イスタンブルの歴史遺産修復に使われた予算は、20億トルコリラ(2004~2012)
2012年04月28日付 Radikal 紙


イスタンブルでは、広域市によって、2004~2012年の間に文化・観光への投資に約19億9700万トルコリラ(約898億円)が費やされた。

イスタンブル広域市広報事業部作成の『イスタンブル歴史地区の再生』という本の情報によると、イスタンブル広域市によって2004~2012年の間に行われた修復事業の一環として2億6200万トルコリラ(約118億円)が費やされていた。98の歴史遺産が修復を完了し、21の遺産が現在も修復中だ。歴史遺産のリスト作りがなされているベイオウル地区歴史保護区域では、4948の遺産は登録済みだが、うち364は失われてしまっている。この調査により合計8377もの登録済遺産を有する歴史遺産半島(イスタンブル歴史地区)には、今日まで登録されずに失われてしまった197の遺産があったことがわかり、復元計画が提出された。

■歴史的モスク9つを修復

広域市は、同地区の9つの歴史的モスクを約3200万TL(約14億円)の予算をかけて修復した。また現在工事継続中の4モスクの工費は、工事完了時点で1760万TL(約8億円)の経費がかかることになる。イスタンブルで最も古いビザンツ時代の建造物であるキュチュク・アヤソフィア・モスクは1700万TL(約7億6千万円)をかけて修復された。なお歴史的モスクでは建物周囲の違法建築物が撤去された。
また、イスタンブル最古のモスクのひとつとされるアルトゥ・ポアチャ・モスク(1482年)は、1年程度の短期間で修復され、再びイスタンブルにその姿を現している。
建築家ミーマール・スィナンの最重要作品のひとつ、ビュユク・ピヤレパシャ・モスクも、周囲の違法建造物が撤去された。これにより、1573年建立の歴史的モスクはかつての荘厳な外観を再び取り戻した。
エミノニュでは、古い歴史をもつアヒ・チェレビー・モスクの「周辺および海岸部修復プロジェクト」も続けられている。ビサンツ時代から現代まで残るモーラ・ゼイレキ・モスク(パントクラトル教会)も修復中だが、モスク周辺での考古学的発掘で見つかった18世紀の舗装路は保護されている。

■歴史的貯水槽

観光の要所のひとつである貯水槽も、歴史遺産修復事業の一環として忘れられてはいない。同地区の3つ歴史的な貯水槽が5100万TL(約2億円)をかけて修復されている。
ビザンツ時代(542年)の建造物であるイェレバタン貯水槽も修復中だ。修復中、貯水槽周囲の交通は封鎖され、また貯水槽に重圧をかけていた県特別旧行政庁舎の建物も取り除かれた。
408年建造のシェレフェ貯水槽も修復中である。この貯水槽の上に建つかつてのエミノニュ庁舎は2010年に取り壊されている。また、貯水槽周辺は緑地帯としての利用が見込まれている。
多くの観光客が訪れる場所としてまず筆頭にのぼる廟も事業の一環として修復が施されている。イスタンブルの19の歴史的廟の修復には550万TL(約2億5千万円)がかかった。また190万TL(約8千5百万円)をかけて、3つの歴史的廟の修復が続いている。
一方で、同地区内の7つの宮殿、別荘、そして邸宅が3340万TL(約15億円)をかけて修復された。また、2380万TL(約10億7千万円)をかけて3宮殿の修復が進められている。イスタンブルでは1960万TL(約8億8千万円)をかけて、公共施設、宗教施設、軍事施設などの15の建造物も修復された。1160万TL(約5億2千万円)をかけた、2つの歴史的建造物の修復事業も大急ぎで進められている。歴史的なバハリイェ・メフレヴィ―教団施設にも広域市が1000万TL(約4億5千万円)をかけて修復した。

■スルタンアフメト広場

スルタンアフメト広場も新たに整備された。930万TL(約4億2千万円)をかけた事業のおかげで、広場は新たな外観を呈している。広場につながる10の通りも歩行者専用道路として整備された。トプカプ宮殿の正面とその周辺は新たな整備され、宮殿の入口と第一庭園から車両は一掃された。宮殿正面とその周辺は1000万TL(約4億5千万円)をかけて地面の舗装作業が続けられている。トプカプ宮殿城壁に隣接する13の違法建築物が取り除かれ、歴史的な城壁がその姿を見せた。ビザンツ時代の建造物であるテクフール宮殿も修復され、イスタンブルにその姿を現した。この歴史的宮殿は、コンサートホールや文化センターとして利用される予定だ。エディルネカプの歴史的なアネマス牢獄の修復も進んでおり、アートギャラリーとして新装する。スルタン・スレイマンによって1543~1548年に建造されたシェフザーデ救貧院の修復も2011年に完了した。
イスタンブルでは2004~2012年までに合計79の泉の修復も完了している。

■8500年前のイスタンブルに光

地下鉄イェニカプ駅工事に伴う発掘調査で、8500年前のイスタンブルの様子を伝える考古学的遺跡が見つかった。
イェニカプ乗り換え通路は、出土した遺物を展示する博物ギャラリーとなる予定だ。また、金角湾メトロ架橋プロジェクトのおかげで発見されたジェノバの城壁も修復予定だ。城壁の北側に残存する部分は、地下鉄の激しい振動の影響を受けないよう「鉄骨トラス・サポート・システム」によって保護される。
一方スレイマニイェ地区では、トルコ民間建築の代表例でもあり7つの地域にまたがるオスマン(歴史保存)地区もイスタンブル広域市によって修復されている。「新開発地区」を掲げるファーティフ・ペルシェンベ・バザールの歴史遺産の修復がなされ、それらもイスタンブルにその姿を現すことになる。
約6年前、指定歴史保護区域として宣言され、保護されているハイダルパシャ駅についても、「文化、観光、宿泊、ターミナル区域」とする計画がある。また、ユネスコから世界遺産に承認され保護されている「歴史的ゼイレキ地区」の37の遺産もイスタンブル広域市によって修復される予定だ。

■カルチャーセンター、コンベンションセンターの増設

イスタンブルで2004年には4つしかなかったカルチャーセンターとコンベンションセンターは、2008年には28に増設され、さらにその収容人数は6倍に増えた。結局、カルチャーセンターとコンベンションセンターの収容人数は2004年の1420人から15.46倍増加し、2万2200人に。シアター座席数も7年で42%、スクリーン数は50%増加した。

■新プロジェクトに大きな関心

イスタンブル広域市は歴史遺産の修復と並行して新たな文化・観光への投資も行っている。
合計7500万TL(33億7500万円)をかけギュルハーネ公園の、かつて馬小屋だった建物を修復し、「イスラーム科学と技術の博物館」として改築。この博物館では、イスラーム科学史の重要な成果を展示している。
イスタンブル征服について展示をおこなっている「パノラマ1453」歴史博物館は2009年に開館した。この博物館の工費は800万TL(約3億6千万円)で、今日までに2500万人が入場したという。
また、世界最大のテーマ型水族館である「イスタンブル水族館」は昨年(2011年)開館した。1万5千種類にもおよぶ水陸生物が見られるこの水族館の建設費用は2億6800TL(約120億円)。一方、「イスタンブル・プラネタリウム」や、「トラム路面電車」を含む新しい2つのプロジェクトも間近に迫っている。
「スカイシアター」と名付けられた「プラネタリウム」は、トプカプ市立公園内に建築が計画されている。このプラネタリウムでは、宇宙おける天体の動きを入場者自身が観察できる予定だ。金角湾地区での「トラム路面電車」プロジェクトにより、100年来の金角湾-黒海開拓鉄道線が新たに実現する予定。

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( 翻訳者:原田星来 )
( 記事ID:26228 )