Sami Kohenコラム:深まる謎―トルコ軍機はどうして落ちた?
2012年07月14日付 Milliyet 紙

シリアによる「軍機撃墜」の発生から3週間後、最近行われたいくつかの説明は、この悲劇的な事件を解明するというより、かえって混乱をもたらしている。トルコ軍機がどのように撃墜されたのかに関し、何日もの間、無数のシナリオがつくりだされ、憶測がなされている。
しかし、この事件が、複雑で近代的な軍事技術に関する専門的な知識を必要とするような方向に向かうのを(そのような観点で語られることを)我々は望んではいない。この問題に関し現在調査を行っている専門家が、最終的に事実と真実を明らかにすること、そして世論に対し確かな情報を説明することを望んでいるのである。しかし、事件当初アンカラ政府が取った断固とした態度が、最近の声明や説明と照らし合わせると、深刻な疑惑を引き起こし、問題を生み出しているということをはっきりさせる必要がある。

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政府は、事件発生後、集中的かつ細心の注意を払いながら、何が起こったのかを確認し、これらを短時間で、トルコ世論と世界に報じた。その段階で取った行動としては正しく、適切なものであったという見方がなされている。首相と外相は、最初の調査による分析結果を、こうした枠組みの中でどういう政策(対策)をとるかということと共に、一方ではトルコ国民と、もう一方では、国際社会に提示した
明らかにされた戦略の意図は、最初の段階で明確になった情報によると、「武器をもたないトルコの偵察機を警告なしに」撃墜したシリアの罪を明らかにすることであった。
外相はこの問題に関し、アンカラで外国大使らに説明する一方で、国連安全保障理事会からNATO(北大西洋条約機構)に至る様々な国際機関に対しても同じ情報を伝えたことで、その時点での情報が確実であり、すべてであることを確信していた。
こうして行動を起こしたアンカラ政府は、NATOを―協議の場を設けることに関する第四項を用いながら―巻き込んだ。同盟国は、この問題において、トルコと協力関係にあることを示し、シリアを非難した。
この間、トルコはシリアに対する軍事的圧力を強めるような措置をとったが、関係者らは、トルコ政府はシリアと戦争する気はないことを強調した。

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飛行機の残骸が東地中海の1200メートル海底で発見され、二人のパイロットの遺体が引きあげられた後、海外メディアが事件の流れについて異なる見解を示す中、アンカラでも政府や軍の上層部から様々な声が聞こえてきた。
その後、疑問、疑いが浮上した。飛行機は―バッシャール・アサド・シリア大統領自身が認めているように―シリアによって撃墜されたのだろうか。あるいは、(週の初めの参謀本部による説明時の表現に拠るなら)、これは単なる一つの「主張」なのだろうか。(参謀本部が昨晩行った説明で、確かに飛行機はシリアによって撃墜されたと強調していたことはともかくとして)。当初、機体はミサイルで撃たれたと確かな口調で述べられていたが、(国防大臣と参謀本部のスポークスマンの談話によると)、今回はこれを立証する証拠はなかったとしている。(参謀本部による最近の説明では、対空砲の可能性に触れられたが、ミサイルについては言及されなかった)。
この疑問は、もともとは深刻に受け止められていなかったいくつかの推測や陰謀説に信ぴょう性を与えることとなった。 しかし、次のことは知っておくべきだ。アンカラにおいて、公的レベルにおいて、当初ぶつぶつつぶやく人々と、あとから明確に述べる人々との間にあるいくつかの矛盾する言動ゆえに、不確実性や疑惑が今日まで続いている。

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これは、トルコの外交を窮地に至らしめる一つの状況(要因)である・・・。トルコのように力のあるこの地域の一大勢力が被害を受けたときに、まず国際社会からの支持を獲得する一方で、その後疑惑を生み出すような状況を示すことは、その国の信頼性に影を落とすことになる。
実際、海外の通信社や新聞メディアは、トルコは時々、「吠えたり、牙を剥いたりするが、少しするとおさまる」と述べている。
実際、最近人々を混乱させている矛盾と疑問は、問題の本質を変えるものではない。つまり、シリアが(自身も認めているように)トルコ軍航空機を撃墜させ、二名の優秀なパイロットを死亡させた張本人であるということだ。技術的な詳細や憶測によって、アサド政権がこの問題に責任があるということから注意をそらしてはいけない。

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( 翻訳者:細谷和代 )
( 記事ID:27008 )