Kadri Gürselコラム:シリアは第二の北イラクとなるのか―クルド問題
2012年04月17日付 Milliyet 紙

トルコ政府の頭の片隅には常に、シリアにおけるクルド人をめぐる状況に関する二つの懸念が存在していた。
反政府運動がシリアに波及してからしばらくしてトルコ政府とシリアの交渉が決裂すると、この懸念は現実の憂いとなった。
第一の不安は、シリア国内のPKKである。これに関しては二つの点を考慮する必要がある。すなわちPKKがシリアのクルド人層から集めている支持と、PKKに対するシリア政府の援助である。
また、次のような三つ目の点も存在するだろう。すなわちPKKがシリアのクルド人居住地域でシリア政府の意向のもと、あたかも準軍事力のような活動を行っていることである。
無論、この「優遇」には見返りが存在するはずだ。「シリア政府のPKK支援」と我々が呼んでいるこの行為は、トルコ政府がシリアの反政府デモをさまざまな方法で支援したことに対する報復である。
第二の不安は、シリア国内のクルド人が国外へ流出する可能性である。これも反政府運動の発生後、実際に見られるようになった。
ここでシリアのクルド人は、政治的には無統制であるものの、反政府運動の最初から民族利益を顕著に意識し共に行動していることを確認しておかなくてはなるまい。
もちろんシリア国内におけるPKK関連組織「民主統一党」(PYD)はこの「局地的感覚」には含まれない。
PYDの外部にいる(クルドの)人々は、シリアにおける衝突を「アラブ人の内部の問題」と捉え、抑圧からも被抑圧からも距離を保っている。なぜなら彼らにとってシリアで誰が勝利するかということはさして重要でなく、いずれは新しい抑圧者に変化するであろう現在の被抑圧者のもと、クルド人はふたたび抑圧されるはずだと考えているようなのだ。
シリア政府との接触が断たれる以前、トルコ政府がシリア政府に対しておこなった提案の一部は、シリア国内のクルド人の状況を改善することに関するものだった。トルコ政府は、「シリア」という名の朽ちた建物がアラブ革命という名の地震を受け、新たな「支点柱」によって補強されること、土台が強化されることを望んだ。というのもこの「シリア」が崩壊した場合隣国トルコの上に倒れかかるであろうし、その弱い土台が失われた場合、トルコの安定をも崩してしまうだろうと懸念していたのだ。
シリア政府はクルド人の一部から国籍を奪った…。トルコ政府は彼らに市民権を与えるよう求めた。これは「シリア」が損壊もしくは倒壊しても、クルド人がシリアを離れ自分たちの建物を建て始めることがないよう保証するためだった。
トルコはアサド政権との交渉が途絶えた後も、シリアのクルド人コミュニティをシリア人化する試みを続けた。昨年の10月、トルコ政府の後援でイスタンブルにて設立されたシリア国民評議会(SUK)では、クルド人もメンバーに含めるよう提案がなされた。その目的は、バアス党政権の崩壊後、クルド人が分離主義を唱えることなく新しいシリアに自らの居場所を見出すよう促すことであった。
現在の状況ではクルド人をSUKの中へ押しやることは難しい。クルド人たちはバアス党政権の激しい怒りを買うことを望まないからだ。
先週の火曜日のタラフ紙に掲載された対談で平和民主党(BDP)のセラハッティン・デミルタシュ党首がネシェ・デュゼル氏に語った内容は、現状に対し警鐘を鳴らすものであった。次の質問とそれに対する返答は、センセーショナルであると同時に深刻な警告を含んでいる。:

「ネシェ・デュゼル氏:新たに国境が引き直される場合、イラクのクルディスタンとシリアのクルディスタンは統合されるのでしょうか?
セラハッティン・デミルタシュ党首:短期的に見た場合、その可能性は低いと思うが…イラクが三つに分裂した場合、国境が新しく引き直されることになり、シリア国内のクルディスタン地域が正式に認められる可能性がある。(…)現在すでにイラクンにはクルディスタンの州が存在する。最終的にはいずれウードゥルからハタイまで、南側のトルコ国境はすべて正式にクルディスタンになるだろう。その時、トルコは脱帽し『国内のクルド人と直ちに和解します』と言わねばなるまい。

トルコが国内のクルド人と和解できずにいる」状況を最も端的に表しているのが「クルド問題」という表現である。「クルド問題」を抱えるトルコは、国境の向こうのクルド人との間にも常に軋轢を抱えてきた。北イラクがその例である…。
シリアの騒乱の結果の一つが「クルド人の自治」であった場合、トルコにとってその地域は間違いなく第二の「北イラク」になる。だがさらに深刻な事態は、この地域の存在もしくは直接トルコに向けられたPKKの脅威を理由に、トルコ政府がこの地域を軍事攻撃の標的とするケースである。
理由が何であろうと、シリア問題が次第に国際化していく中、トルコがシリアのクルド地域に対し軍事介入すれば、トルコ国内のクルド問題もこれまでにないほど国際的な注目を浴びるだろう。
トルコが自国のクルド問題の解決から逃げている限り、クルド問題の国際化は避けられない。」

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:26098 )