「アルゴ」オスカー獲得にイラン激怒―オバマ夫人の衣装へも「検閲」
2013年02月26日付 Hurriyet 紙


1979年イラン・イスラム革命後に発生したアメリカ大使館人質事件を題材としたハリウッド映画『アルゴ』のアカデミー賞作品賞受賞は、イランの怒りを買った。イランの公式メディアは、ミシェル・オバマ大統領夫人が受賞作品の発表を行ったということからベン・アフレック監督の受賞スピーチにいたるまで、同作品に関するあらゆることを批判した。

『アルゴ』は、イラン革命後テヘランのアメリカ大使館が占拠されアメリカ人52名が人質に取られた後の出来事を描いている。この映画が題材とした実際の出来事とは、大使館占拠という混乱の中、大使館を脱出しカナダ大使館に避難した6人のアメリカ人をイランから救出するため、CIAが実行した作戦である。革命の最中アメリカ人6人は、イランに潜入したCIA工作員トニー・メンデズの指揮のもと、ハリウッドからSF映画撮影のためにやってきたスタッフに扮し、イラン当局をだまし、救出された。

ジョン・ケリー上院議員の後任の議員候補としても名の挙がったベン・アフレック氏が監督・主演を務めたこの作品は、昨日アカデミー賞作品賞を受賞した。サプライズとして受賞作品の発表は、ホワイトハウスからの中継を通してアメリカのファーストレディ、ミシェル・オバマ夫人が行なった。アフレック氏は、受賞の際「今、恐ろしい状況の中イランで暮らしている友人たちに感謝したい」と語った。

昨年イラン映画として初めて『別離』がアカデミー賞(外国語映画賞)を受賞した時と同様に、『アルゴ』もテヘランを騒がせた。ワシントン・ポストは、イランでは『アルゴ』がまったく上映されていないが、イラン人は二年目も続けてアカデミー賞授賞式に釘付けになったと報じた。イラン国営放送は、この作品を「CIAの宣伝」と評した。イランのムハッメド・ヒュセイニ文化大臣も、「ハリウッドは歴史を歪めている。この映画はイランに対する一種のソフト・ウォー(soft war)であると」と述べた。

■「ワーナー・ブラザーズはシオニスト」

イランのファールス通信は次のように報じた。「シオニスト企業であるワーナー・ブラザーズが制作配給した反イラン映画によって、アカデミー賞史上、稀有なことが起きた。受賞作品の発表をアメリカのファーストレディが行なったのである」。メフル通信は、「ベン・アフレックは作品で歴史を歪めたように、イラン人が『恐ろしい状況の中』暮らしていると発言し、イランにも悪いイメージを押し付けようとしている」と報じた。イラン政府に近しいウェブサイトでは、「反イラン」映画のアカデミー賞受賞を阻止することができなかったアメリカのテヘランロビーを批判した。

■ファーストレディの服装にも「検閲」

ファールス通信は、一昨日アカデミー賞受賞作品の発表を行なったミシェル・オバマ大統領夫人の胸元を大きく開け、肩を顕にしたドレスに、画像加工を施した。検閲後、オバマ大統領夫人のドレスの映像は、喉元まで覆われた形となった。

■欧米からも批判の声

イランだけでなく欧米のメディアも『アルゴ』を批判している。主な批判は、同作品の西洋中心的でオリエンタリスト的な視点に対するものである。

ガーディアン紙のサイード・カマリ・デガン氏:「イラン人を醜く、過度に信仰深く、狂信的で無知な人間として描いている。この作品に、カナダ大使館のスタッフ以外に『よい』イラン人は出てこない。」
ザ・スレート誌のケビン・B・リー氏:「ハリウッドのステレオタイプによって飾られた、『白人アメリカ人がトラブルに巻き込まれる』冒険譚。この映画ではイラン人は皆ゾンビの群れか、真っ黒い顔をした悪魔のようだ。英雄として描かれているCIAこそ、その活動によってイランに今日の問題をもたらした当人である」
パレスチナ・クロニクル紙のサラ・ガレスピー氏:「映画は見せかけの西洋批判をしている。いわゆる誠実なアプローチによって観ている者たちを、『優越感を気取らせることはないが、心の中で優越感に浸らせる』ような状態にしている」

歴史を書き直したこの映画が、カナダ大使の偉業をほとんど無視していること、イギリス政府の貢献に全く触れていないことも批判されている。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:29362 )