エジプト:「同胞団」の過ち
2012年12月09日付 al-Hayat 紙

■エジプト:ムスリム同胞団の過ち

2012年12月9日 日曜日 『アル=ハヤート』

【本紙:アブドゥッラ―・イスカンダル】

2つあるいはそれ以上の当事者間における議論の役割とは、両当事者の間で議論の余地のある問題について協議することであり、そして、おおよそ当該問題についての相互理解と合意に至ることであろう。しかし、一方の当事者が議論の余地のある問題の中で何らかの事項を決定し、それからもう一方の当事者に対して話し合いを求めるということは、それすなわち「自らを最善の状況下に、別の当事者らを最悪の状況下に、そして彼らを嘲り笑う中に自らを据えること」を意味する。これこそが、ムハンマド・ムルスィー大統領が反体制勢力と共に行ったことである。その目的は、ムルスィー大統領による憲法発布、および憲法制定議会と国民選挙の意向とは根本的に異なる憲法草案を作成することである。

エジプト野党勢力はムルスィー大統領が昨日(8日)請願した議論への参加を拒否した。これを受けたかたちで、ムスリム同胞団系の諸勢力と同胞団の影の下でいて何らかの役割を狙っている周辺勢力の出席者らによって、議論の形式は信任を受けた。

大統領官邸周辺から漏れてきた情報によると、大統領府から発行されたシナリオの準備が、同胞団の調理場で準備されたことは偶発的なものではないという。そのことは、同胞団が「大統領府で行われた以前の会議は、野党勢力の基本的な要求に応えることができ、かつ憲法発布の苦境の突破口を開くことのできる枠組みに達した」と感じた後のことであるという。

またこういった動きには、反体制派市民勢力に向けられたメッセージが含められている。しかしながら、巷におけるエスカレーション(暴力の激化)や我々が憲法発布後に経験した暴力の手口の巧妙化に対する考慮は一切ない。

このメッセージの冒頭では「同胞団は、周知の状況の中でムルスィー氏が達成した大統領選の勝利を勝ち取った。特に、対立候補者であるアフマド・シャフィーク氏に対する多くの投票の面に関して、同胞団は彼以上の支持数で多くの投票をかき集めた。そして、依然として同胞団のメンバーであり、その指導部に就いている大統領を通じて、同胞団は自身に執政権を与えるようになった」と言われている。

政権の運営を同胞団のビジョンと一致させるもの、また同胞団に憲法制定議会の決定を独占させ同胞団に従属させること、こういったことが同胞団の目的である。

このような統治に対する認識に連関して、同胞団から見た「反体制派」とは、もはや暴漢、前政権の支持者、脱走兵、ウラマー集団の指揮者とみなされるようになった。なぜなら、同胞団は、彼らをエジプトのすべての町に埋め尽くした反体制派の人々の運動に対して、明らかに深く軽蔑し、今日の反体制派運動の要求とかつての反体制派の運動、および前政権の崩壊における(反体制派)運動の役割も軽蔑したとみているからである。同胞団はこのような国民からの追い風(野党勢力の勃興)を、敵対行為とみなし対処しており、政府はこれに対し一方では容赦なく対処し、またもう一方ではその要求と提案を拒否するべきだとしている。つまり、同胞団は、意図的にエジプト国民を同胞団を支持する「善」と、残りの国民を内包する「悪」に二分化しているのである。

反体制派のデモに直面する中で同胞団が支持者たちにさせたことは、同胞団の望むこの二分化について表現しないことである。そして、同胞団が国家的暴力に臨み、反体制派勢力に対して敗北を強いることに躊躇しないだろうということも同様である。そのことは、同胞団が統治を勝ち取った後のことである。すなわち、同胞団は自らを支配者とみなし、たとえ力ずくであったとしても、反体制派国民勢力の失墜を求めているのである。

権威主義的な諸体制下における有名な「国民戦線」のモデルに基づいて、同胞団は国民的反体制派勢力の代表者の交代を追求している。同胞団は、これらの勢力を、その運動と周縁的性質に鑑みて「敵」と「悪」として位置づけた。そして「同胞団的」統治に対する国民の総意を条件として、これらの運動や性質を、この統治に併合することを追求しているのである。

したがって、同胞団はムルスィー大統領による統治、およびムルスィー大統領の存在が同胞団の統治であるという意味によって、自らのイメージの本質を保持し続けるようになった。そして同胞団は、自らの各声明や現在のエジプトの統治に関する実質的な表現者と自らを見做す高官らの声明の中で表現しているように、現場の進捗状況や解決の働きかけは言うに及ばず、自らのプロジェクトを続けているのである。

これらのことに関して、現在のエジプトを広く覆っている状況とは異なった状況の中で、同胞団にとって高額なコストを伴わずに、速やかに正常化することは可能であった。おそらく、ここから同胞団の大きな過ちが始まったのだろう。というのも、同胞団は自らを自分たち以外に真実を知る者はいないかのように、そして絶対的な権利の保有者であるかのように視ているからだ。それによって、他者に対する優越感が生じているのであるが、彼らは自らのあらゆる力をもって前政権を崩壊させ、兵士から放たれる弾丸に立ち向かい、決して後ずさったりしなかった今日日の反体制派勢力に注視しておらず、また彼らの同胞団のプロジェクトに立ち向かう決心と力を倍増させたものが何であるかについて、注意を払っていないのである。

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( 翻訳者:今井花南 )
( 記事ID:28506 )