Murat Yetkinコラム:エルゲネコン裁判―エルドアンの「軍への反攻」目的達成
2013年08月06日付 Radikal 紙

2007年4月28日にエルドアン首相が軍に対して示した態度をよって始まった(軍の行動への)反攻は、多くの人々に個人的犠牲を強いつつ、昨日、目的に達した。

イルケル・バシュブーが、エルゲネコンという名のテロ組織をつくり、それを指揮した可能性がないと考えているものの中には、タイイプ・エルドアン首相も含まれる。ハベル・チュルク局が、2013年2月1日に放映したプログラムで、エルドアン首相は、逮捕・告訴劇を「テロ組織」容疑とするものに対し、「歴史はそれを許さない」といっていた。しかし、バシュブーは、エルドアン就任以前の2006年から2010年に陸軍総司令官を、その後は参謀総長をつとめていた。そのバシュブーは、昨日、エルゲネコン裁判で終身刑を言い渡された17人の一人に入っていた。

終身刑が言い渡された人には、バシューブーの副官だったハサン・ウースズ、元軍警察司令官シェネル・エルイグル、元第一軍司令官フルシ・トロン、エルドアンの元軍顧問ヌスレト・タシュデレルのような軍の元高官が含まれる。以前、ススルルク事件や、その他の未解決暗殺事件でも名が取りざたされた退役准将のヴェリ・キュチュク、2007年のフラント・ディンク暗殺事件で暗躍したケマル・ケリンチスィズ弁護士、2006年の行政裁判所メンバー・ムスタファ・ユジェル・オズビルギン殺害の実行犯アルパスラン・アルスランも、終身刑だ。二人の政党党首、すなわち、労働者党のドアン・ペリンチェキ党首、新聞記者出身のイェニ党党首トゥンジャイ・オズカンも、特別権限第13イスタンブル重罪裁判所により、終身刑を言い渡されたもののなかに含まれる。

記者のムスタファ・バルバイに約34年、ルポライターのヤルチュン・キュチュクに約22年、元高等教育機構長官のケマル・ギュルズに約13年が言い渡された。バルバイ同様、拘置所にいる間にCHPの国会議員に選出されたメフメト・ハベラルには12年が言い渡されたが、保釈された。しかし、同じくCHPの国会議員でアンカラ商工会議所元会長のスィナン・アイギュンは、13年の刑を受けた。

この報道について、読者の皆さんは、すでにいろいろ読まれただろうし、今後もさらに、記事をよむことになるだろう。裁判については、執行にいたる結果に関し、今後さらに議論されるだろう。長期にわたる拘留、被告の弁護の権利が制限されたことなどの問題点は、判決が確定したあと、欧州人権裁判所に持ち込まれる可能性もある。この問題には、ギュル大統領やハシム・ルクチ最高裁長官も言及していた。CHPのクルチダルオール党首は、この判決を「合法的でない」と宣言し、MHPのバフチェリ党首は、「法的な殺人」と評した。

その一方で、これによってはっきりしたことがある。エルドアン首相が、2007年4月27日に、ヤシャル・ブッユカヌトゥが参謀総長だった時代に、電子メールで発せられた「(軍の)命令」に対し会合を開き、よく4月28日に世論に発表した「抵抗の決定」は、昨日、完了したのだ。あの日、軍に対し、「自分の仕事だけをせよ」といったエルドアン政府は、その直後に、政権の力を刷新するために解散総選挙を行い、エルゲネコン捜査に着手した。議会で必要な法的整備を行い、法的な基盤は、軍が政治に介入するのを防ぐのに適したものになった。そして、バルヨズ裁判で1段階を突破したこの(軍への)反攻は、その目的を達した。

エルゲネコン裁判が始まって以来、社会に一定の割合で存在した、軍が政治にかかわり、さらには、直接介入することを「ふつう」のことだと考える、(悪しき)習慣はなくなった。この観点からみると、エルゲネコン裁判は、政権は民主的的方法によってのみ変わるのだという理解の定着に貢献するという面をもった。その一方で、裁判が始まったときに社会の多くがもっていた(この裁判は)「合法的だ」という思いは、裁判が進むにつれ、その多くが説得的ではない証人や証拠により、反政府的だったり、違う考えを持っている人々が同じ裁判に加えられたため、揺らぐことになった。
「乾いたものが燃えるときは、湿ったものも燃える」いもいえるようなこの状況は、エルゲネコン裁判が、この面で公正の感情を揺るがすことに道を開き、一部の被告を、不当に、たんに見せしめのためとでもいうかのように重罪に処している、という見方を生んだ。

エルドアンとその政権が、軍の政治介入に対し民主的な反攻を確かなものにするため、一部の個人の犠牲は仕方のない対価だと計算にいれていたともいえるかもしれない。政府が、2010年の国民投票で憲法に追加した1条で、欧州人権委員会に持ち込む前に、憲法裁判所での審査を不可欠としたことは、エルゲネコンやその他の裁判が、憲法裁判所に持ち込まれるのを、少なくとも遅らせる効果をもつ。こうした図式は、少々の法的対価を払っても政治的目的を何が何でも達するというエルドアンの考え方を示すものでもある。

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( 翻訳者:トルコ語メディア翻訳班 )
( 記事ID:31099 )