ハマスへの肩入れは、トルコに何をもたらすのか?
2012年01月30日付 Milliyet 紙

公正発展党(AKP)のハマスへの関わりが情緒的なものに基づいていることは明白である。トルコ世論の重要なある層がこの組織に同情的であることも知られている。イスラエルはハマスのテロに対し、「報復」という名のもとにパレスチナ人に苦しみを与えており、それが彼らの同情心を煽り立てていることは明白である。
 こうした中ハマスが、内戦へ巻き込まれていくシリアから離れトルコに事務所を開設するとのニュースを軽視することはできない。この間、ダボスでCNNに語ったイスラエルのシモン・ペレス大統領も、ハマスは主にイラン、カタール、トルコから年間9億ドルの「外国支援」を得ていると話した。アメリカとイスラエルのマスコミもつい最近アンカラを訪問したハマスの指導者の一人イスマイル・ハニヤに、3億ドルに相当する支援が約束されたと報道している。これらの報道がどの程度正しいのか、政府はこの件で発表を行うべきであり、そこから私たちは知ることができる。

■矛盾をみせるアンカラ

公正発展党ではなく、トルコの「伝統的政党」のひとつが2002年に政権に就いていれば、状況はおそらく全く違ったものになっていたであろうに。アンカラは、「宗教的」であるとして、そしてテロリズムを政治的手段として用いているとの理由でハマスを支持することはできず、世界的に認知されているマフムード・アッバース(現パレスチナ自治政府大統領)を支持したであろうに。公正発展党がアッバース氏に冷たいというのも公然の秘密である。
ハマスがダマスカスを見捨てようとしているとの報道は、基本的にはハマスのスポークスマンのフェヴジ・バフルムによって土曜日に否定された。しかし、「火のないところに煙は立たぬ」である。シリアから最近、大量の「煙」が立っているのだ。
スンニ派であるハマスは、地域で増加する宗派間の抗争の間に立たされており、主にカタールの圧力でダマスカスを放棄するだろうという憶測がますます広がっている。このところ、ハマスは現実的にはトルコではなく最初の拠点であったカタールへ移るであろうといわれている。
これが事実ならさらに興味深くなる。なぜなら、カタールは現時点でハマス最大支援国イランと敵対するアメリカと、最も近い戦略的関係を結ぶ地域の国家のひとつであるからだ。さらに、ハマスはアメリカから正式にテロ組織として認定されている。
もちろん、ハマスは本部をカタールに移転し、トルコでは単にひとつの事務所を開設するということもありうる。だが、それが事実であるならば、トルコの側からは、ハマスに関連する「最初の複雑な関係」がこの時から始まることになる。それは、アメリカとイスラエルとの関係ではなく、マフムード・アッバースとファタハとの関係においてである。
忘れてはならないのは、パレスチナ人はアンカラにすでに代表部(大使館)をもっていることだ。この状態でハマスにさらに事務所開設の許可を出すことは、パレスチナ人の間の分裂を促進しかねない。このこともパレスチナ人へ継続的に「団結」を呼びかけているアンカラの立場から見たら矛盾となるものである。

■ハマスがテロ活動を始めたら

問題はこれで終わりではない。アンカラに事務所を開いたハマスが、明日、明後日にテロ作戦を促進させ、世界にとどろく大規模な行動に出たなら、トルコは多くの政府により「テロリズム支援国家」の地位におとされるであろう。
エルドアン首相がそうした中これまで継続的にしてきたように、ハマスはテロ組織でなくパレスチナの権利のため闘争している組織であると主張するなら、それはヨーロッパでPKK(クルディスタン労働者党、非合法組織)に対し同様の視線で見つめている者たちの思うつぼとなる。さらに、ハマスがトルコに事務所を開設することは、さらに深刻な結果をもたらすかもしれない。トルコでハマスとイスラエルの工作員双方が血生臭い闘争を繰り広げる可能性もある。そのような状態の別な例を、我々はチェチェン人により経験している。
つまり、公正発展党のハマスへの愛情は、一方では西側同盟国にとってのトルコのイメージを損ない、もう一方では、国家安全保障の観点で好ましくない状況を生み出す可能性を秘めている。

■何のメリットがあるのか?

まず、シリアとイラクでの事態の推移に加え、この地域での力学が、トルコの期待と制御を超える形で、特にアンカラを揺さぶる形で推移しているのは明白である。ここ最近、トルコがシリアの武装したスンニ派反体制勢力の拠点となっているとの噂も急速に広まっている。
不確実性に彩られたこの危険的状況の真っただ中で、特にムスリム層の一部は満足しているとしても、政府がハマスをこのような形で抱え込むことは、トルコに具体的に何のメリットがあるのかよく考える必要はないだろうか?

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( 翻訳者:岸田圭司 )
( 記事ID:25392 )