Taha Akyol コラム:陰謀、陰謀というけれど・・・
2013年06月10日付 Hurriyet 紙

「『民間クーデター』は妨げられた!その『民間クーデター』とは何だろうか?金融ロビーとその国外の支援者らは、街なかを戦場に変え、政権を転覆させようと目論んだ。しかしその陰謀は阻止された。」

この言説を支持する者たちは、タイミングに着目している。:彼ら(金融ロビー等)は金利が5%に下がったその時、スタートボタンを押した。管理下に置いている通信回線を用いて合図を出すと、事件が一斉に起き、金利が上昇した。
更に、昨日イェニ・シャファク紙は一面で「黒幕はソロスと金融ロビーだ!」と報じた。
なんて興味深いのだろう。ケマリストらは長年の間、「ソロスの子どもたち」がいかにエルドアン首相と公正発展党(AKP)を支援しているか主張してきた。今回はその彼らが陰謀を働いたということになってしまう!

■誰がボタンを押した?

ゲズィ公園運動によって金利と外国為替が上昇し、彼ら(国内外の「金融ロビー」)が利益を得たというのは正しい。「最も利益を得た者が黒幕だ」という陰謀説の論理で考えると、金融ロビーが「スタートボタンを押した」可能性はある…。
しかし起きたことそのものに目を向ければ、「スタートボタンを押した」のが誰であるか、もっとはっきり見えてくる。
5月30日木曜日の朝まで、ゲズィ公園のデモは、トルコで時折起きてきた一般的な環境保護運動と何ら変わりはなかった…。
日中と比べ人数が減り、多くの参加者が眠っていた早朝5時に、警官は突如催涙ガスによる攻撃を行ない、デモ参加者を引きずり出して集め、テントに火をつけた…。
その後アルンチ副首相とイスタンブルのムトゥル県知事が謝罪した、この常軌を逸した取締と暴力は、多くの市民の反発を引き起こし、街なかや広場を人で溢れさせはじめた。
「スタートボタンを押した」のは政府の命令を受けた警官による暴力であった。金融ロビーでも外国勢力でもなく…。金利と外国為替の上昇や、金融ロビーが利益を得たことは、「結果」である。原因と結果を混同してはいけない。

■陰謀の文化

ケマリストや軍部は「スカーフ」についてどう思っただろうか。スカーフがこれほど広まったことを考えると、そこには社会的そして社会心理学的な理由があるはずではないか?「違う、陰謀だ」と彼らは考えた。「外部に根源のある反動」と見なし、「アメリカの穏健イスラムプロジェクト」だと主張した。2月28日過程の無慈悲さが社会的反動を高め、AKPが成長した…。これは完全に社会的な現象である。
しかし今、公正発展党政権も社会的出来事に対し、同じ「陰謀説論者」的精神で「金融ロビー、ソロス、テロリスト、アナーキスト」のせいだと見なしている…。
しかし株式取引を見てみればよい、「政府が厳格な態度をとり、対立は激しくなるだろう!」という懸念が生まれたことにより株式市場が下落し、金利と外国為替が上昇し、その「結果」として金融ロビーが利益を得たのである。
首相が穏健な発言をすると、株式市場は持ち直した。

■緊張を高めるだけだ

首相はアダナとアンカラで行なったスピーチでも、「金融ロビー、テロリスト、アナーキスト」による陰謀説を強調した。たしかに「テロリスト、アナーキスト、バンダル族的(野蛮な)、マージナルな」集団は存在する。彼らが恐ろしい破壊活動を行なったことも明らかである…。
しかし暴力から距離を置き、ただ政治的な抗議のみを行なった市民も多くいる。
この社会的な出来事に対し、首相とその友人たちは、次のような決定的に重要な問題に焦点を当てるべきである。:マージナルな集団は常に反政府的活動をしてきたし、その活動もマージナルなままであった…。しかし今回、多くの市民をデモに加わらせた感情は何なのか?彼らの中で、どのような疎外感や被抑圧感が今回の抗議運動と共鳴したのか?!
この多くの市民を理解しその不安を払拭することによって、マージナルで攻撃的な集団を孤立させることもできる。
大衆の心情を理解し落ちつかせるような穏和なアプローチや歩み寄りの政策が必要であるのに、「力の誇示」のために会合を開いたり、反発を煽ることに、国内の緊張を高める以外に何の効果があるだろうか?!緊張が高まることで、トルコはどうなるのか?!首相はこのことをよく考えねばならない。


(本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:30364 )