Semih İdizコラム:エルドアンのロシア訪問と、シリアの今後
2012年07月21日付 Milliyet 紙

エルドアン首相はシリア問題についてロシアを説得できなかった。できなかったどころか、モスクワはトルコを一定程度、自身の側へ引き込むことに成功した。エルドアンがモスクワでジュネーヴ会議への支持を語ったことがこれを示している。

エルドアンがシリアの一体性の維持を重視していることを表明し、モスクワは満足した。トルコの治安の観点からも、中東(情勢の)安定という観点からも致命的なことであるが故、アンカラはこのことをより頻繁に主張すべきだ。


公正発展党(AKP)のヤシャル・ヤクシュ元外務大臣は、シリアの構造が統制を失って崩壊し、国がスンナ派、アレウィー派、キリスト教徒、クルド人などを軸に分断されたなら、この状態がトルコにとっても大きな悪影響をもたらすと確信している。シリアで分断が進めば、今より多くの人が命を落とすことは、もはや誰の目にも明らかだ。エルドアンが今週、訪問したモスクワで、ジュネーヴ・プロセスへの支持を表明したことは、こうした理由から重要である。ではジュネーヴ・プロセスとは何か?

復習すると、アメリカ、ロシア、そして中国を含む、安全保障理事会の常任理事国と、トルコ、カタール、クウェートのような国々、アラブ連盟とEUの代表団が参加したジュネーヴ会議は6月30日に行われ、のちに「共同声明」が発表された。モスクワから帰国し会見したエルドアンによれば、ジュネーヴ・プロセスの最も重要な側面は、バッシャール・アル=アサドのいない、幅広い層が参加する、「広範な政府」が構想されている点にある。しかし、声明のどこにも「アサドが新政府にいてはいけない」という言葉はない。アサドに全く言及されていないが、検討されているシリアの新政府は「現在の政府のメンバーも含まれうる」ことを声明は示している。

客観的な真実として、このような政府において、何がどうあろうとアサドが居場所はないということが承認されたとしても、当該の声明に盛り込まれなかったことを云々することは、社会のすでに十分に混乱した状況はより事態を不透明なものにしている。体制だけでなく、反対派の暴力もただちに終了することを望んだ声明は、シリアに誕生する新たな社会で「誰にもチャンスが保障されることが必要である」ことを強調し、次のように続く:「今回の変革で、宗派間や民族間、宗教間そして言語的な要件に基づく差別はありません。数に関しては少数派も、その権利の尊重が必要な事柄において、絶対的な保障がされなければなりません。」

要約すると、スンナ派が主流をしめ、アレウィー派、キリスト教徒、クルド人そして少数派に関して統治を行う政府が望まれていないことは明らかだ。さらに声明では、軍や諜報組織?を含め、現政府の構造と政治家が「人権を尊重するとい条件で」現在の地位に留まり得ることを明らかにしている。

この件では、AKPが今日まで実施てきたバース党との対決姿勢、明確なスンナ派支持シリア政策と矛盾することは明白だ。トルコが支持するスンナ派中心の現シリア政権反対派は、そもそもジュネーヴで発表された共同声明を「殺人者と同じテーブルにはつかない」と拒否した。

エルドアンがモスクワで、ジュネーヴ・プロセスへの支持を表明した後、ロシアのプーチン大統領が大変満足した様子だった理由はこれなのだ。なぜなら、モスクワには、ロシアが良く思っていない反アサドや反バースの反対派「シリアの友」グループの熱心な支持者であるトルコが、ジュネーヴ・プロセスをぶち壊そうとしていると信じる者がいるからだ。しかし、「アサドとその盟友らはやがて去り、シリアが最終的に幸福になる」というような期待は、まったくの想像であると、もはやトルコもわかっている。アサドは失脚しつつあり、シリアの構造が統制を失って崩壊することのもたらす結果は、トルコを怖がらせ始めた。

アメリカ占領後のイラクで、バース体制が早急に解体させられたせいでおきたことは、誰のが知るところだ。トルコはよって、シリア政治に対し、もはやそろそろ微妙な調整に入り、その影響力を行使して反対派を、彼らが拒否したジュネーヴ・プロセスの問題について説得をしなければならない。シリアが分断し、周囲の国々が必ず遭遇する血にまみれた内戦を望まないのであれば、他の選択肢はない。シリアの本来の問題はもはやアサドが対処することではない。地域の安定のためにあの国を機能させ、統率のとれた状態にすることが問題なのである。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:杉田直子 )
( 記事ID:27077 )