クルド自治政府とイラク政府の間でゆれる、キルクーク・トゥルクメン住民
2012年12月10日付 Hurriyet 紙


バグダード(中央政府)か、北イラクのクルド自治政府か、キルクークの前には二つの選択肢がある。キルクーク県議会のトゥルクメン人議員、トゥルカン・エユプ・シュキュル氏は、「アルビル市は、クルド人はおらずトゥルクメン人が大半を占めていたが、今、トゥルクメン人はいなくなった。北 (クルド人の政府)に帰属することになれば、同化(政策)が始まる」と述べた。

キルクークでは、クルド人であれ、アラブ人であれ、トゥルクメン人であろうが、最も関心のある議論は、市(キルクーク)がどちらの側に統合されるかという問題である。「バグダードの統治か、さもなくば、クルディスタンの統治下に入るのか?」、いつでもどこでも尋ねられる質問だ。キルクークに暮らすクルド人は例外なく、クルディスタンに帰属することを支持する態度を表明している。シーア派のアラブ人とシーア派のトゥルクメン人については、一般的にバグダード政府の統治下に入ることを支持している。スンナ派のトゥルクメン人とスンナ派アラブ人については、はっきりとした結論を示していない。最近、スンナ派アラブ人については、興味深いことにマーリキー政権と協調することを望む声が優勢となっている。そのうえ、キルクークにおいて、住民がスンナ派アラブ人から成るハヴィジェ郡に駐留するマーリキー・チグリス部隊を支持するデモは、全イラクで「記憶を破壊する行動」とみなされた。

■アルビルの前例がある

バグダードの統治により熱い視線を投げかける人々が口にするその理由とは、一般的にクルド人の最近の行動と約束を守らないことに関連している。キルクーク県議会のトゥルクメン人議員、トゥルカン・エユプ・シュキュル氏は、「住民は(イラク中央)政府とともにあり続けることを受け入れます」と話し、その理由を以下のように説明した:「アルビルの前例があります。アルビル市中心部には、クルド人はおらず、トゥルクメン人が大半であったが、今はトゥルクメン人を見つけることはできない。アルビルで起きたことは、キルクークでも起こりうるでしょう。もし、(キルクークが)北に帰属するとなると、同化政策が始まります。」トゥズ・フルマトゥ郡議会のトゥルクメ ン人議員のイッゼッティン・イスマイル氏もクルド自治政府への帰属に反対している。彼は「チグリス部隊が展開したことは大変重要です。ペシュメルガ(クルド人の部隊)とは何ですか?あれは、ゲリラです」と話した。

■重要な役職はクルド人へ  

基本的な問題は、キルクークの官僚制においてクルド人が優遇されていることである。あらゆる重要な役職はクルド人が就いている状況である。トゥルクメン人はより低い地位に任命されている。アラブ人は、キルクークの官僚制においてはまったく軽視されている。また、市での県の委託事業もクルド人の会社が保護されているとの見方が支配的だ。これも、トゥルクメン人が「クルド人は約束を守らない」と考える理由となっている。
しかし、これらのことにもかかわらず、トゥルクメン人とクルド人の間にはある接近が起きている。最近、検問所でクルド人の治安部隊は、以前とは裏腹にトゥルクメン人に対し、もめ事を起こさなくなった。アラブ人、特にシーア派については、(クルド人の)治安部隊は絶えず問題を起こしていると、キルクークでは皆が口にしている。元々これは新しいことではない。町で支配的ないずれかのグループが他方に対し、問題を引き起こすことは過去にもあった。あるトゥルクメン人が示した例が興味深い:「サダムの後に生まれたあの混乱の日々に、誰もが二つの身分証明書を手にしていた。それらには異なる名前が記載されていた。ひとつは、一般的にシーア派であることを示す名のもの、もうひとつはスンナ派であることを示す名のものである。シーア派の検問所ではシーア派の身分証明書を、スンナ派の検問所でスンナ派の身分証明書を見せた。そうすれば簡単に通り抜けられた。」

■トゥルクメン人とクルド人の同盟

トゥルクメン人は最近、クルド人が自分たちに向ける視線の暖かさに接して、はじめてクルド人との同盟や、キルクークがクルディスタンに帰属することについて議論したのである。トゥルクメン人は最初、キルクークが自治に留まることを断固として選択した。しかし、それができないなら、「なぜ、クルディスタンと統合しないのか」という声もある。

クルド人は、クルディスタンとの統合について、キルクークの住民を説得するために、他の方法を模索している状況にある。たとえば、キルクークのナンバープレートの車は都市部へ「ビザ(査証)」とともにひそかに送り込まれている。北イラクのクルド人が統治する都市では、驚くべきほど開発が行われ、豊かになっている。アルビル、スレマニア、ドホークはほとんど再建された。一方、キルクークは日々の生活も大変厳しい。重大なインフラの問題がある。主要な道路でさえ壊れている。脇道の一部は普通の乗用車では、くぼみがあるため入れない。
 
■叔母の食卓

バグダードが派兵したチグリス防衛部隊とペシュメルガの部隊が互いに銃口を向けて睨み合っているキルクークで、トゥルクメン人は筆者をもてなしてくれた。ホテルはまったく安全ではなかった。だが、幸運なことにトゥルクメン人は明らかに世界でもっとも客のもてなしに長けた人たちだ。筆者はキルクークの友人の叔母の家で泊まった。

■流行る誘拐

武器に囲まれたキルクークの中で、トゥルクメン人の日々の暮らしは厳しさと不安の渦の中にある。市でもっとも「流行」しているのは誘拐である。
誘拐は、時には身代金のために、時には政治的な理由によりおこなわれる。私が聞いたある事件は、誘拐されたトゥルクメンのために、政治的行動を理由に、最初に要求した身代金の値引きがおこなわれた。あるトゥルクメン人は「誘拐はもう普通のこととなった」と語る。そして「要求された身代金を用意し、解放されることもあります。しかし、時折、身代金を払っても殺されることがあります。そのようなことはとても辛いことです」と続けた。

■キルクーク市はしばしば爆弾で激しく揺れている

キルクークの中心部は毎週、いくつかの爆弾が爆発する事件があり、激しく揺れている。一般的に自動車爆弾による攻撃である。自宅で私を泊めてくれたトゥルクメン人が言う:「先週、3つの爆弾が爆発した。私の妻もアンカラから帰ってくるところだった。私に電話で街の状況はどうなの?」と聞きました。ちょうど 電話で話している時にも爆発音がありました。私は電話口で直接その音を聞かせました。」
状況は、市の経済にも影響を与えている。キルクーク市議会議員のジェヴデト・ズラル氏は、人々がお金を使うことを恐れており、ビジネスができないと話し、以下のように付け加えた:「誰もが手にある金で、必要だといって米ドルを集めている。」

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:岸田圭司 )
( 記事ID:28519 )