Murat Yetkinコラム:エルドアンの「タクスィム問題」
2013年06月08日付 Radikal 紙

問題の本質は、エルドアン首相のかかえるタクスィム問題である。これは、民主的な要求への、民主的な忍耐力の問題とも呼ぶことができる。

タイイプ・エルドアン首相の北アフリカ歴訪の間に、アブドゥッラー・ギュル大統領とビュレント・アルンチ副首相が行っていた緊張緩和の努力は、金曜(7日)早朝のエルドアン首相の帰国とともに、別の色合いを帯びた。実際、エルドアン首相はチュニジアを離れる前に、確かに「過度な催涙ガスの使用」に関して、「遺憾」の意を示したが、タクスィム広場へのトプチュ兵舎再建計画は撤回しないと表明していた。

前日にヒュセイン・チェリキ(AKP副党首)が「組織だって(首相を)出迎えることはない」と述べたのとは反対に、公正発展党(AKP)の市長のいる自治体は木曜日の夜半に残業して1万人以上の支持者をアタテュルク空港に集めることに成功した。エルドアン首相は、抗議行動の目的は数本の木を守ることではなく、選挙以外の方法で自身の力を削ぐことであるとし、これがソーシャルメディア、つまりツイッターやフェイスブックの上で行われていると述べた。

同日金曜日の午後、エゲメン・バウシュEU大臣の主催による「グローバルな問題に対するトルコとEUのための共通の未来」と題した会議で演説を行い、人々の目はそこに向けられた。

この会議で、珍しいことが起こった。エルドアン首相は、国会の予算審議でも野党党首らのスピーチを聞くことなく席を離れるので批判されているが、この時、シュテファン・フューレEU拡大担当委員の演説の間中自席に留まり、通訳機器を付けずにフューレ委員のスピーチを見ていた。このボディランゲージは、おそらくエルドアン首相は妥協に歩みよるだろうという印象を生んだ。実際、エルドアン首相は、「50%の(国民のための)首相ではなく、100%の首相だ」と述べ、ショッピングモール構想を棚上げするとした。しかし、中庭にゲズィ公園より多くの木を植えることを約束したもの、トプチュ兵舎への決意は繰り返した。

演説でフューレ委員は、「民主主義において警察が平和的なデモに過度の暴力を行使することは認められない」と述べ、エルドアン首相と行った会談の直後、ツイッターアカウントに、政府が対話に応じなかったため機会を逃したことに「失望」を感じたと表明した。同時刻に在アンカラ・アメリカ大使館もツイートを投稿した。エルドアン首相の演説における、2011年にアメリカで始まった「ウォール街占拠」運動で「17人が死亡した」という発言は「間違い」であると述べた。警察の介入による死者はなかった。この公式の反論は、これらの情報がどこから、どのアドバイザーによってエルドアン首相に与えられたかという疑問を生んだ。

しかしより重要なのは、タクスィム占拠運動が自身に対するソーシャルメディアによる陰謀であると信じているとエルドアン首相が述べたことに対し、アメリカから寄せられたメッセージもEUから寄せられたメッセージも、ソーシャルメディアによって伝えられたことだ。メッセージの経路もそれ自体と同様に重要なものとなった。

こう考えると、エルドアン首相が、国際メディアはタクスィム運動参加者らの要求を含んだ発信を発行しないようにと呼びかけたことに対する反応も、興味深い問題だ…。

タクスィム抵抗運動参加者らに関していうと・・・。
エルドアン首相の帰国以来、特に出迎えのエルドアン支持者らが「タクスィムにいくぞ、デモ隊に思い知らせてやる」といったスローガンを叫んで以降、より注意深く行動している。それと同時に、3つの面での行き詰りに直面している。彼らは一方で後退を望まず、一方であらゆる政党や組織と共同で行動することを避けている。しかし他方で、彼らの間に入りこんでいる異なる目的を持った(過激な)グループが周囲を破壊し、公共物を破壊すること、つまりこうした野蛮な行為の責任を、エルドアン首相により、自分たちに押し付けられるないようにとも思っている。

(警察による過度の暴力と催涙ガスの使用に反対する人々である以上、これらの破壊行為にも反対していなければならない。タクスィムとその周辺に恥ずべき記念碑のように残されている破壊された市営バスが、まだ何故そこに放置されたままになっているのかも、同様に返答が待たれるもう1つの問いだ。)

しかし問題の本質は、エルドアン首相のかかえるタクスィム問題である。これは、民主的な要求への、民主的な忍耐力の問題とも呼ぶことができる。

半数の票を獲得して与党となり、国の最も致命的な問題解決のための対話を始め、経済を好転させた、野党の影響力を削いでメディアを制圧せんとするリーダーが、なぜこれほど簡単に解決できる問題のために、これほど頭を悩ませるのか?

こう問う人々の中に、公正発展党(AKP)の議員や、AKPに投票した人々も多く含まれていることは、様々な発言からわかる。私たちはまさにこの問題に直面しているのだ。


(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:30313 )