シリアのPKK系組織PYD、イラク・クルド自治政府関係者を拘束
2013年05月20日付 Milliyet 紙


シリア国内でバッシャール・アル=アサド大統領付属の軍と自由シリア軍の戦闘が続く中、シリア‐トルコ国境を管理下に置くシリアのPKK(クルディスタン労働者党;非合法) 関連組織、民主統一党(PYD)が、北イラク・クルド自治政府のマスード・バルザーニー大統領の元で活動しているエル=パルティ(El-Parti)の兵士74名を拘束し、クルド人の間で緊張が高まっている。また、PKK所属の武装グループが北イラクへ引き上げを続ける中、北イラクでPKKから離脱した 214名の元メンバーが、イラクのジャラール・タラバーニー大統領が率いるクルディスタン愛国同盟へ移ったと報じられた。

クルドプレス通信社の報道によると、北イラク・クルド自治政府のマスード・バルザーニー大統領の元で活動しているエル=パルティの兵士7名が拘束され、PKKとの結びつきで知られるPYDとエル=パルティの間で、緊張が高まっている。

アレッポ市内の一部街区、トルコの国境の町デリキ、内陸のコバーニーやアフリーンといったクルド人居住地域において、PYDとエル=パルティの間で生じていた緊張状態は、ついに軍事行動に転じた。PYD所属の部隊が、デリキにて74名のエル=パルティ党員を拘束し連れ去った。クルドプレスでこの事件を解説したシリアのクルド人記者フシン・オメル氏は、PYDとエル=パルティ間の緊張状態について、「バルザーニー大統領は、PYDの執行部に対し、拘束された党員を一刻も早く解放するようメッセージを送った。しかしPYDはこの要求に応じなかった。PYDがエル=パルティの党員をどこで拘束しているのかは明らかになっていないが、デリキにとどまっている者はごく少数であることが分かっている」と述べた。

シリア・クルディスタン民主党(KDP)政治局のイスマイル・ムハッメド氏は、エル=パルティを標的にしたPYDのこの行動について、クルド人の連帯を大きく揺るがすものであるとして、次のように語った。

「我々はクルド人の権利のために革命を始めたばかりなのに、ここで仲間割れしては、得をするのはアサド政権だけだ。もし党員が間違いを犯したならば、公の法廷で、政治的方法によって解決されねばならない。我々は、PYDのこの行動を挑発的で危険と見なしている。我々シリアのクルド人は、これまでのいかなるときよりも今、団結と連帯を必要としている。」

北イラクのKDP所属国会議員のサイード・オメル氏は、アウェスタクルドというニュースサイトにて「PYDが我らの同胞を解放しないときは、我々もこのPYDの許されぬ行為に対し、厳しい態度を取る」と述べた。

■「YPGの他に武装組織はいらない」

PYDの幹部イサ・ヘソ氏は、北イラクのルダウ紙の取材に対し、PYDが74名を拘束したことを認め、「74人に罪が無ければ解放する。ロジャヴァ(シリ アのクルド人居住地域)に、YPG(PYDの人民防衛部隊)以外の武装組織が存在してはならない。しかしウェラト・ムラト氏やマスード氏らが武装グループ を作ったので拘束した。彼らは罪を犯したので罰されるだろう」と述べた。

エル=パルティ政治局のミヘメド・イスマイル氏は、YPGに拘束された74名のうち、47名がコバーニーで、24名がアフリーンで、3名がギルケ・レグで誘拐されたと述べた。

■バルザーニーからPYDへ:「アルビル合意に従いなさい」

緊張が高まる中、北イラク・クルド自治政府のマスード・バルザーニー大統領は口を開き、シリアにおけるクルド系組織の間で取り決められた「アルビル合意」 に従うよう、PYDに呼びかけた。バルザーニー大統領の名のもとクルド自治政府によって発表された書面による声明では、PYDがアルビル合意に従わない場合、(PYDが支配する)地域に対し禁輸措置を取ることが仄めかされ、「これまでバルザーニー大統領は、クルド系のあらゆる派閥を兄弟と見なしてきた。 しかし残念ながら一部の派閥がアルビル合意から逸脱し、市民を拘束、殺害、誘拐している。彼らは他の政治家の忠告に耳を貸そうとしない」と綴られていた。 また同声明では、自由選挙を経ずにはいかなる組織も他の組織を抑圧することはできないとし、決定権を持つ唯一の機関はクルド高等評議会であると主張された。さらに「我々は何者かが他者に対し独裁を敷くのを認めることはできない。もしアルビル同意の条件が満たされない場合は、新たな決定を下す」といった記述も見られた。

■PKKメンバーはタラバーニーの陣営へ

他方で、PKKの武装グループが北イラクへ撤退を続ける中、北イラクでPKKと分離した214名がイラクのジャラール・タラバーニー大統領率いるクルディスタン愛国同盟(KYB)に加わったと報じられた。

トルコから撤退したPKKの武装メンバーらは、北イラクの集合ポイントへ集団で移動を続けているが、その一部がタラバーニー氏が代表を務めるKYBへ移っ たことが報じられ、クルド人の間に驚きを呼んだ。北イラクで運営されているインターネットサイト、ロジェヴァクルドは、PKKメンバーの一部がKYB陣営に加わり、今後自由意志によって活動する見込みであると伝えた。このニュースでは、クルド人に対しKYB政治局が「団結しよう」と呼びかけ、これに応じ PKKメンバー214人がKYBに移ったことが明らかにされ、「KYBが2013年5月17日に出した声明によると、214人のPKKメンバーが活動を KYB陣営に移すことを決定し、KYBに加わった。今後彼らはここで活動する」と報じられた。

また政治局責任者メレ・バフティヤル氏が、KYBに加わるようPKK党員らに正式な招待を送ったと報じ、バフティヤル氏が次のように語ったことが明らかになっている。

「我々はあなた方の活動を評価し、敬意を抱いている。あなた方はこれまでPKKとして活動してきた。我々は喜んであなた方を受け入れる。KYBはあなた方の大きな家となり、各方面につき奮闘しつづける。あなた方はここKYBで、自分の考えを自由に発言できる。」

アブドゥッラー・オジャランの逮捕後、PKKを離脱した2,000~3,000名にのぼるとも言われる元PKKメンバーらは、現在、北イラクでさまざまな職に就いている。北イラク・クルド自治政府から受け入れを認められた、もしくは市民権を与えられた元PKKメンバーらは、トルコへ戻るため、合法的措置が 取られることを望んでいる。KYBに加わった214名がいつPKKを離脱したか明らかになっていないが、元PKKメンバーが含まれている可能性があることが明らかになっている。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:30039 )