Cengiz Candar コラム:ことに北イラクのクルド石油問題がからむと・・
2012年05月27日付 Radikal 紙

「トルコとクルド自治政府の仲はここのところ非常に接近しているが、そうした親密さの中に(事を簡単には済まさせない)『PKKという不安定要因』が見受けられる。

トルコの、中東地域の、または直接的に言えば「クルド問題」の将来に関わる非常に重要な進展が起こっており、これらは、トルコにおいてウルデレ事件に焦点を当てた議論がなされるなかで、また「政治の失政」ばかりが羅列される昨今において、陰に隠れているのだ。
北イラクのクルド自治政府は、数日前に、トルコへ100万バレルの石油を運ぶパイプラインを建設すると発表した。
この意味について、評論家のなかには、「地理経済学の分野において、また南西アジアの-つまり中東の-地政学的意味において、大きな戦略的ずれ(動き)を意味する非常に重要な進展」と言う者もいる。
イラク政府は、イラク国土内においてはエネルギーに関する全ての決定、全ての方針について「中央政府の支配下」にあることを述べた上で、クルド自治政府が行おうとしているこの動きを「違法」だとしている。一方で、タネル・ユルドゥズ・トルコエネルギー大臣は、アルビルでこの問題について支援すると申し出た。そもそも、(パイプライン建設に関する)発表は、アルビルでクルド自治政府アシュティ・ハウラミ天然資源大臣が行ったものだった。
この発表は、ネチルヴァン・バルザーニ・クルド自治政府首相の先週の重要なアンカラ訪問の後に行われた。トルコは-特にそのメディアは-、ネチルヴァン・バルザーニ首相の訪問に関して、PKK問題における「協力」を焦点としていた。もちろん、バルザーニ首相アンカラ訪問においてこのことも重要であったが、ネチルヴァン首相の本当の目的は、クルド自治政府からトルコへとのびる「パイプライン」についての合意であった。
ハウラミ大臣は、イラク・クルディスタンからトルコを結ぶ石油パイプライン建設の第一段階は5ヶ月以内に完成し、このパイプラインがタクタク油田から-現在そもそも産出している-原油を送ることになると述べた。1日あたり100万バレルの原油を送ることが可能となるこのパイプライン建設の第二段階は、2013年8月までに完成する予定だ。また、このパイプラインは、ケルキュク-ユムルタルク・ラインと接続される。
私はアシュティ・ハウラミ大臣の発表に注目している。何年か前に同大臣に数字について尋ねたことがあり、ハウラミ大臣は私の質問への答えを紙に書いてくれた。そのときに書かれていたものと同じ数値を、昨年12月に再び繰り返した。これによれば、クルド自治政府の石油埋蔵量は450億バレル、天然ガス埋蔵量は6兆立方メートルだ。
トルコの1日当たり石油消費量は50万バレル、1年当たり天然ガス消費量は360億立方メートルである。
アシュティ・ハウラミ大臣は、イラク・クルディスタンの1日当たりの石油産出量について、紙に次のように書いて私に渡してくれた。
「2009年-10万バレル、2010年-30万バレル、2011年-50万バレル、2012年-75万バレル、2013年-100万バレル」
また、「天然ガス輸出についてはまだインフラは整っていないが、年間650億~700億立方メートルの輸出が可能だろう」と言っていた。
これらが現実のものとなった場合、クルド自治政府は「戦略的展望」を示すことになる。
この「戦略的展望」とは何かという質問に対する答えは難しくない。クルド自治政府が「独立国家」となることである。
これには2つの「なくてはならない」条件がある。
1.全ての独立国家のように、クルド自治政府の独立を支える経済的基盤があること。石油と天然ガスをたたえている大地の地中から、これらの「金のなる木」を産出し、「経済的基盤」を獲得するということは、「地上」次第なのである。つまりパイプラインなのである。
2.クルド自治政府は、四方を敵対する国と陸に囲まれ海に面していないため、この経済的基盤を、それらの国のどれか一国と、「共通利益」という土台の上に立って、その国の支援と保護のもとに作ること。
その国とは、トルコである。トルコは、自国土内に豊富な石油や天然ガスはなくても、90年前オスマン帝国の国土であり、今日は隣国の国土となってしまった場所に大変豊富にあるため、トルコは「石油と天然ガスの海」と接していると言える。
また、トルコの近い将来に向けた経済的成長・発展への熱意を忘れてはならない。トルコにおけるエネルギー及び電力需要は、ここのところ年間7%増えており、この増加率はもっと上向きになっていくことが予想されている。
トルコは、石油や天然ガス、つまり「炭化水素」においてロシアとイランへの依存を減らすことが、外交戦略展開のための必須条件である。シリアでの混乱は、トルコがロシアやイランとどれほど反対方向を向いているのかを明るみにした。
バグダッド(イラク政府)のマーリキー政権の行き過ぎた「宗派に力点を置く」姿勢と、トルコに対するまさに非友好的な態度-これにはトルコの過ちもあるとしても-、これらはトルコの政治家らに、イラクの将来を見る視点を、バグダッドではなくアルビルに向けていたほうが有益だという考えを抱かせた。
紛れもなく、トルコはイラクが分裂し「クルド独立国家」が成立するのに賛成ではない。このことを奨励するというよりも、思いとどまらせる側に立っている。また、トルコは、実現可能な「将来のシナリオ」に基づいて自身を調整しようとしているようにも見受けられる。
そもそも、目下のところ、クルド自治政府の石油パイプライン政策において、書面上「法に違反」する部分も無い。アシュティ・ハウラミ大臣は、クルド自治政府から産出し、輸出される石油や天然ガスはイラクのものであり、収入の17%以外はイラク中央政府に渡すと言っている。
もちろん、この問題は「だれが合意(契約)の権限を持つのか」という一点に絞られている。しかし、イラクでは石油法が依然として施行されていないだめ、クルド人らは「クルド地域石油・ガス法」に基づいてことを進めている。これは法律的論点ではあるとしても、「違法」とは見なせない。
「均衡」を変え、世界最大の石油会社とされているエクソン(EXXON)は、2011年10月に、クルド自治政府(英語ではKRGと省略される)と油田・ガス田に関する契約を取り交わした。
クルド自治政府は、それまでにも、アメリカ、カナダ、ノルウェー、アラブ首長国連邦やトルコなどの様々な会社と契約を交わしており、イラク中央政府を怒らせていたが、これらの企業の規模は中小であった。エクソンの進出はイラク中央政府の手におえることではなく、クルド自治政府へ「正当性」をもたらし、もっと重要なことは「戦略的展望」をもたらしている。
その結果として、トルコのクルド自治政府にむけた政策も、影響を受けている。
トルコとクルド自治政府の仲はここのところ非常に接近しているが、そうした親密さの中に(事を簡単には済まさせない)『PKKという不安定要因』が見受けられる。PKKは、この「新たな枠組み」において、国際的・地域的局面の真っただ中にいる。シリアの将来と密接にかかわっている、イランの政治的・物流的支援をバックにしている、もっと言えばロシアの「レーダー・スクリーン」の中に入っている。トルコ政府筋は、これに更に「イスラエルという局面」をつけ加えている。
トルコでテロやその他の事件が増えることを-昨日のプナルバシュ事件のように-、この地域の地政学上の「構造的ずれ」を考慮して考える必要がある。
同様に、平和人民党(BDP)が-PKKと自身を切り離しPKKに対抗していきたいとしていることは、我々が幾度となく述べてきた理由により理にかなっていないとしても-「テロという事実」に反対する明確な態度をとり、これを具体的な場面で具体的な切り口で表明し示すことは、BDP自身の安泰のために必須である。
ウルデレにおいて政府が恥ずべき態度をとり続けることは、BDPの反「テロ活動」にたいする消極的な態度を明らかにし、BDPを正当化するものでもない。

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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:26510 )