エジプト:若者の60%がPTSDに
2013年08月26日付 al-Hayat 紙


■エジプト:若者の60%が心的外傷後ストレス障害に苦しむ

【カイロ:アミーナ・ハイリー】

「苦悩を感じているか?」「しっかりしろ!」「おちこんでいる。そしてあなたは皆から離れてひとりになりたいと望んでいるか?」「ひとりになればいい。つまらないことで私たちを悩ませないでくれ」「あなたはこの時代のこの国に生まれなければよかったと思うか?」「生きていることを神様に感謝しないといけない。あんたと同じでみんな、ここでの暴力行為あそこでの平和的デモのなかで生まれて、死ぬ」

エジプト中、どこで聞いても表現は同じである。高級カフェでは若者たちがアラビア語の混じった英語で同じ表現をくり返すのが聞かれる。彼らは2011年1月の春の風に楽観的になっていた。しかし2012年6月、宗教国家の出現に衝撃を受け、2013年夏には突然血にまみれた暴力とテロに驚がくした。この暴力とテロにより「平和的」行進中の殺害や、あるいは激しいデモの中の、厳しい外出禁止令の中での拘束といった脅威が示され、またその実行が誓約されたのだ。

また大衆的カフェにおいても、若者たちの常連がまさに同じ表現を繰り返すのを聞くだろう。彼らは革命に、あるいは民主主義から宗教的ファシズムへの変革、あるいは市民国家を目指した人民によるクーデターに、切望していた命題を見いだせなかった者たちである。状況は悪化の一途をたどり、これらの状況はさらなるフラストレーションを増大させる以外の何ものでもない。そしてこのフラストレーションには常にいがみ合っている各派がもたらした脅迫的な圧力のもとでの個人の安全というおまけがついている。

エジプトの若者たちの精神状態は、フラストレーション、うつ、嫌悪、恐怖、復讐への熱望の間で揺れている。復讐心を除いて、それらすべては空想の産物とみなされ、危機的な現状によるプレッシャーのもと、後回しにしうると考えられている。しかしこれは、ひとつのコインの表と裏とでも言うべきものである。

エジプトの何百万もの家庭では、将来への不安や政治的障害の結果に対する恐怖、国家利益への希望の喪失に加えて、息子や娘たちに新たな不安のリストが加わっている。それは、彼らを悩ます複雑な感情であったり、彼らのいや増すフラストレーションであったり、外出の際の彼らの安全への不安であったりという事だ。夏休みも終わりに近づき、男女学生たちに外出禁止令の時間以外でも家にいるよう説得することはほぼ不可能である。つまり子どもたちが無事に帰宅するまで、絶えることのない不安と神経の緊張状態が家中を支配するのである。

カイロ・アメリカン大学は1月革命の直後「大カイロ都市圏の窓を開放:新たなエジプトにおける緊張やトラウマの克服」と題したフィールド研究を行なった。研究によると、エジプト人の約60%に心的外傷後ストレス障害の症状がみられ、彼らは精神科医による治療が必要であると判明した。研究では、研究への協力者たちは、予期せぬほど、協力や、彼らを支配する不安や緊張の感情の表現をする意志を示した。そういった振る舞いはエジプト社会では一般的ではない、もしくは通常受け入れられないにも関わらずである。つまりそこでは、精神的障害そのものが空想の産物として扱われているということである。

(後略)



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:袖山結生 )
( 記事ID:31285 )