとしても、それは実現しない。」

問い:宗務庁がモラ(クルド人のモラ、イスラム法学者)の雇用を始めるということをご存知でしたか?
答え:もちろん知っていました。この件がメディアで公表される前に、私自身の情報網から知っていました。

問い:最初に聞いたときはどう思われましたか?
答え:メフメト・ギョルメズ宗務長官は非常に博識で、トルコの信条異なる人々をまとめ上げるために非常に努力されている重要な思想家です。これほど粗野で、国家主義を神聖視し、民族主義を物神崇拝するにまで至った社会において、ギョルメズ宗務長官は今日まで誰も想像もしなかったようなことを始めようとしているのです。

問い:では、モラの雇用を前向きな一歩として評価しているのですか?
答え:ハミディイェ連隊から村落警備隊のシステムに至るまで、国家によるこの地域の均衡崩しや、開発の妨げ、分裂、そして互いに傷つけ合わせるといった多くの企てがありました。しかし、モラの雇用はこうしたものではありません。

問い:では何なのでしょう?
答え:東部や東南部では、昔ながらのマドラサなどでモラとして働く人々は、十分な生活を送っていませんでした。人間の知的レベルを上げ、(イスラムの学問の)論理学と弁論学を含む12の分野で教育をうけたモラたちは、ある意味で苦しい生活を強いられてきました。1000人の雇用は、少なくとも彼らに名誉を与えることでしょう。

問い:目的は彼らに名誉を与えることですか?
答え:いいえ、他にもメリットがあると考えています。ビンギョル県やヴァン県、ウルファ県、バトゥマン県、そしてディヤルバクル県といった県で、宗務局や神学部が仲介することで、これらの古いマドラサの師が有するアラビア語や様々な教養における造詣の深さを、新たな世代に伝えることができるのです。

問い:クルド系のマドラサが宗務庁の観点から認知されることの意味とは何でしょう?
答え:20世紀の東部や東南部には、神学部もきちんとした学校もありませんでした。1970年代まで、一部の小さな県と、大部分の郡には高校さえなかったのです。教育統一法マドラサは閉鎖され、昔ながらの思想はまるでなかったかのように消し去られました。それでも人々は、国家への恐怖から厩舎や洞窟で教育を続けるマドラサへと子どもたちを送りました。そのため、これらのマドラサは大きな痛みや悲劇も経験しました。一党支配時代には多くの関係者が牢獄へ入れられ、弾圧を受けました。このためこの(ギョルメズ宗務長官の)一歩は、名誉挽回という特徴も持っていると捉えることができます。

問い:活動しているマドラサはどれぐらい残っているのですか?
答え:多くはありません。ディヤルバクルとビンギョル、ビトゥリスに3つから5つ、ムスには1つか2つ、ヴァンとシイルトには2つ3つあります。現在は何が行なわれているかというと、一人のイスラム学者がマドラサの資金力に見合うだけ、15人から20人の若者の教育を続けています。アラビア語の文法や単語の知識、神学、論理、修辞法、マーニ(民衆詩の一種)、そして論考といった学問を教えています。しかしこれらの学者には一定の収入がありません。周りの人々の支援や寄付などによって生計を立てています。これらの地域のモラの合計人数を把握するのは非常に困難です。おそらく700人か500人、あるいは1000人いるでしょう。80歳の人もいれば45歳の人もいます。

問い:では、彼らは宗務庁への雇用を望んでいるのですか?
答え:それはわかりませんが、実際にそのような環境になった時にわかるかもしれません。さて…。この地域では流血を伴う虐殺事件や、30年間にわたる戦争が繰り広げられました。このような苦悩を抱えてきた地域で、国家がこのような措置をとるのであれば、反対するものが出てくるのも当然と受け止めなければなりません。また、国家はこの地域において汚れた歴史を持っています。国家は絶え間なく、信仰篤い人々の組織や機関、そうした個人を、流血を伴う目的のために利用してきたのです。ですから、疑惑ももっともなこととして受け止めなければなりません。

問い:なぜモラの雇用に反対が出るのですか?
答え:これは政治的な作戦行動であり、同化の別のやり方であり、クルド問題を影に追いやり、宗教の面からクルド人にクルド性を忘れさせようとすることであり、クルド人を自身の属性や歴史から切り離すようなことなのです。こう言う人々もいるでしょう、実際いますが、これも批判的な意見としてわれわれは受け止めます。

問い:それは正しい意見だと思いますか?
答え:そうですね…。このように言う人々の記憶はとても大きな悲しみと痛みでいっぱいであるということがあります。しかし40歳から80歳のモラ300人から500人によって、同化は行なわれえません。宗務長官は非常に道徳的な立場から、この忘れ去られたイスラムの歴史の脈絡をただ蘇らせたいと思ったのだと私は考えています。結果的にこれらのモラが、宗務庁との雇用契約により(人々の彼らに対する不審の目が和らいで)少し安堵するであろうことを忘れないようにしましょう。

問い:安堵の結果として、モラたちの学識は国家の統制下に置かれるという意味にはなりませんか?
答え:それは、どういった観点から見るかによるでしょう。しかしこのモラたちには、政治的、社会的事件を導くような経験も蓄積もありません。もし国家の深部に、このモラたちをクルド市民の政治的活動に介入させるために利用しようと考える、このような悪魔の所業を計画している人々がいるならば、これは決して賛成できませんし、認めることはできません。

問い:あなたが仰るところの、悪魔のような計画があったとして、モラの数が少ないということが、こうした計画が行われないことの保証になるのですか?
答え:モラたちは、かつてのような市民に対する影響力を持っていません。つまり、見掛けの事柄の向こう側に何か意図があるとしても、有用な効果は得られないでしょう。もし私が、ギョルメズ宗務長官を教養とモラルをもって非常に深く見知っていなければ、私も多くの人々のように疑惑に陥っていたでしょう。そう、我々は彼らのことも理解しようと努めなければなりません。我々は非常に汚れ、穢れた国家の伝統を持っているのですから。

問い:モラの雇用は、ディヤルバクルやムス、ビトゥリスで多くの議論を呼んでいますか?
答え:ええ。クルド人らは互いに陥れられ、国家から浅ましく利用された日々を忘れることはできません。そのため国家のあらゆる取り組みを、疑いをもって見ています。しかしトルコのすべての苦悩を、300人から500人のモラたちの雇用契約に結びつけてはいけません。あるところまでは、批判的に見ることを私は当然だと思って受け止めています。しかし、暴力や嫌悪感によって反対する人々を理解することはできません。この件を狂わせることは意味がありません。

問い:どのような点で狂わせているのですか?
答え:給料によってモラたちが国家に繋がれ、利用されるかもしれないということを考えることは、この件の本質を失うことです。60歳から70歳のイスラム学者を、政治的計画に利用するのは容易なことでしょうか?このような議論を、あれほど熱狂的に主張することが私には理解できません。

問い:そのような態度をとるのは平和民主党(BDP)の支持者たちですか?
答え:BDP支持者と彼ら以外の一部の人々も、この計画を誤りだと考えています。

問い:モラ雇用問題は、地域で再び公正発展党(AKP)とBDPの対立を生み出しましたか?
答え:ええ。さらには対立の一部は敵意にまでなった状況です。一部の人は、AKPはクルド人に利益をもたらさず、同化を加速させるだろうと主張しています。

問い:あなたはどうお考えですか?
答え:AKPは今日までテロ対策法を(しようと思えば)改正できました。村や町をかつての名前に戻すこともできましたし、村落警備隊のシステムを完全に撤廃することもできたのです。しかしながら、AKPは軍事的監督に関する多くの改革を行い、今現在は憲法改正のプロセスに入っています。我々は10年間我慢したのです、9ヶ月か10ヶ月、さらにこのプロセスを辿りましょう。過去を許しあい、新しい息吹を与えるような目的がそこにはあるのか、あるいは傲慢な態度で、我々みなを小さな見返りで騙し、バラバラに切り離してしまうのか、(今後の行方を)眺めることにしましょう。

問い:傲慢な態度というのは?
答え:権力は害をなす、独裁的権力は必ず害をなすと言うでしょう。気高い道徳心をもち、自己を制御する強い力を持ちあわせない人は、政権や金が生み出す破壊から逃れられません。AKPは1994年以来強い力で地方自治体の大部分を、そして10年間にわたって政府を掌握しています。この強大さはある種の力です。もちろんこの力は、党員の一部の人々を病的な考えへと導く可能性もあります。

問い:この傲慢さは、クルド問題解決へのアプローチにおいて大きな障害ですか?
答え:傲慢さはそれ自体が、自身の正義や道徳心、そして公正さに関するすべてに対し、人間の目を覆ってしまいます。政権の常として、AKP政権においても、一部の議員、そして一部の大臣らにおいてこの病気の兆候が見られます。『自分には力がある、だからするもしないも自分の気分次第』といった空気は、人を傲慢にすると共に、この国の150年続く問題に対する無神経さももたらしえます。さらには、最初の人種差別主義者も、そして最初の傲慢な人物も悪魔であるのを忘れてはいけません。敬虔さが試される2つの重要な試練があります。1つ目は権力と地位、2つ目はわれわれのお金の使い方です。

■インタビューの理由
MÜSİADディヤルバクル支部の元会長で、東南アナトリア実業家協会の理事長でもあるヴァフデッティン・バハドゥル氏は、クルド問題の深刻化について真剣に考え、アイデアを生み出す実業家である。宗務庁が、クルド人のマドラサに務める、モラと呼ばれる宗教家たちに対し、1000人の雇用契約を行うと発表したことは、この地域で大きな論争を呼ぶ原因となった。バハドゥル氏がこの件に関して何を考え、そしてこの論争に対してどういった議論を展開するかが重要であった。

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( 翻訳者:指宿美穂 )
( 記事ID:24873 )