Fikret Bilakコラム:戦争にひきずりこまれてはいけない
2012年06月28日付 Milliyet 紙

トルコは、シリアと再び戦争の危機に直面している。最初は14年前、オジャランをめぐって戦争の危機を迎えた。シリア政府はオジャランをシリアから追放した。トルコはシリアのこうした姿勢をみて、軍を引き上げた。
今再び戦争の風が吹いている。シリアは故意にトルコ軍用機を撃ち落とし、戦争のリスクを犯す覚悟があることを示している。
今回、原因はオジャランやPKKではなく、バッシャール・アサド シリア大統領の「生き残り」を賭けた戦争である。この文脈の中で、トルコとの戦争さえあえて犯そうとするほど、歴史の必然的流れに抵抗を示している

■ロシアの保証

アサド大統領がトルコ軍用機撃墜を決定できた背景に、ロシアからとりつけた支持がかなりの重要性を持っている。後ろ盾をモスクワ政府に頼っているアサド大統領は、権力を維持できると踏んでいる。
生き残りをかけた戦争を行っているので、トルコやイスラエルと戦争を始めることさえ、彼の考えでは解決策であるとみている可能性がある
しかし現実は、ロシアの支援もイランの支援もアサド政権を確かなものにする可能性はないし、政権存続を可能にするものではない。ロシアがアサド政権を支えるにも限界がある。
激しい内戦状態のシリアでアサド大統領は、次第に支配力を失っている。対立が広がっている。ダマスカス(アサド政権)がコントロール下に置く都市は少なくなってきている。
アサド大統領は、さらにダマスカスとラズキエ間の地域の軍備強化を図っている。防衛線をこの地域にはっている。しかし国の北部では次第に影響力は弱まってきている。
この状況下でアサド大統領は、必死のあまりある種の狂乱状態に陥っている可能性がある。もう失うものはないと考えて行動している可能性がある。
しかしトルコはこの挑発に乗ってはいけない、引きずり込まれてはいけない。

■報復措置は別問題

トルコが、軍用機撃墜に対して報復措置をとることと、シリアと全面戦争に入ることは別問題である。
アンカラ政府は、両者の区別をはっきりさせておかなくてはいけない。ダマスカスへ軍事的報復をし、その挑発に乗ってしまってはいけない。
軍用機撃墜事件に関しては、シリアを国際的な司法の場に引き出し、NATOとしてこの事件を言及し、国連による介入の枠組みの中で当事者としてとどまるが、決して戦争の当事者になってはいけない。

■何のための戦争?

「アラブの春」がシリアの番になった時、ロシアとアメリカは自国の国益優先という立場で行動している。
ロシアは再び大国となり、かつての「同盟国(東側ブロック)」を自らの影響下に置こうとするなかで、中東の最後の「砦」を失いたくはないと思っている。地中海地域における「ロシアの基地」的立場のシリアを影響下に置こうとしている。
アメリカはというと、イランを孤立させ、シリアやレバノンにまで広がる(イランの)影響力を削ぐことに懸命である。
イラン攻撃の準備をしている。イスラエルの安全性を高める目的だ。このような闘争がなされている中、トルコが「代理戦争」に入ることは、アナトリア東部や南東部の国境地帯すべてが標的になるだけでなく、テロ組織の活動範囲を広げる可能性がある。
アンカラ政府は、シリア問題を長期的に国益の観点から考えるべきだ。

■アサド政権後

トルコにとって、アサド後のことを念頭に置いて行動することも非常に重要だ。
アサド失脚後にシリアの領土保全をはかり、PKKの拠点となる第二の「北イラク」をつくらないことを、アンカラ政府は第一に考えるべきである。
シリアで起こっている宗派と民族の内戦に加担すれば、この火の粉をトルコへまき散らそうと考える者らの思うつぼだ。
トルコはこれら全てに目をくばりながら、国際的権利や法を破ることなく、またテロ地域の拡大を阻止しながら行動すべきである。
アサド政権が倒れた後、トルコがより大きなテロ問題を抱えることになってはいけない。

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( 翻訳者:榎本有紗 )
( 記事ID:26866 )