Eyup Can コラム:トルコにとっての新しい敵
2013年07月13日付 Radikal 紙

不安や妄想やタブーなどに対抗する政府は去り、代わりに全てを妄想的な色眼鏡で見る、タブーで覆われた政治観が現れている。

「トルコは3方面を海で囲まれ、4方面を敵に囲まれた国である。」

私たちはこのように言われて育った。学校で、いかに災難な土地に暮らしているか、周囲がいかに敵だらけかを教えられた。

ロシア人は暖かい海を求めて侵略の準備をしている…。アルメニア人はアナトリア東部の土地を狙っている…。ギリシャの願いはイスタンブルをもう一度コンスタンティノープルにすること。アラブ人は迎合主義者。ヨーロッパといえば、唯一の願いはトルコを分裂させること。

まさに包囲されている!

これだけで済めばまだいい。さらに国内でも私たちを取り囲む敵がいる。つまり「内的脅威」というものだ。

アレヴィー派。「要注意!」なぜ?
「トルコ独自の風習とスンナ派の混合というが、いやいや外部権力から挑発されて国家中枢に入り込もうとしている。」

クルド人は?
「本来はトルコ人。だが反乱に加わり、本心からは信用できない、トルコ人の敵だ。」

アルメニア人、シリア正教徒、ギリシャ正教徒…。
「追放は合法であり正当だ。彼らは裏切り者であり迎合主義者だからだ。」

スンナ派は?
「狂信的でイスラム法至上主義者。勢力を増している内的脅威だ。」

ヌルジュ派、スレイマンジュ派、ナクシバンディー教団、カーディリ教団…。
「極端な宗教主義者。世の中を壊し分断しようとする教団。」

左派といえば…。
「共産主義者の集まり!」

では理想主義者は?
「彼らも極左勢力同様に、もっとも注意すべき内的脅威だ。」

さて、聞いてみてはどうだろう。「じゃあ残るのは誰?」と…。

残念ながら誰も聞かなかった。または聞けなかった。そういう質問が出ないよう、学校では子どもたちに「3方面は海、4方面は敵」という物語を話して聞かせたのだ。

そして社会全体が一つ一つ識別化されていった。

本紙で4日間にわたり、メスト・ハサン・ベンリ氏の非常に重要な連載が掲載されている。今日の最終回をお勧めするが、読み逃した方はインター ネットで全てを読んで欲しい。そこで見て欲しいのは、9月12日クーデターの3ヶ月前に「極秘」情報として全司令部に配られた「トルコの内部脅威」という 資料だ。ケナン・エヴレン元参謀総長の署名で発信された同レポートでは、アレヴィー派、スンナ派、理想主義者、クルド人、アルメニア人、シリア正教徒、ギリシャ正教徒など関係ない…。神聖なる国家と、それを守る任務に就く者以外、全ては敵なのだ!

トルコは長年、この内外の敵という妄想にとらわれてきた。公正発展党(AKP)政権は何よりもまず、この「全てを敵とみなす」ゆがんだ考え方を変えることに着手 した。エルドアン首相は、軍の後見体制、内外の脅威、アレヴィー派ースンナ派、トルコ人ークルド人を潜在的脅威とみなす解釈、すべての周辺国を敵とする外 交政策など、全てに反発した。困難であろうと、周辺国との問題ゼロを目指した。EU加盟のために重要な改革にも着手した。経済のグローバル化を進めた。共和国の歴史上、もっとも大きな課題であるクルド人問題にも果敢に取り組んだ。しかし、ゲズィ公園でのデモが政治のバランスを壊した。不安や妄想やタブーに対抗する政府は去り、代わりに不安を糧にして全てを妄想の色眼鏡で見るような、タブーに覆われた政治観が現れた。

トルコは内からも外からも再び敵に囲まれてしまった!



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:湯澤芙美 )
( 記事ID:30797 )