訪土するのか否か、何日も議論されていたロシアのウラジミール・プーチン大統領がイスタンブルを訪れ、三度目のトルコ‐ロシア首脳会談が実現した。訪問が成るか否かが心配された原因は、以前訪問が延期されたことにある。延期の理由はプーチン大統領の腰の不調だとされたが、シリア問題で、トルコ政府と距離を置いているのではないかと考えられていた。その後プーチン大統領の12月3日のイスタンブル訪問が発表されたものの、この不安が当日まで完全に晴れることはなかった。

■訪問の要件

こうした状況では、プーチン大統領のトルコ訪問さえも重要なものとなる。その理由を以下に挙げよう。
シリアに関して両国の立場が反対である。
モスクワから離陸したシリアの航空機をトルコがアンカラに着陸させ、積まれていた軍事物資を押収した。
これによりモスクワ‐アンカラ関係がさらに緊張し、お互いを非難した。
トルコがNATOにパトリオット・ミサイルを要求し、国境に配備しようとしているが、これがモスクワの厳しい反発を買っている。
このような条件下で、健康上の理由から2ヶ月もの間全ての外交訪問を見合わせていたこの時期に、プーチン大統領の訪問が実現したことは、ロシアがトルコを経済的・政治的に重要視していることを示すものだろう。

■メッセージでの緊張緩和

ロシアが両国の関係を重んじていることは、プーチン大統領の訪土前に、シリア航空機危機に関してロシア政府が発言をやわらげ、その上一歩退いたことからも見てとれる。プーチン大統領の訪土前、ロシア政府はシリア航空機に積まれていた物資が高射砲システムの部品であり、前もってトルコに連絡しなかったのは誤りであったという旨の見解を述べた。ロシア政府は「トルコが正しい。我々は連絡するべきだった」といった声明を出し、両国の緊張をほぐした。

■経済の保護

トルコとロシアの経済関係は一瞬で消え去り、打ち切られるような表面的なものではない。ロシアにとってトルコは最も重要な天然ガス供給先のひとつである。トルコの天然ガス需要は基本的にロシアによってまかなわれている。
エルドアン首相の表現を借りれば、トルコ経済の観点からロシアは二番目に大きな協力先である。トルコは天然ガス購入に加えて、初の原子力発電所の建設もロシア企業に委ねている。第２機、３機の発電所についてもロシアにチャンスがある。
シリアでの対立によるいざこざの最中にプーチンが第三回首脳会談に訪れたことには、経済関係を政治関係から守り、区別するという意味もある。次第に拡大し、浸透する経済関係の保護は、トルコにも共通する目的である。

■シリアに関するプーチン大統領の発言

シリアでの緊張が最高潮に達しているこの時期にプーチン大統領がトルコを訪問するとは、この問題によりトルコを無視することはできないという証拠だ。エルドアン首相と行った共同記者会見でのプーチン大統領の言葉も重要だった。ロシアはシリアの体制を支持はしておらず、シリアの弁護士でもないと述べたのだ。両国がシリアについて本来は同じ立場だが、手段が違うのだと発言したことで雰囲気はさらに穏やかなものになった。イスタンブルでの会談で新たな構想が話し合われ、それについて検討するとしたことからも、ロシアがトルコ側の見解を重要視していることが分かった。

■リビアとグルジアの例

プーチン大統領の発言で、ロシアがシリアに関する立場を変えるということは勿論ないだろう。しかしアサド政権があとどれほど持ちこたえられるか、プーチン大統領が真実を把握していることは間違いない。シリアに基地や戦略的利益を持つロシアは、可能な限りプロセスを長引かせようとしている。さらに、トルコ政府の舞台裏での表現を借りるなら、「アサドの椅子を蹴る執行人」になりたくはないのだろう。可能な限り利益を確保したまま混沌から抜け出したいと思っているのだ。移行プロセスについての発言もこれを示すものだといえる。
プーチン大統領はリビアを例として挙げた。NATO、そして米大使の殺害を取り上げて、急進派の支援がどのようなことをもたらし得るのかを指摘した。NATOやパトリオットをこの例を持ち出すことで批判したのだ。
だがプーチン大統領はグルジアでの例も思い起こす必要がある。
トルコは、ロシアがグルジアに入国した際モントルー条約を厳格に守り、ロシアにとって脅威であるアメリカの巨大戦艦に通行許可を与えなかった。こうしてトルコ政府は国際法に基づいて行動し、他の中枢（訳注：アメリカ）の利益のため要求されるままに方針を転換するような首都ではないことを証明した。
結論として、プーチン大統領のこの危機的局面におけるトルコ訪問は、トルコ政府の力量とイメージを強めることとなったと言えるだろう。

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（ 翻訳者:白鳥夏美 ）
（ 記事ID:28446 )