Firet Bilaコラム:PKKの目標は「主権」―国会議員誘拐
2012年08月14日付 Milliyet 紙

PKK(クルディスタン労働党、非合法組織)はCHP(共和人民党)党員でトゥンジェリ県選出のヒュセイン・アイギュン議員を誘拐し、脅迫の度合いを強めた。同テロ組織が国会議員を誘拐したのはこれが初めてである。この脅迫的のメッセージは、トルコでは誰も安全と言えないこと、テロ組織が国会議員を攫うほどの力と大胆さと勇気を持っているということだ。

■主権のシンボル

PKKはこれまでに、兵士、ビジネスマン、教師、医師、村長、党組織の県や郡の支部長、副郡知事を誘拐し、国家権力のシンボルに組織的な攻撃を与えてきた。
今回は国会議員を誘拐し、国民の意志を代表するトルコ大国民議会に対しても恐れを知らぬ攻撃を仕掛けた。
PKKの基本的な目的の一つは、トルコ共和国の権威を傷つけることである。さらに南東アナトリアに政府と並ぶ権力を確立し、その住民に「二つの権力」の間で圧力をかけることである。
シェムディンリ郡での襲撃にもやはり、国家の権力を排除することとし、代わりに自らが主権をにぎっていることを示すという狙いがあった。官公庁を標的としたり、トルコ国旗を下ろしてPKKの旗を掲げようとしたり、道路を閉鎖して検問を行なったり、PKKが市の行政権を手にしたとのデマを流したりすることの目的は、国家との主権争いである。

■「逮捕 Gözaltı」という表現

PKKは、行動と同様に発言においても自身の権威を高めることを意識している。
あたかも南東アナトリアに政府に代わる国家が作られたかのような印象を与えるため、表現を工夫している。
特にKCK(クルディスタン社会連合)の活動において、同組織が立法機関、行政機関、裁判所、自衛のためとされる保安軍、税務署、税関、徴兵局といった部門から成ることをあらゆる場面で強調していることがこの良い例である。
CHPのヒュセイン・アイギュン議員の誘拐後にPKKが出した声明においても、同様の印象を与えるための表現が用いられている。
PKKは声明で、ヒュセイン・アイギュン議員が「逮捕」されたと述べている。逮捕という表現は、国家権力が用いる法律用語の一つである。裁判所の指示を受けて警察が実行し、その後に取調、司法手続きに移る。PKKは「我々は国会議員を逮捕した」と表現することで司法組織が用いる言葉とその一連の手続きを想起させ、自分たちが主権を握っているとのメッセージを発している。

際、PKKは昨日の最後の声明でアイギュン議員について、「必要な行政及び司法上の手続きが完了すれば、ヒュセイン・アイギュンは直ちに釈放される」と述べた。「行政及び司法上の手続き」という表現は、独自の裁判所を作り刑罰を与えるのだという、このメッセージに向けての作りこみである。
PKKは、最近の傾向であるセンセーショナルな行動によって、国内、国外双方に向け、トルコ政府の統治が必ずしもトルコ全土に及んでいないと信じさせようとしている。

■国家問題

テロは国家的な問題である。そして国家政策による闘争によってのみ無力化することができる。
トルコはこの30年近くの間に分離派テロとの戦いで多くの血と源を失った国だ。
テロ組織が日に日に脅威の度合いを高め、白昼に道を閉鎖し国会議員さえ誘拐するような状況において、この問題が政党間の駆け引きの材料として見なされたり使われたりすることは間違っている。
PKKは、トルコの国家としての全体性を脅かすテロ組織である。この事実を前に、民主主義と国家の全体性を重んじる与党や野党、すべての政党が、可能な限り広範に社会的・政治的合意に至る努力をすること、この合意によって得られた支持によってテロと戦い続けることが必要である。
フォチャの軍用車両への襲撃後、イズミルの市民が団結を見せたように、アンカラの政治組織も同様の団結を見せるべきだ。

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:27344 )