イスタンブル・ファーティフ区、歴史遺産保護での「成功もあれば、失敗も」
2012年04月08日付 Radikal 紙


本紙の「歴史遺産」に関する執拗な報道を受けて、ファーティフ区が心中を語った。「少しのミスのせいで、歴史に対する私たちの功績を無視しないでほしい。」

ここのところ、ファーティフ区は本紙の多くの報道のネタとなっている。スルタンアフメト地区でビザンツ宮殿遺跡の上に違法に建築された5階建てホテル、アイヴァンサライ地区の歴史地区での無許可の掘削作業などがその例だ。物議を醸したこれらの報道を受けて、ムスタファ・デミル・ファーティフ区長は、同区で歴史遺産を保護するために行ってきたことを説明したいと本紙に電話をかけてきた。私たちはこの申し出を承諾し、ファーティフ区役所に行った。区役所内の一室で、デミル区長は私たちにファーティフ区の取り組みを説明し、「あなた方は不当なことをしています。私は自分の時間の大半を、区の歴史遺産保護のために費やしています。少しのミスが、私たちの功績全てをなかったものにしてしまう。スルタンアフメト地区では(別の建物の建設許可書類に)公印を押しましたが、それが偽造されたのです。アイヴァンサライ地区では、ごみの山状態の場所を人々が歩いたり住めるようにするため取り組んでいます」と言った。その後、再建担当のタリプ・テミズ副区長を私たちに紹介し、「ファーティフ区の取り組みを現場でご覧になっていただきたい」と言った。

私たちは、テミズ副区長と一緒に、ほぼ丸一日ファーティフ区を見てまわった。同区は2008年にエミノニュ区と合併し、57地区を抱える。ファーティフ区は同時に、地中に何千年もの歴史が眠る歴史的半島を有している。隅から隅まで、あらゆる場所で古い泉、ハマム、マドラサ、昔の一軒家、メスジト、キュルリイェ(モスクを中心とした社交の場)を目にすることができる。(ファーティフ区は)荒廃した状態の多くの歴史遺産を修復・再建し、多額の予算をつぎ込んだようだ。2005年から2011年にかけて、計9400万リラ(約42億円)を歴史遺産修復に費やしたと言う。このうち3600万リラはファーティフ区の、5700万リラは県特別行政体の予算から出されたそうだ。現在進行中のプロジェクトもいくつかある。

■荒廃していた!

私たちがまず最初に訪れたのは、コジャムスタファパシャ地区にあるスュムビュル・スィナン・テッケだ。このテッケは荒れ果てたまま長い間修復が待たれており、2007年に着手された。163万3千リラを費やして修復されたこのテッケは、現在はある芸術財団に運営が委託されている。エブル(訳注:墨流しに似たトルコの芸術)やカリグラフィーなどの伝統芸術の講座が開かれており、会議場もある。ここを出て、ダヴトパシャ地区にあるベシクチザーデ・テッケに行った。庭から中に入ったとき、私は朽ち果てた状態のかつての建物を思い出した。何年か前、この建物の救済について記事を書いたことを覚えている。当時、このテッケはアルコール中毒者やシンナー中毒者のたまり場だった。147万4千リラを費やして再建され、文化財も修復された。テミズ副区長は、このテッケについてもどこか芸術団体に引き渡そうと考えていると言う。ハーティプ・ムスルヒッティン地区にあるスルタン・アブデュルメジトの生家も、何年もの間荒廃した状態で放置されていた歴史遺産のひとつである。2009年に修復作業が始まり、約50万リラが費やされた。社会的、文化行事で使われるべく、ワクフ総局に譲渡され、かつてのみじめな状態から救われた。

■大変な努力をしている

次はアイヴァンサライ地区へと向かう。エミル・ブハリ・メスジトとハーレム・コナクの修復作業が続いていた。土台だけしか残っていなかったメスジトは、写真に沿って実物に近いように再建された。同様に、すぐ隣にあるハーレム・コナックも修復されて文化センターとなっていた。テミズ副区長は、「一番難しいのは、土地の収容です。歴史遺産がある場所の多くは、長年の間に不法所有されてしまい、登記書が与えられているようなところさえあります。市民を困難な立場に立たせることなく、細かいところまで気を配って取り組みながら遺産に光を当てているのです」と話す。そこから、テミズ副区長と共に、議論の焦点であるアイヴァンサライ再建地区に入った。私が「修復作業チームになぜ考古学者がいないのですか?」と聞くと、テミズ副区長は次のように答えた。「このあたり全てを地中探査レーダーで調べました。地中に何があって何がないのか我々は全てを把握しています。あまり深く掘るようなことはないので、考古学博物館への報告は必要ないと思ったのです。我々が過ちを犯したことは認めます。でも、あなた方もご覧になったように、歴史遺産保護のためにファーティフ区として大変な努力をしています。ひとつミスをすると、私たちが行った全てのことが陰に隠れ見えなくなってしまいます。皆、アイヴァンサライ地区とスルタンアフメト地区のホテル建設のことばかり私たちに聞いてきます。歴史的半島はとても大きく、何千年もの文明の上に我々は住んでいるのです。見過ごしてしまうことや、私たちの手が届かない部分も時にはあります。」

■考古学チームを作るべき!

ファーティフ区が古い遺産の保護を支援していることはひとつの事実である。しかし、建設管理をもっと厳しく行うべきであることも事実だ。地中にある遺産を守るためには、ファーティフ区の取り組みは不十分である。区は考古学チームを作るべきで、無許可の工事は博物館へ報告すべきである。

■宮殿の上にホテル、歴史的地区に工事機械

本紙は、2月5日に「宮殿を壊した人のごまかし」という見出しで、スルタンアフメト地区でビザンツ大宮殿の一部だと思われる歴史遺産を壊しそこに5階建てのホテルが建設されるという記事を掲載した。この記事により、ホテル建設は立ち消えとなった。議論を醸した本紙のもうひとつの記事は3月26日付けのものだ。「城壁の下でブルドーザー」という見出しの記事で、アイヴァンサライ地区で都市再建計画の名のもとに工事が開始されたこと、「博物館関係者の同伴無しでは絶対立入禁止」と言われている場所で機械で工事が行われていたことを報道していた。

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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:26002 )