Fikret Bila コラム:クルド問題、政府の新・解決策
2012年03月22日付 Milliyet 紙

レジェプ・タイイプ・エルドアン首相は、リベラル派と自認する人々から、安全保障対策に偏っていると批判されている。PKKが武力闘争を続け、流血をやめず、ノールーズを血塗られたものにするという指示をだし、「春の脅迫」を主張している状況下では、首相に対する批判に正当な根拠があるとはいえないだろう。軍人、警官、市民に犠牲者が出続け、毎日何キロという爆発物が爆発しているときに、トルコ共和国の首相が、安全保障を考慮せず、その責任を放棄すると考えることは、ありえない。また、安全保障上の対策をとり武力闘争を続けるPKKとの抗争をつづけることは、クルド問題の解決策を放棄する、という意味にはならない。

これまでの取材からは次のことがわかる。エルドアン首相の発言は、PKKとの闘争およびクルド問題の解決方策に関し、作戦上ではなく、戦略的な変更が行われたことを示している、ということだ。この変更の基本的な原因は、(キャンプから投降したPKKメンバーをトルコが受け入れた)ハブル国境での出来事や、(PKKと政府が接触した)オスローでの交渉で示された政府の「善意」に対し、PKKが「善意」で答えるどころか、逆にそれを利用しようとしたことにある。政府の対応は、PKK側に政府の弱点、弱気ととられた。トルコ政府のこうした方策に対し、イムラル島のオジャラン、あるいは、カンディルのPKK本部、あるいは、議会内から、さまざまな「脅迫」が行われた。

■環境整備

トルコ政府は、PKKを山からおろし、解決策を見つけるため、国内的にも国際的にも、多角的な条件整備の努力を続けている。国内的な対応だけでなく、北イラクのメスート・バルザーニー政府をはじめ、アメリカ政府やイラク政府との接触により、安全な状況を作り出す上で前向きの条件整備が整えられたということができよう。こうした結果がえられた背景には、駐バグダード大使兼特別代表として長年任務を務め、この地域とその問題点に熟知したムラト・オズチェリキ治安安全保障次官や、国家諜報局、参謀本部、警察のような安全保障・諜報組織の果たした役割は大きい。

■新戦略への必要性

トルコ政府が、こうした接触により、新しい環境をつくり、この新しい環境の上に新しい戦略を構築しようと希求した背景には、ハブル・オスロープロセス、およびその後の事件への反省がある。この反省における結論は、PKKは政府に対し何の貢献もできないこと、交渉相手として、カンディリ本部、平和民主党、KCK(クルディスタン社会連合)、DTP(民主社会会議)が、互いに、「交渉相手はあそこ」と示しあうばかりで、政府では対応はしようがなく、また対応できないこと、唯一の交渉相手は「民衆」そのものだ、という点に要約できる。

■出発点

この反省のなかで得られた結論もお伝えした方がいいだろう。政府や関連組織の共通の認識は、PKKがプロパガンダとして使い、テロの理由してして示した根拠が、正当なものではない、ということだ。クルド・アイデンティティの否定は、もうかなりの期間にわたり行われておらず、だれもが言語を文化を日常生活のなかで、またトルコのどこででも自由に使っており、母語での出版、放送が完全に自由であり、一部の社会サービスは母語で行われている、という認識もそれに含まれる。これ以上のことを求めることは、自由で平和に共生するための要求ではなく、政府と国家を分断する努力にほかならない、ということも、もう一つの結論となっている。

■新戦略

エルドアン首相の発言は、昨日の党派会議での演説でも一部みられたように、PKKとの闘争及びクルド問題の解決にあたっての新戦略にもとづいている。この新戦略の概要は、次のように要約できる。

1- クルド問題の解決にあたり、文民政治グループ以外のいかなる窓口とも折衝は行われず、利用されない。

2- イムラル島でオジャラン、カンディルやヨーロッパでPKKと折衝することは今後行われず、彼らは交渉相手から除外される。

3-南東アナトリアやその他の地域で暮らすクルド系市民は、PKKやKCKからの圧力から解放される。

4- この目的にため、直接民衆が交渉相手とされ、文民政治組織との接触で解決策が模索される。

5- 解決の場は議会のみとなる。オジャランやカンディルPKK本部に操られておらず、民主的な方法で選ばれ議会に当選し、政治的なイニシアチブをとれる政党、ないしは複数の政党と交渉が行われる。

6- PKKが武装闘争を続ける限り、武力での戦いは続けられる。

7- PKKと再び交渉することがあるとすれば、それは武装解除にためのものとなる。

8- PKKが武器を政府に引き渡したならば、犯罪をおかしていないものについてどういうプロセスがとらえれかは、追って発表される。

9- 新憲法に、クルド・アイデンティティや自治制は盛り込まれない。新憲法は、人権と国民の法の前での平等が基本となる。

10- 地方自治が強化される。国際法に基づく諸権利が尊重される。

■合意と野党

PKKとクルド問題は、国全体の問題である。PKKとの闘争とクルド問題の解決には、トルコが心をひとつにして当たらなくてならない。要約につとめたこの新戦略では、その一端が伺われる。
この国全体の問題への対応戦略が推進力をえるためには、この作業について、野党の首脳にも情報が伝えられ、彼らの意見や提案もきくことが必要だろう。このことは、社会的、政治的な歩み寄りに基づく、一つの挙党戦略の推進のために有益となるだろう。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:25909 )