İhsan Dağıコラム:エルドアンを愛しているなら、彼に本当のことを言おう
2013年06月04日付 Zaman 紙

もちろん、問題はゲズィ公園問題ではない。公園問題がきっかけにはなったが、根本には、次第に権威主義化し、社会変革プロジェクトにより人間を自分と同じにしようとする権力者に対する反感がある。反感を拡大させたのは、民主化を進めるかわりに、与党が「人格形成」をしようとしたことだ。

本来トルコは、ここのところ重要な「正常化」プロセスを経ようとしていた。10年前の不毛な対立は概ねおわり、世俗主義派 VS.敬虔派、のような答えのない論争さえ、過去のものになった。スカーフ問題は現実的な問題としては解決済みとなり、社会的な緊張や対立のシンボルではなくなった。結果として、我々は、敬虔な暮らしと世俗的な暮らしが、一つの場所で、対立することなく共存できる時代にたどり着いた。スカーフも、宗教へ敬虔さも、さらにはアレヴィー主義も世俗主義も正常化し、反対の立場の人によって自然なものとみられるようになりはじめた。さらには「クルド問題」から「クルドの平和」にむけ我々は歩みはじめていた。

まさにこのようなときに、新憲法のかわりに、権威主義的なトーンをおびた大統領制を提案し、多元主義のかわりに多数派のアイデンティティと生活スタイル、道徳的考え方を国家の力で少数派に強制しようとする、新しい「社会変革」が我々の目の前に現れた。

だからこそ、ゲズィ公園への反対をマージナルなグループによるイデオロギー的な教条主義、外国の陰謀だと決めつけることは、まったく不十分だ。

首相は、反対の意見をのべ、政府にプロテストするものは誰でもが「マージナル」だと決めつけるが、本来は、自分がどれほど「多数派」を代表しているかを自問しなくてはいけない。その発言や政治手法で、エルドアンは、もはや「多数派」ではなくなりはじめている。野党に対し、「彼らが10万人集めるというなら、自分は100万人集める」といったり、「我々は50%の人々になんとか家で我慢してもらっている」といった言葉は、中央にある党のリーダーのいうような言葉ではない。

公正発展党もそのリーダーも、2002年、特に2007年の選挙後に築き上げた「中央」というアイデンティティをもはや守っていはいない。メンデレス、オザル、エルドアンをひとつにくくり、「民主化の星」と宣言した姿を、今日現在、残念ながらみることはできない。

メンデレスやオザルにも「社会変革」プロジェクトは存在した。しかし、彼らが挑んだのは、経済発展や民主主義だった。彼らの頭のなかには、国家の手で「理想社会」を作ろうといった考えはなかった。公正発展党はこの面で、メンデレスやオザルの路線から急速にはなれ、国の予算と権力で、政治的にそこに寄りかかることのできる「理想社会」を作ると努力する、イデオロギー的な党のアイデンティティに覆われた。しかし、公正発展党支持基盤の少なくとも3分の1は、中道右派的な「社会サービス」と「自由」の路線から、「アイデンティティと社会改造」路線へと突き進む公正発展党を支持し続けることは難しくだろう。

難しいのは当然だ、なぜなら、今日のエルドアンは、メンデレスにもオザルにも似ていないからだ。

社会は政党と同じではない。党内の雰囲気を、あなたは社会全体にひろげようとし、党員たちがあなたに示す忠誠を社会全体から期待しはじめたなら、あなたは、間違いをおかすことになる。それは、ありえない。社会は、そのように、上から下へ「改造」されうるようなものではない。これまでもそうだった。そもそも公正発展党の存在理由は、社会を、規律、(アタチュルク主義という)一つの支配的な考え方、(軍などの)いくつかの組織による「後見」のもとに置こうとしたやり方に対する反感だった。今、社会全体、メディア、産業界を自分の党の規律のもとに置こうとすることは、正しいことだろうか?正しいかどうかを脇におくとして、いったいそれは可能だろうか?

そんなことは、閉鎖的な社会においてだけ起こりうることだ。しかし、アンカラで政府と何らかの形で仕事をしている人のほぼ100%が、表向きの意見と、個人的な意見をもっている。個人的におしゃべりをしているときには、(首相の)権威主義的傾向、ワンマンな政治、外交政策の手腕に苦情をいう人々も、テレビの前にでたり、新聞に書いたり、会議でしゃべるときには公式見解を語っている。人間を、二つの顔をもつように仕向けている雰囲気、覇権主義的な政権がそこにある。自分の考えを、思った通りに表現できない人たちからなる取り巻きは、誰にとっても有益でない。とくに、政権にとって。

もしも、エルドアンを愛しているなら、彼に本当のことをいうべきだ。


(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:30211 )