Mehmet Ali Birandコラム:ハマスがトルコにもたらす功罪
2012年02月01日付 Milliyet 紙

ハマスが新たな居場所を求めている。ダマスカスにはもはやとどまることができないとわかっているはずである。ゆえに、自分たちに近しいと思われる国の政府に打診をしている。アンカラにも情報が送られ、政府もこれには頭を悩ませているに違いない。

政府報道官のアルンチュ副首相は月曜の閣僚会議後に会見を行ったが、私にはそれほど説得力のあるものとは思えなかった。今のところ、ハマスのリーダー、ハリード・マシュアル氏がトルコで事務所を開くということはないとの見解を示した。政府は少々歯切れが悪いような印象を私は受けた。つまり、状況はこの先変わる可能性もあるが、今の段階ではそれに関連した何かを言うのは避けたい、といった話し方だ。思い違いかもしれないが、その話が完全に終わったというには疑問を感じる。
   
忘れてはならないのは、ハマスが物議を醸す政党であるということだ。ガザ地区のパレスチナ人にとっては「救世主」であるが、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人にとってはファタハの敵である。とりわけイスラエル寄りの多くの国々からは、市民さえも殺す「テロ組織」と受け止められている。トルコにとってのハマスとは、ガザ地区で選挙を勝ち抜き、パレスチナ人を代表する「合法的な」政党である。それでは今から一緒に、ハマスの事務所がアンカラに移転することが、私たちにどのような利益をもたらし、一方でまたどのような害をもたらすのかを見ていこう。我々の受ける恩恵は何か、問いただしてみよう。

■マイナス面

‐トルコはかつては、パレスチナ問題の当事者すべてと話し合うことができる国として実効的な立場にあった。しかしこの立場はマーヴィ・マルマラ号事件によってかなりの規模で失われてしまった。ハマスがアンカラに来ることで、完全に「当事者」の立場に陥ってしまい、これまで行ってきた活動も完全に終わってしまう。
‐アメリカとの関係において疑念(不信感)が増加するであろう。またイスラエルとの関係はもはや改善できないほど悪くなるだろう。公正発展党がトルコの(国是の)軸をずらしているという議論が再び再燃することになるだろう。
‐トルコはハマスのガザにおける活動や、占領された土地に対する襲撃をコントロールできなくなり、結果的にあらゆるミサイル攻撃や襲撃の後に世界の目はアンカラに向き、トルコが責められることにもなろう。

■プラス面

‐とりわけイスラム諸国の間でトルコの国際的なプロファイルの評価が高まる。
‐あまり誇張しないでおくが、パレスチナ紛争解決に対する交渉(駆け引き)の場におけるトルコの役割が一定程度強まる。
‐地域におけるバランスにおいて、トルコ政府の発言力が高まる。

これらのことをまとめるならば、ハマスのホスト役を担うことのリスクのほうがより多いように思われる、ということになる。失うもののほうが、得るものより多いということだ。何よりも、ファタハとハマスの協力が実現すれば、トルコにとっての利点はより一層減ってしまうだろう。(それが実現すれば)ファタハの重要性が増すだろう。

そしてもちろん、エジプトやヨルダンをはじめとるするパレスチナ問題の負担を最も抱えるアラブ諸国のトルコへの見方も変わってしまうことを忘れてはならない。
これらの国々は自国の裏庭と見なすこの領域へトルコが入り込んでくるのをよく思わないであろう。
中東は非常に危険な泥沼化した状態にある。
そしてパレスチナ問題も解決が非常に難しい一つの不安定要素である。
この泥沼にこうして首までどっぷり浸かってしまうことが、私たちに何をもたらすのか、私には理解できない。
なにかいいことがあるとは、とても思えない。

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( 翻訳者:金井佐和子 )
( 記事ID:25417 )