イラク:若者たちが始めた「次は君だ」反暴力運動
2013年05月17日付 al-Sabah al-Jadid 紙


■「アンタ・アッ=ターリー」次は君だ:イラクの若者たちが始めた反暴力運動

2013年5月17日『サバーフ・ジャディード』

【バグダード:本紙】

「『アンタ・アッ=ターリー(「次は君だ」の意)』のスローガンは、恐怖を与えるためのものではなく、待ち受けている悲劇的な運命に注意を呼びかけるためのものです。もしずっと口を閉ざしたままだったら、死というものが、毎日イラク人が受け入れねばならぬ運命となるのです。つまり、鶏のように相争う政治家たちは私たちの血でもってその運命を潤わしているのです」

この文章は、人権分野で活動する5人の若者が選んだ、イラクでは先例のない市民運動の紹介文である。この運動が焦点を当てるのは、爆破や殺人の犠牲者だ。これらの事件は、日々、数十名に上るイラク人の命を奪い、犠牲者の遺体は、毎日のニュース報道で単なる数字となってしまっている。

この団体は、発起人らによると、日々止むことのないイラク人の死の状況に反発することを主旨とするものであり、とりわけ、先月(4月)19日にバグダードのアーミリーヤ地区の若者の出入りする喫茶店で起きた、数十名が殺害された爆破事件を受けている。

「アンタ・アッ=ターリー」の活動を始めた5人の1人、ヌーフ・アースィーは『ニカーシュ』紙に向けてこう語った。「爆破の犠牲者を語るとき、多くの人が人間的感覚をなおざりにしていることに私たちは注意を払っています。爆破の話は、イラク人にとって日常的となってしまいました。私たちが最も恐れているのは、人間的とは到底言えない宗派的な報道や議論が拡散することです」

キャンペーンは、爆破に対する非難だけでなく、イラク人に対して悲しむべき叱責(しっせき)を向けることでもある。イラク人は、爆破や殺人や愛する人たちの喪失に慣れきってしまい、警戒すらしない。ヌーフはイラク市民に向かって、次に殺されるのは自分自身かもしれないことに気づかせようというのである。

(中略:「アンタ・アッ=ターリー」運動は、ヌーフら若者たちのフェイスブック上での議論から始まった。爆破事件の犠牲者たちが軽視されていることを問題とした彼らは、バグダード中心部のフィルドゥース広場に向かい、ろうそくを灯し、シャツに「アンタ・アッ=ターリー」の言葉を書いて広場に立った。同日、フェイスブックで彼らが立ち上げたページへの参加者は、わずかな間に1,000人を数えた)

これらの若者たちは、あらゆる機会や、適切と思われる場所で、彼らの街頭運動を普及するべく速やかに動いている。今回選ばれたのは、アル=ムタナッビー通りだ。彼らは、ろうそくを用意し、シャツに貼る小さなステッカーを配った。ステッカーには、さまざまな言語で「次は君だ」と印刷されている。彼らは軍が検問で爆発物捜査に使用するのと似せた機器も制作した。イラク人に、こうした機器は役に立つ代物ではないとの考えを伝えるためだ。

ヌーフは言う。「私たちがイラク人に求めるのは、人間性を取り戻すこと、そして、犠牲者について語るとき、宗派主義的思考を棄てることです。いかなる宗派、,民族主義、民族性に属するイラク人でも、殺害はイラク全てにとっての損失です。だからイラクの人々に、お願いしたいのです。爆破防止のための安全保障失敗しているのに黙っているのはもうやめよう。沈黙こそがあなた方を次の犠牲者にするかもしれないのです」

(後略)

(参考:アンタ・アッ・ターリーのフェイスブックページ

(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:児島祥子 )
( 記事ID:30007 )