アザーン(エザーン)騒音訴訟に、検察不起訴決定
2012年05月07日付 Radikal 紙

ナザン・アイドゥン教授は、騒音限界値を超えてアザーンを流しているモスクを提訴した。検察は「アザーンは騒音と見なされない」として不起訴とした。

 アタテュルク大学精神医学科長でトルコ精神医学協会エルズルム支部会長のナザン・アイドゥン教授は、エルズルムのほとんどのモスクのアザーンが法的にも医学的にも騒音限界値を超えていると指摘した。騒音計測の結果、法律で65デシベル以下と定められているところ、モスクの拡声器からは104デシベルに達する大音量が流れていることが分かった。これに基づきアイドゥン教授は共和国検察局に提訴した。提訴内容を検討したユスフ・エラスラン共和国検察官は、「アザーンを騒音と捉えることは不可能である」として起訴に当たらないと決定した。

■検察に提訴

 アイドゥン教授は、ハジュ・セリム・エフェンディ・モスクから流されたアザーンの音量が法的・医学的に騒音限界値である65デシベルを超えていると指摘した。計測によりこのモスクのアザーンは104デシベルに及ぶことが明らかになった。これに基づきアイドゥン教授は、環境法5237号の第182条および第184条に照らし合わせ、この音量が環境森林省の環境騒音管理規則によると「有害」であり、WHOやEUの規則によると「危険」であると主張し、共和国検察局に提訴した。

精神医学博士のナザン・アイドゥン教授は、モスクの宗教団体に所属する一部の人々と特にモスク協会の幹部がイマームに圧力を加え、拡声器の音量を健康に害を与えるほどまでに上げていると主張した。

■「精神と身体の健康を脅かしている」

アイドゥン教授は、エルズルム共和国検察局に提出した訴状に次のような理由を挙げている。
「この件について我々が警告したところ、彼らは拡声器が我々の家の方へ向いていないこと、もし我々が不快に感じるのならば家を変えるべきであることを主張し、反発を示した。この状況は法的規制にひっかかると言ったが、彼らは、アザーンの声は他の音と違う、ムスリムならば音量が大きくてもアザーンを不快に感じるべきでないと述べた。

さらには我々がこうして警告しつづけた場合、何者かに殺されるかもしれないと脅迫さえした。このため、妻の命を心配している。私個人として法による規制値を超える騒音を毎日5回聞かざるを得ないことに対する不快感だけでなく、一人の医者として騒音が社会の精神と身体の健康に影響を及ぼしているのを悲しく思いながらただ見ているしかないことに対する不快感を述べておきたい。したがって、環境健康関係者とエルズルムの宗務関係者が必要な対策を講じていないこと、規制が実行されているか確認を怠っていること、モスク責任者たちが法律に反する行動をとっていることを理由として提訴する。」

■「アザーンは騒音と見なされない」

一方、ナザン・アイドゥン教授の訴えに基づき調査を行なったユスフ・エラスラン共和国検察官は、「起訴に相当しない」と決定を下した。エラスラン検察官は、提訴内容が環境法5237号の第183条で規定されている違反行為に当てはなまらないと発表した。エラスラン検察官はこの決定の理由として、183条は他人の健康を損なうような騒音に対する処罰を定めたものであること、イスラム教の重要なシンボルの一つであるアザーンを騒音と見なすことは不可能であること、提訴内容がふさわしくないことを挙げた。

検察は提訴棄却の決定において次のように述べている。「刑法第36条では騒音を発生させた者に罰金を科しているが、この件は刑法の規定に合致しないこと、環境法2872号の第14条の、『他者の平穏と平静、身体と精神の自由を損なう形で管理規則が定める規定値を超える騒音と振動を発生させてはならない。交通機関、工事現場、工場、工房、オフィス、娯楽施設、事務所、住居等で発生する騒音および振動が管理規則が定める規定値を上回らないよう、行為者は必要な処置を取らなくてはならない』という上述の法律の条項から理解できるように、禁止されているのは交通機関、娯楽施設、工事現場、オフィス、事務所、住居が発生させた規定値を上回る騒音であり、また提訴内容が環境法2872号第14条で禁止されている行為に当たらないこと、提訴内容に違法行為が存在しないため起訴に相当しないと判断した。」

■「健康に有害なのはアザーンではなく大音量だ」

アタテュルク大学精神医学科長でトルコ精神医学協会エルズルム支部会長のナザン・アイドゥン教授は、科学的理由から検察の決定は受け入れられないと述べた。

アイドゥン教授は、「私は医学に携わっている。精神の健康と病の専門家だ。我々は科学的に、大音量が健康に、特に精神の健康に有害であることを知っている。人間は無意識のうちに、大音量に晒されてしばらくすると身体的にも精神的にも不快に感じている。高血圧、糖尿病、抑うつ状態は、絶えずストレスに晒されている人に起こる。大きな音はストレス源になる」と述べた。

ナザン・アイドゥン教授は、科学的に65デシベル以上の音は健康に害を与えるとし、次のように語っている。「これは科学的に証明されている。しかし一部の人間と、特に宗教を自分の考えの道具にしようとする人間は、アザーンの音がどれほど大きくても人間を不快にさせることはない、なぜならアザーンは神聖な音であるから、と言っている。一部の司法関係者もこのような考え方をしている。彼らは騒音の発生源が工場やオフィス、カジノ、ディスコだった場合はそれを違法だと言うが、アザーンが人間を不快にさせる音量で流されることは違法ではないと言い張っている。しかし我々の脳は音を音として認識している。『これはアザーンの音だから不快にはならないでおこう。これはディスコの音だから不快になろう』というような選択はできない。人間の体は音波を認識し、その波が大きければ体へのダメージも大きくなる。」

■「動物で実験が行われた」

ナザン・アイドゥン教授は、騒音について長期的な研究と実験を行なったと語り、次のように述べた。
「我々はこれについて動物で実験を行なった。さまざまな音楽を一日に5回、大音量で動物に聞かせた。その後で実験台の脳を取り出し、その細胞を調べた。特に記憶部位の細胞の大部分が死滅していた。我々のこの研究は科学的に外国でも発表された。音の内容は重要ではなく、ディスコの音楽でも他の音楽でも違いはない。大音量が動物の脳細胞、特に記憶部位を死滅させうるのならば、人間にもどれほど深刻な結果をもたらしうるか考えてみてください。

我々はそれに気づかず、他の理由を探している。食べ物に気を付けよう、健康にいい食材を使おう、と言う。しまいには宗教が我々に我々の身体を託した。このようなコーランの一節さえある。我々が自分の体を守らなくてはならないのならば、『大音量のアザーンは我々の体を不快にしない』といった非科学的な意見で決断を下すのは間違っている。私は精神医学の教授として、科学的者として、市民がもっと正しい知識を身につける必要があると考えている。『アザーンの声は人間を不快にしない』という考え方で我々の健康を脅かす人々を阻みたいと思っている。市民として、医者として、この警告をしたい。これが私の唯一の目的だ・・・」

■「ヨーロッパには騒音に禁固刑がある」

アイドゥン教授は、EU諸国では騒音は重罪と見なされていることを指摘し、「こうした国々では道でクラクションでさえ鳴らせない。65デシベルが規定値だからだ。トルコはというと住居の隣のモスクの周辺で計測を行ない、105デシベルという結果が出た。65と105の差は45デシベルだ。これは深刻な差だ。計測なら誰でもできる。モスクから流れるアザーンは本当に大きい、もっと音量を引き下げるべきだ。我々はアザーンに反対しているのではない、不快にする大音量に反対しているのだ。みんなは、宗教のデリケートな部分を恐れている。宗教のデリケートさは重要だが、人間の精神と身体の健康を損なうほどの音量でアザーンを詠む意味があるだろうか?我々がただ自分の先入観で『アザーンは人間を不快にしない』と考えることは、我々の国が発展していないことを示している」と述べた。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:26330 )