Fikret Bilaコラム:エジプトをめぐる欧米諸国の矛盾
2013年07月06日付 Milliyet 紙

一部の例外を除き、欧米諸国はエジプトのクーデターをクーデターと呼べなかった。アメリカのバラク・オバマ大統領は「クーデター」という言葉を使わず、早期の民政移管を呼びかけるに留まった。
ドイツ以外のEU加盟国もエジプトでの出来事を「クーデター」と呼べなかった。
この態度の理由は、メディアでは次のように説明された。
もしバラク・オバマがこれを「クーデター」と呼べば、アメリカは毎年行っているエジプトに対する13億ドルの軍事支援ができなくなる。アメリカの法ではクーデターが起こった国に軍事支援をすることはできない。
EUも「クーデター」とは言えない。そう言えば、エジプトに制裁を加えなければならないからだ。

■メディアも同様

欧米諸国の首脳ら同様、欧米メディアも「クーデター」とは書けなかった。
ドイツのビルト紙以外に、エジプトで軍がクーデターを起こしたと書けたものは無かった。
ニューヨークタイムズ紙(米)は、エジプト軍がムルスィー氏を退陣させた、と報じた。
ガーディアン紙(英)は、「エジプトで2度目の革命」と見出しを打ち、これを支持する方向の報道をした。
ワシントン・ポスト紙(米)は、エジプト軍がムルスィーを解任と報じた。
ル・モンド氏(仏)は革命の第2幕と題した。

■欧米諸国の支持

欧米諸国の首脳やメディアが「クーデター」という言葉の使用を避けたということは、彼らがエジプトのクーデターを支持しているということを意味する。
アメリカやEUのような民主主義の先進国を自負する国々のこの「沈黙」の態度は、軍事支援の中止、もしくはエジプトへ制裁を行う事態に陥るから、ということだけでは説明できない。欧米諸国がクーデターに反対の態度をとるならば、アメリカは軍事支援を中止し、EUはエジプトに対する制裁の決定を下していただろう。これをしなかったということは、彼らはムルスィー氏がエジプト大統領府から、そして、ムスリム同胞団がクーデターによって政権から遠ざかることに満足しているということだ。

価値観の共同体と呼ばれるEUとアメリカが、民主主義のために声を上げないこの状態は、欧米諸国に重大な矛盾を生み出している。
この状況から分かるように、アメリカとEUが民主主義よりも重視している「価値観」が問題になる。ムルスィー氏をエジプト市民の民主的な手続きによって変えさせる、もしくは選挙を行わせるのではなく、軍が政府へ介入することを選んだ欧米諸国世界にとって、大事なのは自分たちの利益であることは明らかだ。
そうでないなら、ムルスィー氏の軍による退陣ではなく、社会的・政治的な反対勢力による民主的な政策転換、あるいは選挙の実施を支持したはずである。

■2つの理由

欧米諸国のこの態度には重要な2つの理由が隠されている。
1つ目は、イスラエルの安全だ。アメリカはアラブの春を支持したが、ムスリム同胞団が治めるエジプトを信用できなかった。イスラエルの安全の観点から、ムルスィー氏ではなく、ずっと密接な関係を築いてきたエジプト軍を選んだ、ということもあり得る。アメリカがアラブの春を経て倒された独裁者に代わって現れた、宗教を基盤とする政権をコントロールすることに自信を持てなかった証ととらえるべきだ。
EUにも同様の傾向があると言える。アメリカが主導し、(フランスのように)EU諸国も時折肯定的に支持してきた「穏健派イスラーム」のモデルに対し、彼らが疑いを持ちはじめたことが、エジプトのクーデターに対する態度によって明らかになったといえる。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:南澤沙織 )
( 記事ID:30712 )