Semih İdizコラム:AKPにとってシリア問題からの「教訓」
2012年07月09日付 Milliyet 紙

ヒラリー・クリントン国務長官がシリア問題でロシアと中国に向けた激しい批判は、この問題が、アメリカとロシアが対峙する新しい東西対立の、もっとも重要な抗争の領域に変化しつつあることを示している。

クリントン長官は、金曜日にパリで行われた「シリアの友」会議のなかで、この2国がアサド政権を支援しており、このために「代償を払う必要がある」と述べた。これは、想像どおり、ロシア政府と中国政府を激怒させた。両国政府がクリントンに示した反感から、そもそも「シリアの友」の名ももとに集まったグループを拒否していたロシアと中国が、今後、シリア政策をさらにはっきりとした形で遂行するであろうことが読み取れる。アサド大統領がこれを喜ばないはずがない。

■思い通りにはいかない

しかし、次のことも次第にはっきりしてきた。それは、アサドがいずれはいなくなるとしても、その後の「新生シリア」は、トルコが強く支持する「シリアの友」グループの思いどおりには形作られないだろうということだ。この新生シリアは、新東西対立の軸にそって形づくられる新冷戦両陣営の間での合意に基づいて作られる。そうでないならば、シリアは、両陣営の、間接的な闘争の場となり、それゆえ、外から支援を得た過激なスンナ派・シーア派にとってある種の、「聖戦の場」となり、この地域で深刻な不安定要素であり続けることになるだろう。

これが、すでにシリアでの諸事件からマイナスの影響を受けているトルコにとって、いい展開ではないことは明らかだ。公正発展党政権は、はじめからとり続けてきた強硬姿勢により、アサド政権に反対する国際的なキャンペーンの熱心な先導者を演じた。ダヴトオール外相が、政府のシリア政策を批判したコラムニストに対して向けた「(こうした報道をして)心やすらかに寝ていられるのか」という意味のない批判は、AKPがこの問題を、非常にいらだちながら、いかに内面化させているかを示している。

しかしもう一つのことも、今から考えておく必要がある。トルコは新しいシリアの成立にあたって、主役ではない。ただ、周囲の役者の一人にすぎない。この枠組みでは、ロシアだけでなく、イランや、ヒズブッラーのような地域のシーア派グループとも対面することになる。

他の言い方をすれば、そこには、AKPが望んでいたスンナ派的な政権ではなく、東西対立軸での合意にそって、シリアに現在存在する世俗的な構造をある意味で保持した、「連立(権力を分かちもった)」政権が現れるだろう。

■トルコは地域の役者にすぎない

そうでなければ、前述したように、シリアは、トルコがマイナスの影響を受け続ける不安定要素として残り続ける。この点からみると、シリアの運命を最終的に決定するグループは、「シリアの友」ではなく、6月末にジュネーブで集まり、ロシアや中国も含まれていたあのグループであることは明らかだ。西側諸国が明確に、トルコはといえば間接的な表現で反対しているにもかかわらず、ロシアと中国のごり押しにより、イランも、このグループに参加するであろうことは、避けられないだろう。

ここで注目されるもう一つの点は、当該地域やシリアに対し、(スンナ派)一極的で主体的な政治体制が生まれることを目的に行動を開始した公正発展党政権が、この件で、すでに(東西対立という)多極性をみとめ、昔からの西側同盟国やNATOを頼りにしている、という点だ。

■AKPにとっての「教訓」

このことは、公正発展党が政権について以来、トルコが西側から離れ、イスラム世界にすり寄っていると思っている人からみると、好ましい事態だ。しかし、外交政策では、明らかな「スンナ派協調」を反映させたとしても、公正発展党のこの変化が、この地域とトルコ国内の過激なスンナ派組織を満足させるとは思えない。
その上、地域のシーア派諸国や諸グループは、トルコのシリア政策や、トルコがイランに対するNATOのミサイル防衛網の配置が認めたことから、トルコをもはや「NATOの一齣」とみていることは明白だ。

つまり、以上をまとめるなら、次のようにいえよう。シリア危機は、外交の舵取りという点で目論見がくるった公正発展党にとって、それと同時に、重要な「教訓」を与えるものになったのだ。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:26972 )