Ismet Berkan コラム:岐路に立つトルコと、首相の選択―多元主義か多数派主義か
2013年06月08日付 Hurriyet 紙

火曜日のこのコラムで私は、「首相はデモ参加者のことをわかっている。彼はわかってやっている」と書いた。これには多くの怒りの声が寄せられた。

私にはそれはナイーブすぎると思えるのだが、多くの人は、デモ参加者の真意や願望がエルドアンに伝われば、エルドアンは事態の改善をはかり緊張を緩和し、さらには民主的な要望を受け入れ、トルコを天国に変えてくれると思っている。

首相は何日かトルコを離れ、同行記者団がいたにもかかわらずトルコ帰国が近づくまでこの件について話さなかった。しかし、木曜になってよくやく口を開いた。首相はまったく変わっていなかった。タクスィムに、かつてのトプチュ兵舎の偽物をつくる気らしい。デモをしている人を、「外国の勢力」だの「労働組合」だの、さらには「金融ロビー」から「ヴァンダル人」にいたるまで、様々に名づけた。

首相は腹をくくっているように思う。そもそも、早朝の4時に、党本部が「来ることはない、歓迎しないように」と言っていたにもかかわらず、演説用のバスを用意させて空港で演説し、「道をあけろ、さあいくぞ、タクスィムをふみつぶせ!」というシュプレヒコールを静止もせず、ある銀行の頭取にいたる多くの人を標的にしたことは、その選択がなんであるかを示している。

さて、その選択とは?

ザマン紙のコラムニスト・イフサン・ダウは私より前に行動にでて、次のように書いた。「エルドアンの前には二つの道がある、権力は絶対的なものではなく限りがあることを認めるか、多数派であることを頼りに少数派を抹殺するか。」
首相は、明確にイフサン・ダウのいう二つ目の道を選択した。つまり「50%の票は、ほかを全部集めたものよりも多い」とし、再びおなじだけの票をとるために、AKPの党機能を動員しはじめた。
首相の選択が正しいか間違っているか、これを評定することは私の仕事ではない。しかし、この選択がどういう結果をもたらすか、そのいくつかを推定することは私の仕事だ。

第一に、首相自身も「伝統的な」国家機構も、タクスィム広場やゲズィ公園の今の状態に、これ以上の寛容を示すことはないだろう。このため、広場や公園のデモが、殴る蹴るの騒ぎで撤収されるか、交渉により空けられるかは重要になる。これは、短期的に、大きな緊張を生み出すだろう。もし、警察力で一掃しようとするなら、衝突や、それに起因する二極化は増す。ビュレント・アルンチ副首相が主催し、月曜の夕刻に7時間にわたって行われた会議では、おそらくその可能性も話されたに違いない。

ゲズィ公園のデモ隊が一掃されたあとにはじまるであろう緊張は、そう簡単に収まるとは思わない。
それゆえ、AKPの選挙キャンペーンの重要な路線は、「町に暴力を生みそれを実現したものは、無政府主義者だ、クーデター主義者だ、非民主主義者だ」というものになるだろう。時間とともに、AKPはこの事件の発端を忘れさせるような「合法性」を手に入れようとするだろう。

しかし、AKPは通りでのデモに対しこの路線をとろうとするが、ここ何日間かディフェンスィブな対応をとってきたことから、そこからすぐに脱却することは難しい。それゆえ、政府が事件を統御する能力は、望むと望まないとにかかわらず十分とはならない。

もちろん政府がやっていかなくてはならないもっとも重要な問題は(クルド問題の)解決プロセスであり、このプロセスがAKPに多くの票をもたらしていることも、忘れてはならない。

通りで緊張があるときに、議会で民主化のための法、さらには憲法改正が成立するか、あるいはAKPがこの公約を解散総選挙後に延期するかは、これからわかることだ。

■AKPの支持者は、緊張を好むだろうか?

AKPは、過去の中道右派の党同様、もともとは、ひとつの傘に過ぎない。なかには、敬虔なムスリムという立場の人もいる、CHP批判で入っている人もいる、開発派も、その他もいる。

問いは、これだ:これまで通りでデモをしたこともないような大衆は、通りで衝突があるときにAKPを支持し続けるだろうか、あるいは、衝突に嫌気がさし、物陰にかくれるか。

1973年と1977年の選挙で公正党の身に降りかかった(つまり、党支持者が投票にいかない)という事態が、AKPの身にもおこるだろうか?一緒にみていこう。

■多元主義か、多数派主義か?

首相の、事件への理解と下した決定は、ほかの問題にも波及する。実際、首相は、「少数派の意見ではなく、多数派の意見がとおる」といって、自分の立場を明確にしている。
今起きていることは、「この社会は、多元主義的なものとなるのは、多数派主義的なものとなるのか」への回答への模索だ。

この点で、私たちは、非常に危機的な岐路にたっている。


(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:30314 )