Cengiz Candar コラム:民主主義の広場と、エルドアンの街頭戦
2013年06月13日付 Radikal 紙

タイイプ・エルドアンのここ数日のパフォーマンスは、国外で彼を支持していた人を失う原因となっている。

昨日エルドアンの演説を聴いているとき、計算してみた。この10日間で15、16回(17回かもしれない)彼のスピーチを聴いたことになる。10日前、つまり5 月31日から6月1日にかけての動き以降のことだ。最初の演説は6月1日の午後、イスタンブルのトルコ輸出委員会(TİM)で行われた。ゲズィ公園での警察の弾圧を支持し、「過度な暴力が行使された」との疑いについては調査すると述べ、警察がゲズィ公園で任務にあたるのは当然であると述べた。

この演説から約1時間半後、警察は、突然タクスィムとその周辺から姿を消した。事態はまったく違う段階に入った。(警察への)退去命令をタイイプ・エルドアンが指示した可能性があるとは誰も考えなかった。私が知っている限りでは、この命令は彼が出したものではない。

警察がタクスィムから撤退した後、首相はさらに数回演説を行った。最悪の結果をうみ、「火に油を注いだ」のは、日曜日の夕方に放映されたテレビでのインタビューだった。その翌日、北アフリカ歴訪へ出発する際には、「50%の(自分を支持する)国民を何とか家の中に押しとどめた」と言い、一国の首相が決して口にしてはいけない「脅し」を残してトルコから旅立った。

先週月曜日から金曜日の早朝にエルドアン首相がトルコへ戻るまでの間、この国は少し落ち着きを取り戻した。アブドゥッラー・ギュル大統領と首相代行のビュレント・アルンチ副首相が「危機」に関し前面に出てくると、この間、首相からの発言もなかったことで、「解決への希望」が湧きあがったようだった。

しかしレジェプ・タイイプ・エルドアンは、チュニジアからイスタンブルへ戻る1~2時間前に口を開いた。それから市場は混乱し、ドルとユーロが高騰した。そして彼が、指導者が、トルコに戻ってきた。

イスタンブル・アタテュルク空港では、公正発展党(AKP)派のイスタンブル地方組織が管理する交通機関の助けを借り、真夜中に列をなし、「道を開けろ、さあ行こう、 タクスィムを押し潰そう」「偉大なるアッラーの名において、さあ始めよう」などと叫び大喝采で首相を出迎えた「何とか家に押しとどめた50%」の代表者が 彼の前で湧きあがった。その数時間後、明朝、家の前で話している市民に対しても催涙ガスを吹きかけた。金曜日の午後、EU代表者の前で彼らを驚愕させる3 度目の演説を、24時間以内で4度目となる演説として行った。

最も注目すべきパフォーマンスは日曜日にメルスィンとアダナで行われた演説であり、もっと重要なのはアンカラのエセンボア空港と[そこから]25~30kmの所にある、市の入口のアクキョプルの間で行った[4回の]演説だ。興奮した市民の前で、メルスィンとアダナで1回ずつ、アンカラでは4回の演説を一挙に行った。この演説の全てが主要なテレビ局で生放送として放映された。私たちは1日でタイイプ・エルドアンの演説を6回聞いたことになる。さらに昨日党会議でも演説した。

演説の内容は同じで、怒りの度合いは場所によって変えられている。分別のある人が首相の演説を聴いて感じる内容に関する最も正しい評価は、前日[インターネット新聞]T24に語った敬虔なイスラム教徒である女性作家、ヒダーイェト・シェフカトリ・トゥクサルの言葉だ。彼女は、「エルドアンが1日3度も行った演説をきいて、何を感じていますか?」という問いを受け、次のように答えている。

「(クルド問題解決のための)和平プロセスの前、愛国主義的な訳のわからない言葉が高じると、首相[の話]に耳を傾けることが全くできなかった。和平プロセスがはじまると、希望を持ち、(首相の話を)聴くことができるようになった。今、首相の誰かれ構わず、いつでもすぐに言葉を返す様は、多いに矛盾している。常に怒鳴り散らしている人へと変貌してしまった…。」

タイイプ・エルドアンの最近のパフォーマンスは、国外で彼を支持していた人をも失う原因となっている。T24は、アヴィ・シャイムとイラン・パッペという、イスラエルが最も嫌い、タイイプ・エルドアンを常に支持していた2人の非常に重要な歴史家に対し、首相の「このプロセスにおける態度、そして事の推移がパレスチナをはじめとしたアラブ世界に及ぼす影響」を問うている。

シャイムは、「タイイプ・エルドアンは2008年~2009年のガザ戦争の後、イスラエルに対し見せたはっきりとした態度ゆえに、パレスチナだけでなく、全アラブ世界においてパレスチナ人の自由、民主主義、正義への要求に言及し大きな知名度を獲得した。それが今日、自国で平和裡に振る舞うデモ参加者らを非情にも弾圧したことは、エルドアンの信頼性という点で大きな疑惑の念を引き起こし、ダブルスタンダードだとする責めに正当性を与えている。この態度は、エルドアンの名をアラブ世界だけでなく、全世界で汚すことになるだろう…。今やエルドアンは、古い権威主義的アラブの独裁者たちとなんら違いがない。したがって、中東地域・全世界で彼に対する失望を生み出すことは避けられないだろう」といっている。

イラン・パッペはというと、タイイプ・エルドアンのパレスチナ人に対する支持を「もちろん賞賛すべき」とした後、「しかしこれはエルドアンと政府がトルコで人権侵害にあたる行動に出た場合は強く非難する必要がある、という事実を消しはしない。パレスチナでの冷酷な行為に終止符を打つため全世界の支持を集めようとした我々は、世界のいかなる場所でも暴力行為を正当化することはできない。あなた方がトルコにおける状態をどうやって変えることができるかについては何も言えないが、人生そして全ての時間とエネルギーを、100年以上パレスチナ人が直面してきた弾圧が終息を迎えるのに費やしてきた1人として、これと似た残虐行為を受けている人がだれであろうと、彼らの味方であると言いたい」と語った。

[首相に]彼らに目を向け、彼らが言ったことに耳を傾けよ、と言いたい。ゲズィ公園のデモ活動を、「エルゲネコン、共和民主党(CHP)、外部勢力、金利ロビー」といったナンセンスな敵を作り出って説明し、今回の出来事を「国際的陰謀」へ結び付け、これに対抗するという理由で、国家権力を行使するだけでなく「家に押しとどめておくのに苦労した50%の人々」を街頭に注ぎ込み、トルコ国内で首相を批判し、「正しい道」へ呼び戻す人たちをかき消すことができるかもしれない。しかし世界でのカリスマ性も傷つけることになるだろう。

最近、読んだ重要なコメントのうちの1つは、ニリュフェル・ギョレ教授のものだ。彼女は、「広場」と「街頭」を区別する。ギョレ教授によれば、首相は北アフリカ歴訪から帰国した後、「広場の民主主義」ではなく、「街頭運動支持」の態度をとっているという。

同教授は、ゲズィ公園を「広場型運動」と特徴づけ、これがなぜ「民主主義的」であるのかを説明している。その後、「個人の自由を制限する公的秩序、過度な暴力を行使するのが治安である、との考え方は民主主義には相応しくない。『ゲズィ広場運動』は公共空間での息苦しさを解消し、民主主義を発展させた」と述べている。さらに「街頭運動は、ひとつのグループの群集や多数派により構成されている。「広場型運動」をつくりだしているのは、活発な少数派だ」と補足した。

タイイプ・エルドアンは「街頭」を動かすことを政治的に選択した。今週末に行われるアンカラとイスタンブルでの集会は、この政治の頂点となるだろう。

ところで首相は今日、一部の「代表団」と面会する。しかし、代表団が正しい手続きを踏まずに選ばれた人々であることを我々が知っている、ゲズィ公園問題についての面談だ。この面談の1日前、警察はタクスィム広場に介入した。
[訳者注:6月12日に行われた第一回目の会談。その後、13日深夜に首相は芸術家・タクスィム連帯プラットフォーム代表者らと会見した。]

首相と今日の「ゲズィ公園の代表」との面談が肯定的な結果を生むかについて、今まで彼がとった策をみるにつけ、残念ながら、望みを抱けない。私の勘違いであるば良いと思う。タイイプ・エルドアンは今日ゲズィ公園の代表者らと言われている(その中にはゲズィ公園へ一度も足を踏み入れたことのない者もいる)団体のメンバーと会い、つまり「これ以上どうしろと言うのか。もう私に非はない」と言うことができる状況になった後、タクスィムに入ったのと同じように、ゲズィ公園にも同じ様に入る可能性は否めない、と感じている。

我々はというと、自由と民主主義を訴え続ける。以前は、私たちは、タイイプ・エルドアンをまさにこのために支持していたのだ…。

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( 翻訳者:釘田遼香 )
( 記事ID:30398 )