Ahmet Hakanコラム:フランスに文句を言うのはいいが、では自分を問わなくていいのか?
2011年12月24日付 Hurriyet 紙

―もちろん、フランス議会で成立した法律は、ほんとうにひどい
―もちろん、サルコジは、なりふりかまわぬ(票への)貪欲ぶりだ
―もちろん、ヨーロッパのど真ん中で表現の自由が踏みにじられている
―もちろん、「虐殺ではなかった」という発言は、「罪」であるはずがない
この点では、なんの異論もない。
これらは、まったくもって正論だ。
しかしながら、フランス人をぼこぼこにして、それで気がすむ、という問題でもない。
我々は、自分の身を振り返ることをしなくてもいいのだろうか?
*****
―たとえば、フランス人に対し、「表現の自由」を説教するにあたって、「表現の自由を我々はどれだけ尊重しているのか」考えなくていいのか?
―たとえば、アルメニア問題について、「このアルメニア人とはなんで、なにが問題なのか?」という点で「殺人はあったが、虐殺ではなかった」という結論にどうやって到達したのか、考えてみなくていいのか?
―たとえば、トルコで「虐殺があった」というものに対し、「トルコ性への侮辱罪で告発する」ということに矛盾を感じないのか?
―たとえば、「各国の議会は、どうしてこうも簡単に(アルメニア・ロビーに)『虐殺』を説得されてしまうのか」と問わなくていいのか?
―たとえば、ディアスポラのアルメニア人とこれまできちんとした関係が築けなかったことを問題だとは思わないのか?
―たとえば、1910年代には人口の22%を占めていたアルメニア人人口が、今は人口の0.1%にすぎないことについて、何らかの説明を必要としないのか?

■ちょっと聞きたいのだが・・

フランスに対し、我々はいま、非常に威勢よくふるまっている
この大仰な反応に関し、
次の質問をせずにはいられない。
もしフランス議会を通った、この「ばかばかしい」法律に対し、この世の終わりが来たかのような反応をするなら、本当にこの世の終わりが来た時には、どうすればいいのだ?
あるいは、こう聞いてもいい。
「ばかばかしい」法に対しフランス人にいうべきことを全部言ってしまったなら、フランスと戦争でもしなくてはいけなくなった時には、何を言えばいいのか?
もう少し控えめに行動し、全部の言葉や反応を使い切らない方がいいのではないか?

■私の父祖はだれなのか

私の父祖は誰なのか?
アルメニア人をこの地から追い出し、何千人もが途中で亡くなったことの原因をつくり、女性、子供、老人含む何万人ものアルメニア人に100年間にわたって忘れることのできない苦しみを味あわせたものなのか?
あるいは、タラート・パシャのアルメニア人に対する計画に命がけで反対した良心の持ち主だったのだろうか?
*****
私の父祖は誰なのか?
強制移住を決め、実行したタラート・パシャとその仲間なのか?
あるいは、その故郷を追われたアルメニア人を、命がけで守ったものなのか?
*****
私の父祖は誰なのか?
アルメニア人を強制移住の途中で殺したタラート・パシャの手下なのか?
あるいは、悲惨な目にあっているアルメニア人を隣人の目を盗んで家にかくまったトルコ人なのか?
*****
私は、この二つの「父祖のタイプ」のなかで、タラート・パシャ、あるいはその類を、自分の父祖とは思わない。
彼や、その類を自分の先祖とすることを拒否する。
そうではなく・・・
暴政にあっているアルメニア人に命がけで手を差し伸べた、良心的なトルコ人を自分の先祖として選ぶ。
つまり?
「父祖」は、つねに為政者側の1人でなくてはいけないという規則でもあるのだろうか?

■悪魔が「見よ」といったもの

「デルスィムの虐殺」が行われたときには、
共和国がすでにあった。
アタテュルクがトップの座にいた。
イスメト・パシャとジェラール・バヤルが政権を運営していた。
エルドアン首相は何をした?
獅子のように立派に、謝罪をした。
******
「アルメニア人強制移住」が行われたとき、
共和国はなかった。オスマン帝国の時代のことだ。
「統一と進歩」が政権をにぎっていた。
タラート・パシャがトップだった。
エルドアン首相は何をした?
彼は、謝罪などしない。
では、問いたい。
アタテュルク、イスメト・イノニュ、ジェラール・バヤルが問題になっているときには、これほど明確に謝罪をするのに、
ことがタラート・パシャのやったこと、となると
どうして指一本ふれさせないのか?
共和国時代の虐殺に対しては勇気をもった行動ができるのに、オスマン帝国末期におきた悲劇には、なぜそれができないのか?
とくに・・・、
共和国初期の虐殺を謝罪することは、オスマン帝国末期の虐殺に対して謝罪するより、よっぽど難しいことなのに・・・。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:24948 )