Ismet Berkan コラム:トルコに原子力発電所は必要か
2013年01月12日付 Hurriyet 紙

トルコは発展中の国である。そのため、電力需要・電力消費が増えた国である。

エネルギー省が、今日から2020年に向けて2つのエネルギー需要増加のシナリオを作成した。このうち1つが「悲観的」、もう1つが「楽観的」なシナリオである。どちらのシナリオにおいても、2017年、つまりたったの4年後に供給量が需要量を賄えないと見積もられている。

供給は、そうした日においつかなくなる。その時が来たら対応できるように、事前計画しておくことが必要である。

たとえば、トルコはメルスィン・アックユでの原子力発電所建設のため、ロシアと合意した。計画によると、この発電所の第一ユニットは2020年に稼働することが期待されている。しかし、まだ発電所の建設が始まっておらず、いつ始まるのかわからない、と述べておかなくてはならない。

本題へ移ろう。他の計画が施されていないため、私たちには原子力発電所が必要である。予測によると、2020年に第一ユニットが稼働すると、原子力によるエネルギーは、増加した需要の30-38%を占めることになるという。発電所建設が延期されるか、又は全く建設されなければ、この需要はどのように満たされるかは不確かである。原発問題は世界中同様、トルコでも社会でよく議論されるべき、非常に不吉な問題である。

したがって、トルコはエネルギーという卵を原子力という籠へすでに置いた、という論調でこの記事を始めた。今、私たちの状況は選択の余地のないように思われる。しかし、もう一度、私たちは原子力について議論しなくてはいけない。

「トルコにこの技術を」と、ナショナリスト的理由で原子力を求めている人がいる。この主張は、少なくともアックユに関しては正しくない。アックユにある発電所は「私たちの」ものではなくなってしまう。トルコは基本的にロシア政府の会社から電気を買うことになる。発電所はロシアのものになってしまう。

興味深いことに、この発電所はトルコの関与を要しないほど非常に安くつく。世界で類を見ない方法で、ロシアの会社がすべての財務を引き受け、トルコ政府はほとんど(電気購入の保証を除いて)全く必要とされていない。

トルコが「保証する」という電気代も発電所の費用に含まれている。すると、奇妙な疑問が頭に浮かぶ。なぜロシアは私たちに接触してくるのだろうか?ロシアは、この先、この事業協定で赤字が出るとして発電所を全く建設しないか、それとも利益を享受するため、あるところから出費を減らすか、である。

どこから減らすことができるだろうか。もちろん安全性からである。

だから、発電所建設でトルコが特に気を付けることは、使用するコンクリートの質から厚さまですべて、しっかりとした検査にかけるということである。トルコに取って国として十分に備えておらず、国際基準からでさえはるか遠いものは、検査監督、より正確に言うなら、監督機関の問題である。

少し考えてみてほしい。2019年、監督機関が、発電所のコンクリートが必要なものより粗悪でより薄いものと確認したとする。 政府に付属する機関、現在のトルコ原子エネルギー機関(TAEK)は、「この建物のコンクリートを除け、私たちの基準を下回っている」といえるだろうか? もしくは、TAEKの直接の上司であるエネルギー省は「こうしなければ来年は電気が足りなくなってしまう」と杞憂して、コンクリートの粗悪さを見過ごすのだろうか?

したがって、発電所に関わる監督機関の問題において、私たちは注意深く、十分な情報をもって行動しなければならない。

ほかの問題は、核廃棄物についてである。現在の協定は夢のようである。ロシアが「廃棄物は私たちが引き取る」と言っているのだ。これは、世界でも類を見ないことである。

しかし、ロシアは引き取れるのだろうか? 核廃棄物について、我々が何を約束したのか知っておかなくてはならない。「廃棄物」と言われる物質は、何年も、さらには何十年も発電所のある場所にとどめ、よく冷やされなければならない。なぜなら、一度反応したウランは、 「さあ、もう反応を止めよ」とは言えないからだ。だからもし、発電所の寿命が60年ならば、ロシアの会社と少なくとも90年続く結婚をしたことを忘れてはいけない。

***

このコラムにおけるすべての情報を、経済・外交研究センター(EDAM)が今年2番目に発行した『原子力エネルギー拡大へ トルコモデル』という報告書からとった。報告書は、EDAM所長シナン・ウルゲン、ユルドュズ技術大学のハサン・サイグン教授、サバンジュ大学のイザク・アティヤス教授、ボアジチ大学のギュルカン・クムバルール教授が作成した。彼らにアーロン・ステインとデニズ・サニンが協力した。

この報告書をすべての関係者がお読みになるよう勧めます。


(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介
されています。)

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( 翻訳者:甲斐さゆみ )
( 記事ID:28856 )