Ali Bulac コラム:(保守派の立場から)宗教教育を考える
2012年07月09日付 Zaman 紙

イスラム神学と思考の真の伝統から見た時、「神」の本質と本性から生じる神学という意味での「イラーヒヤト」が法的根拠が無いのと同じように、イスラムと世俗の国家が社会全体に課する総合的・標準的・規定の「宗教教育」も(本来国が)憂うものでも、仕事でもない。

「宗教教育」は、基本的に「キリスト教的ヨーロッパが惹起」した世俗的知識・教育・生活観念の産物である。一極では、「世俗/非宗教的な」世界、反対の極には「宗教/神聖な」世界がある。

この件の神学上の理論的な議論はさておいて、「宗教教育」が意図する宗教全体に関する知識を授けるという点については、これが「宗教教育」によって実現できるとは、以下の4点を理由に考えられない。

1)このような広範囲にわたることを教えるという仕事は、週に数時間ではカバーできない。

2)ある宗教の中で歴史的に形成された様々な宗派のメンバーは、標準化された知識に反発する可能性がある。

3)非イスラム教徒、自由主義者、左派、無神論者の家庭は、子供たちが宗教教育を受けることを望まない可能性がある。

4)世俗主義の国は、「宗教教育」を通して、本来、宗教的な人々を世俗化することを望んだために、「宗教教育」に(本来内包している)倫理的規範や罰則などの内容を含めていない。教育により宗教的規定を外してしまった。そしてシャリーアやジハードのない宗教という認知を定着させることを狙っている。

このようであれば、子供たちに「宗教教育」を受けさせたいと願う人びとの思いも不当なことではない。なぜなら、現代の国家は(トルコが例に挙げられるように)教育の上 で独占権を確立し、教育統一法によって例外的にトルコ国軍のみに自主的に教育を行うことを承認した。したがって、家庭が子供に国の仕組みの中で宗教教育を受けられるよう要求することはもっともなことである。

しかし意識の高い家庭の望みは「宗教教育」では到底カバーできない。なぜならば、真の伝統的社会では、今日「宗教教育」という言葉から総じて理解される「信条、儀礼的行為、基本的教理問答」の知識は、家庭もしくは地域の宗教学校、宗教の先生によって教えられていた。

(教育を)包括的、深いものとするには、存在、人間、意味の探求についてイスラムがどう説いているかを教えるなら、これは、コーランの知識、解釈学、ハディース、法学、神学、スーフィズム、宗派の歴史、哲学、イスラム芸術・文学のような非常に広い知識を取り込まなければならない。

しかし世俗主義の国が参考にした西洋化教育は、物質的と形而上学的、信条と理性、宗教と哲学、神聖と非神聖、宗教と世界、啓示と理性、宗教と国家、私的な領域と公的な領域とを区別しているためそれは不可能である。

現代の国家が教育によって目標としていることは、世俗という生活様式を可能にする国民の養成、物質的な現実を変える科学的・技術的構造に通じた知 識人を増やすこと、天然資源をより高いレベルで使える状態に持っていくこと、自然現象がどのように発生したかを発見し新たな自然の醸成に道を開くことである。

信仰、来世、創造の意味、アッラーへの従属、畏敬、道徳的美質、精神的円熟そして、被創造物としての人間が則るべき形にそって作られた人間が真に創造物の中の誉れとなること、つまりは、「善い人」は現代の教育の目的ではない。

長期的にみると以下のことが起こりうる:
信条、儀礼的行為、倫理、総合的な教理問答といった知識と儀礼的行為を実践的に教えるという仕事は、家庭や地域の先生に任せるべきである。また初等教育から高 等教育まで備えている学校や、完全に希望に応じた伝統的なマドラサのシステムに沿ってイスラム教育を教えることを目標にした市民の団体や組織に教育機会を法的に認可すべきである。

あらゆる宗教、宗派や宗教団体、世俗的な考え方をもった団体が 、何を教えようと望もうと、自由でなくてはならない。国は病院、保育園、学生寮、ホテル建設希望者が条件とした物質的な基準を満たすことのみに気を配るべきであり、監督・管理のみに携わるべきである。

現代の危機から脱出し、イスラム世界が目覚めるための方策は、「国や私立学校」ではない。それは、現代の教育哲学を問いただし、教育組織、運営方法、カリキュラムを市民の手に取り戻すことである。

国家に「宗教教育」にやらせればいいと思っている保守的篤信家層は、ビドア(新規なもの)として彼らがつくりあげた数日の宗教祭を祝うことで、「聖なるもの」をショーにかえてしまった。そして、(数日の宗教祭を祝うことと)それ以外の日も(宗教的に)暮らしたい望むことをすり替えてしまったのは、現在の珍事といってもいいだろう。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:清川智美 )
( 記事ID:26981 )