ゲズィ運動で逮捕の「国旗売り」家族、悲痛な抗議
2013年07月16日付 Hurriyet 紙


ゲズィ公園問題関連で、7月6日に身柄を拘束され、出廷させられた裁判所にて逮捕された8人の容疑者の家族が、チャーラヤンのイスタンブル法廷前の広場に集まった。逮捕された旗売りを生業とするアリ・サルチチェキ氏の妻メルハメト・サルチチェキさんは、「いいでしょう、たしかに私の夫は組織を結成したかもしれません。(子どもを含めて)私たち(訳注:家族)7人だけの組織です。うちには子どもが5人います。そう、私たちは組織です。夫は(AKPの集会が行われた)カズルチェシュメでも旗を売りました。どうしてそこでは逮捕しなかったのですか?」

逮捕されたアリ・サルチチェキ氏の家族をはじめとする(逮捕者家族の)グループは、弁護士の仲介のもと裁判所へ嘆願書を提出し、逮捕された8人の釈放を求めた。法廷前の広場で記者会見を開いたアリ・サルチチェキ氏の弁護士トゥライ・オダバシュ氏は、次のように話した。
「アリ・サルチチェキ氏はアタテュルクの印が入ったトルコ国旗を売り、それにより生計を立てている一人の市民です。私たちはこのことを繰り返し検察官や尋問裁判官の前で主張しました。依頼人が旗を手に地面に座り込んで拘束されたとき、そこには新聞記者もいました。尋問裁判官は依頼人を逮捕する際、(訳注:逮捕の必要性の根拠の一つとして)犯罪の証拠がまだ十分に集められていないことに言及しています。証拠とされているトルコ国旗はすでに押収されてしまいました、他にどんな証拠が集められるというのでしょう。尋問裁判官は、逮捕の理由として依頼人が身分を隠匿したことを挙げています。身分に関する情報は把握されていますし、国民番号も明らかになっています。身分隠匿などということがどうしてありえるのか、理解に苦しみます。刑事訴訟法(CMK)は、逮捕を特殊な状況において(行われるものとして)定めています。依頼人に容疑がかけられている罪の性質は、逮捕を必要とするようなものではありません。第2911号法を根拠に拘束された被疑者たちはみな釈放されています。私の依頼人が自由を剥奪されているのは、法的ではなく全くをもって政治的な性質を帯びています。」

オダバシュ弁護士は、サルチチェキ氏の家族が不当な扱いを受けているとし、次のように語った。
「一家の家計は逼迫しています。我々は依頼人が旗を販売したことに関して、彼が旗を仕入れた会社から書類を入手しました。それを裁判所に提出するつもりです。釈放を求める嘆願書を提出しました。結果を待っています。」

■「なんてめちゃくちゃな正義」

アリ・サルチチェキ氏の妻メルハメト・サルチチェキさん(36歳)も、生後6カ月で双子のハサン・サルチチェキ君、ヒュセイン・サルチチェキ君を含む5人の子どもたちと共に法廷の前に現れた。メルハメト・サルチチェキさんは次のように語った。
「私の夫は旗売りです。私たちは30~40年前から旗売りで生計を立ててきました。子どもたちに『勉強して先生になるの?それともお医者さん?』と尋ねれば、『違うよ母さん、僕は旗売りかポスター屋になるんだ』と答えます。私たちはこうやって大人になってきました。私たちはその日暮らしで糧が少なくても楽観的な人間です。あの日は食べるものに困っていました。仕事が無くなると息子もベルト屋で働いていました。ゲズィ公園運動が始まると、父親と息子は旗を買ってそれを売りに出ました。夫はカズルチェシュメでも旗を売りました。どうしてその時連れて行かなかったのですか、逮捕しなかったのですか。そのときは組織を結成しておらず、罪も犯していなくて、だけどタクスィムで売っていたときには罪を犯したというのですか?なんてめちゃくちゃな正義なんでしょう。」

■「組織を作った人間の子どもはTシャツさえも着られないのか?」

「彼の良心は痛まないのでしょうか?」と問いかけ、メルハメト・サルチチェキさんは次のように述べた。
「(訳注:お金を払って仕入れた)あの旗は、タクスィムへの贈り物だったとでもいうのでしょうか。裁判官も検察官もそのことを全く考えてくれないのでしょうか?彼らは何のために勉強してきたのでしょう。筋力も良心もなしにただ学んできたのです。私を不当に扱うことに何の意味もないのに。組織を結成した…。いいでしょう、たしかに私の夫は組織を結成しました。(子どもを含めて)私たち家族7人だけの組織です。うちには子どもが5人います。そう、私たちは組織です。うちの子には着るTシャツがありません。組織を作った人間の子どもはTシャツさえも着られないのでしょうか?小学校を出てから勉強もしていません。組織を作るっていうのはなんて大変なことなんでしょう。刑罰が与えられるとすれば、その罰はアリ・サルチチェキに下るのでしょうか、それとも5人の子どもたちに下るのでしょうか?首相、あなたは『私はスカーフを被った女性たちの味方です、代表です』と0言っています。私はもっとひどい目に遭っています。私たちが何をしたというのでしょう。首相は『子どもは3人(が望ましい)』と言いました。アッラーは子どもを下さいました、さらに双子まで下さいました。私には子どもが5人います。首相、私はあなたの言うことも聞いたのですよ。」

■「三日月刀を振り回した人たちは釈放したのに」

メルハメト・サルチチェキさんは、双子のうちのハサン・サルチチェキ君が病気であり、医者からたくさんの薬をもらったと話し、処方された薬を記者たちに見せた。メルハメトさんは次のように語った。
「一家の生計を立ててくれる人がいません。息子も旗を仕入れましたが、仕事に行けずにいます。怖がっているのです。三日月刀を振り回した人は釈放されたのに(注参照)。彼らに対する正義と私たちに対する正義はまるで別物です。抑圧された人々の味方に立ってはくれないのです。一刻も早く夫たちが釈放されますように。彼らは何の罪も犯していません。5,000万人が、(メディアを通して)刀を持った男たちが罪を犯すのを見ました。刀を振り回す人たちが逮捕されますように、刑務所に閉じ込められますように。もし私の夫が本当に罪を犯したのなら、夫も刑務所へ入れてくれて構いません。法が切った指は痛まないと言います。私も耐えます。しかしこの事件に(逮捕された)8人が巻き込まれる意味が分かりません。」

■「8月5日にスィリヴリへ旗を売りに行く」

アリ・サルチチェキ氏の17歳になる息子セラミ・サルチチェキさんは、「金曜日の朝、父とタクスィムへ旗を売りに行きました。騒動が始まる前に、警察が来ていました。アナウンス無しに、TOMA(暴動鎮圧用車両)がイスティクラル通りの入り口で市民を蹴散らし始めました。警官が介入を始めると、私にも高圧放水の水が当たり、人混みのなかに父を見失ってしまいました。その後私は家へ帰りました」と語った。セラミ・サルチチェキさんは、旗を売って生計を立てていること、押収された旗が戻ってきていないことを話し、エルゲネコン裁判の判決が下る8月5日にスィリヴリで旗を売る予定だと述べた。

■7家族も子どもの釈放を求めた

逮捕されたアフメト・エロル氏の妻ハニフェ・エロルさんは、結婚して1週間で夫が逮捕されたこと、夫とともに織物業に従事していることを明らかにし、夫の釈放を求めた。会見を開いた他の7家族も、子どもたちの釈放を求めた。会見後、このグループは波乱無く解散した。アリ・サルチチェキ氏をはじめとする(被疑者)8人は、7月8日に「第2911号法デモ及び行進法に対する違反」と「警察に対する抵抗」の容疑で逮捕された。

注:7月6日、タクスィムで警官から逃げていた運動家たちが三日月刀を持った男たちに襲われるという事件が発生した。この男たちは拘束されたが、翌日釈放された。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:30824 )