Cengiz Candar コラム:シリアのクルド問題にトルコはどうアプローチすべきか
2012年12月17日付 Radikal 紙

シリアのクルド人地域で真の自由選挙が行われ、PYD(民主統一党)が他のクルド系政党より多く得票したならば、どうするのか?

ベイルートの後にディヤルバクル…。ディヤルバクル弁護士会主催の会議の場にいる...。議題は、大体ベイルートで話し合われ議論されたことと重なっている。

(中東)地域、具体的にシリアの動向、さらに具体的にはシリアのクルド人を含んだ動向は、トルコとトルコのクルド問題にどのような影響を与えるのかを話し合う。

16日付記事の最後で強調したことは、土曜日に本紙でデニズ・ゼイレク氏の署名記事で取り上げられ、ミリエット紙でもアスル・アイドゥンタシュバシュ氏の署名記事の見出しとなった。それは、アフメト・ダヴトオール外相のPYDに関する評価について考察した。同記事の最後で、「間違った評価」と「間違った知識」に触れ、PYDをバッシャール・アル=アサド大統領のシャビーハ(アサド政権支持派民兵)と同じカテゴリーで評価することは妥当ではないと強調し、その理由を以下にように記した。

「これらの何ひとつ正しくはない。トルコにおけるクルド人問題へのアプローチの歪んだ見方が、シリアのクルド人に対してもそのまま適用されたものだ。真実と事実に基づかない認識に依拠した政治は機能しない。」

シリアのクルド人、その文脈でPYDに関する「間違った知識」と「間違った評価」に最初に注目したのは私ではない。若手研究者アルズ・ユルマズ氏は8月のRadikal 2の記事に以下のように記していた。

「トルコでクルド人問題への解決策がでてこない最大の理由の一つは、「知識」不足だ。クルド政治運動で生ずるあらゆる動向は、歴史的文脈から切り離され 、今日的な議題に焦点があわされて読み込まれ、解釈されている。疑いなく、その最も重要な理由は、共和国の(その問題に対する)否定的・同化的政策にある。クルド人を無視する政策は、当然ながら、クルド人とクルディスタンに関する知識を生み出すことを妨害している。特にこの10年の政治や通信分野で起きている変化が、この状況をある程度変化させたとしても、上記の政策が生み出す欠陥はいともたやすく修復されなかった…。」

アルズ・ユルマズ氏は(記事の)後半に以下の問いを投げかけた。「この文脈で、シリアで内戦が起きたことで懸案事項となったPYDについて、「PKK(クルディスタン労働者党:非合法組織)の関連組織」という決まり文句を口にする以外に、何を知っているのか?」

同記事の最後で、公正発展党(AKP)政権へ間接的にある案を提示した。
「PYDについてであるが...、AKP政権は、PYDを『PKKの関連組織』として除外するのではなく、「私たちの間違いの結果」として取り入れることは、至極可能であり、より賢明だと考える…。PYD、シリアのクルディスタンで醸成された権威の認識は、ある意味「道半ばの計画」の継続のように見えるかもしれない。

アルズ・ユルマズ氏は、16日付Radikal 2の「クルディスタン問題」というタイトルの大胆な記事に(この問題を)再びとりあげた。記事の導入部は、ある意味、もっとも説得的で妥当な部分であった。

「….トルコが『クルド問題』として議論してきた解決案なきものの名称は、クルド人の大多数にとっては『クルディスタン問題』となる。トルコは、その国境内に暮 らすクルド人をどのように管理するか探求する一方、クルド人は、クルディスタンをどのように管理するか議論している。この二つの異なる文脈から行動する双 方が最終的に合意することは簡単だとは考えられない。なぜなら、双方が期待する内容が異なるためだ。事実、今日までおこなわれてきた努力が水泡に帰してきたのは、この理由からだ。」

問題の「本質」及びこれに並行する外務大臣の「間違った評価」の理由は、すべてこれである。問題に対するアプローチの基礎が異なるのである。自分の所のクルド人をいかに管理するのか完全に解決できず、徐々に統御不能の状況に陥りつつあるトルコは、シリアのクルド人をどのように管理すべきか導きだせないのである。

シリアのクルド人を、イラクのクルド人を介して統制下におく努力は、「戦術的機会」を提供しないし、提供しもしない。なぜなら、シリアのクルド人は、イラクではなくトルコのクルド人と関係が深く、基本的にトルコにいる親族を含む動きから最大級の影響を受けている。

このことは、ある側面では、次のようにいえる。トルコはクルド人へのアブドゥッラー・オジャランの影響を断ち切れないなら、BDP(平和民主党)を「排除できない」ならば、ーもはやできないし、そうしたり、そう試みることは、トルコに何の利益もないー その場合、シリアでPYDがクルド人の居住中心地において、シリアのクルド人の間で影響力を保持することを防ぐことはできない。PYDはすでに現実であり、さらに近々、「シリアのクルド人の方程式」の中に場所を得るであろう。

PYD及びそれを介したシリアのクルド人に関する「間違った評価」を導くものは、アプローチの間違いからのみではない。こうした「間違った評価」は、「間違った知識」に支えられている。

この最たるものが、PYDが「(アサド)政権寄り」であるということだ。PYDがバッシャール・アル=アサド政権と関係がないとは誰もいわない。まさに、AKP政権が、およそ2年前まで、バッシャール政権が「世界で最高の友人」であったということを誰も否定できないように。

タイイプ・エルドアン首相とアフメト・ダヴトオール外相は今後バッシャール政権との関係をどのように改善したとしても、彼らほど近しくないPYDが同じことをしないとは考えられない。PYDがバッシャール政権に反対するアラブ系野党と同じ隊列に留まらないことは、同政権の「傀儡」ということにはならない。バッシャール政権がどの国境検問所の管理をPYDに引き渡したかは、「中央の弱体化」に関係している。PYDがバッシャール政権のシャビーハと同じものである、ということとは 関係しない。

PYDが何10年も権利を奪われトルコのクルド人の状況からもっとも影響を受けるシリアのクルド人の組織であるという事実を排除して取り扱うことは、間違った結果をもたらす。特に、クルド人の組織間の競合から生じる紛争をみて、PYDを「クルド人を殺害するのが唯一の仕事の組織」と認識し、「政治的方程式」に入らないと判断することは、もうひとつの間違いである。

明日、シリアのクルド人地域で真の自由選挙がおこなわれ、PYDがすべてのクルド系政党よりも大量に得票したならば、あなたはどうするのでしょうか?語る言葉が見つからないなら、「その状態」にどのようにあなたは関わるのでしょうか?

最近、アルカイダの関連組織アン=ヌスラ戦線とグレバ・エシューシャムのような集団がシリア側の都市部でPYD支持者たちを攻撃目標に使用されているとの証言がある。一昨日ディヤルバクルでのことだが、トルコが支持している「自由シリア軍」の名を使っている一部グループが、クルド人 に対し攻撃し、イラクと同じようにシリア・クルディスタンでも「アラブークルド戦争」が勃発するシナリオが頭を駆け巡った。

実際に、マラケシューアブダビ間でおこなわれ、一昨日のラディカル紙とミリエット紙に掲載された発表の最も危険な側面は、トルコのクルド問題がシリアのクルド問題と邂逅し、広がり、そして、解決することがより複雑な状況になる可能性を指摘していることである。

これほどの年月、(トルコは)自身のクルド問題の解決する方法を得られなかったのに、シリアのクルド人へのアプローチがなぜ正しく妥当性があろうか?

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( 翻訳者:岸田圭司 )
( 記事ID:28593 )