Semih İdizコラム:仏憲法裁判所「アルメニア虐殺否定」却下のトルコへの真の貢献
2012年03月02日付 Milliyet 紙

フランス憲法委員会が「アルメニア虐殺否定」法を「思想の自由」に反するとして棄却したことは、トルコにとっての「勝利」ではない。法案に当初から反対していたトルコ系であるフランス元老院議員のエスター・ベンバッサ氏もこのことを強調している。ベンバッサ議員のように、多くのフランスの政治家は、「思想の自由」犯したために、この法案が憲法委員会で審議されたのだと断固強調している。
委員会で下された決定が、トルコを嫌うサルコジ大統領にとって全く生じたことのない種類の失敗であったことは正しい。サルコジ大統領は彼自身をこのようにして、フランス憲法について無知であることを、あるいは憲法を無視して物議を醸し、国際関係において否定的な反応を生み出す一歩を踏み出した大統領という立場に落とした。
サルコジ大統領が、新しい法案の準備のため政府に直ちに命令を与えたことは、「体面を保つ」という観点から行えうる最低限のことだ。しかし、この強情によって彼自身には、政治的利益のために「憲法を迂回することに励んだ大統領」というイメージが定着してしまった。
近く行われる大統領選挙の候補者で社会党のリーダーでもあるフランソワ・オランド氏は、当選した際には法案を再び復活させるつもりであると語っている。しかしながら、憲法委員会の決定に反し、棄却された法案と同じ効力をもつ法案を如何に出すかは、フランスにおいてでさえも難問である。
我々自身に振り返ってみるならば、アルメニア虐殺の否定を罰することを見込んだ法案の棄却は、繰り返しになるけれども、「トルコの勝利」ではない。これは、我々の民主主義における最も重大な諸問題の一つである思想の自由という名の勝利である。トルコがこのことから得られる重要な幾つもの教訓がある。
フランスでの決定は同時に、過去や現在においても、司法制度が政治的影響を受けずにきたトルコにとって、民主主義の「不可欠」の条件である「三権分立」についても教訓となる。要するに、フランスはこの決定によって再びトルコにとっての「模範国家」となったのである。
一方、私の周囲で話されていることに目を向けてみると、一部の人々はフランスでのこの展開の後、アルメニア虐殺問題がもう終了したとの表面的な認識を持っていることがわかる。当たらずといえども遠からずであろう。この基本的な誤りの中に、いつもの「否定」したいという心理が潜んでいることは明らかだ。
それにもかかわらず、フランスでの出来事によって、1915年の悲劇はかつてないほど今日では議論されている。この問題は、アルジャズィーラを含む国際ニュー スチャンネルにおいて、公開討論やドキュメンタリーのテーマとなっている。2015年が近づくに従い、これらがさらに増えていくことは、今からでも想像できる。ダヴトオール外相も当然このために現在アルメニア人達に呼びかけを行っており、 「さぁ、生じた悲劇を2015年には共に分かち合いましょう」との声明を発表している。
フランス憲法委員会の決定は同時に、1915年の出来事をトルコでも避けることなく、また恐れることなく、あらゆる方法で我々が話し合い、議論するための 糸口となった。もちろんこれはトルコ人の多くを喜ばせる状況ではない。しかし、明らかにそのような現実がすでにあるのだ。
「アルメニア虐殺はなかった」という者達を罰することを望むフランスを、数週間もの間、「思想の自由を犯している」と責め、また国際レベルにおいて、この件に関する予想以上の支持を得た後で、「アルメニア虐殺はあった」という者達をトルコにおいて司法にかけることは「あらゆる矛盾の根源」となるであろう。
かいつまんで言えば、アルメニア人虐殺という問題を望むかたちで司法にかけることの難しさを今一度目の当たりにしたのだ。フランスでの決定の数日前、アメリカ合衆国連邦裁判所も実は、1915年の事件に関する賠償を求めるアルメニア人達の訴えを斥けていた。アルメニア人ロビイストはこの理由から、いつもの法的手段に代わって議員達を通じての政治的圧力を選択したのだ。今後彼らはこの手段を推し進めてくるだろう。
まとめてみると、フランスで生じ、そしてトルコを喜ばせた展開は、アルメニア人虐殺問題が今後(メディアなどで)書かれない、或いはこのことについてのドキュメンタリー、 さらにはハリウッド映画が撮影されない、という意味にはならない。従って私たちが1915年の出来事を公的な歴史の隘路から脱却し、客観的で人道的な観点から理解しようと努めることは、もはや避けられなくなっているのである。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:濱田裕樹 )
( 記事ID:25722 )