Fuat Keymanコラム:トルコを待つ大きな危険
2013年09月04日付 Milliyet 紙

シリアへの軍事介入について、トルコは深刻なジレンマに陥っている。

一方で、トルコのアサド政権へのあらゆる批判が当たっていた。アサド政権は市民を死に追いやり、拷問、処刑、国外逃亡を強いたりするなどの容認できない行為を繰り返し、シリア国内で恐ろしい人道的悲劇をもたらしている。この行為は残酷な化学兵器使用にまで及んだ。今日、トルコのシリア政策は、 人道的、規範的、長期的な政治基準からみて正当なものであり、これを欧米やその他数多くの国が認めている。

しかし他方では、トルコがシリア問題について今日までもっとも深刻な被害を被った国であるということだ。時が経つにつれさらに深刻な被害が及ぶかもしれないリスクを負っている。共和国の歴史の中で最大のテロ行為が[シリア国境の]レイハンルで生じた。事件では53名の尊い命が失われ、数百名が負傷した。

トルコで暮らすシリア人の数は50万人に到達した。数字は急速に伸びていくものと思われる。シリア国境で暮らす自国民も死亡し、またはいつ死ぬかも知れず、恐怖におびえながら生活している。

■私の戦争ではない

オバマ大統領は、アサド政権の化学兵器使用について「確信した」状態だ。また北大西洋条約機構(NATO)のラスムセン事務総長は、「とても具体的な確証がある。シリア政権にこの攻撃活動の責任がある」と語った。

シリアに軍事介入が実施される可能性は非常に高い。しかしこの軍事介入が、アサド政権を激しく弱体化させたり政権交代をもたらしたりするようなものにはならないだろう。軍事介入は、一定地域を「攻撃し退避する」式の限定的かつシンボリックな空爆活動を含むことになろう。オバマ大統領は、シリアで起きている争いについて「一国の内戦」との見解を述べ、「私の戦争ではない、私の軍がシリアの地を踏むことはないだろう」と話した。

では、このシンボリックな軍事介入のあとはどうなる?この疑問は、大いにトルコに関係してくることになる。トルコ、ヨルダン、イスラエルは最もリスクの高い国であると見られている。けれどもはっきりわかっているのは、軍事介入をした場合にトルコがそのあと「最もリスクの高い国になる」ということだ。

アサド政権を崩壊も弱体化もさせない軍事介入が、トルコにとって大きな危険とリスクを孕んでいる?ラスムセンNATO事務総長は、これがおそらく現実となるとの見解を示し「トルコを守るための計画がある」と述べた。オバマ政権もまた、トルコを攻撃から守るとの発表を行った。

本当にそうなのか?NATOやアメリカが、トルコを守るなどできるのか?まったくそうは思わない。

■危険とは何なのか

トルコに及ぶ可能性のある危険を整理しよう。

一、アサド政権がトルコに対し、化学または別種のミサイルを用いて攻撃する。
二、トルコで、レイハンルのようなテロ事件が起きる。
三、トルコで、アレヴィー派を軸とした宗派対立を呼び起こす挑発的行動が計画される。
四、[クルド問題]解決プロセスに悪影響を及ぼす攻撃が組織的に行われる。PKK[クルド労働者党:非合法]問題が再燃し、クルド問題が解決不能な状態に陥る。

第一項目について、アサド政権がトルコを攻撃する可能性は極めて低いと考える。ラスムセンNATO事務総長やオバマ米大統領のトルコを守る旨の発言は、この実現可能性の低さに関係している。それゆえ、トルコ防衛発言は現実的にみて大した意味はない。しかし残りの3項目は、アサド政権[の行動として]予想しうる、実際起こる可能性がある。レイハンルを始めとする、人命が奪われる危険性の高いテロ攻撃は今までに起こっているのだ。アレヴィー派を軸とする宗派対立の可能性は、トルコに限らず国外でも議論されている、深刻に捉えられなければならないリスクである。[クルド問題]解決プロセスは、シリアへの軍事介入によって悪影響が及ぶとして、あらゆるクルド関係者によって言及されている。

ここでひとつはっきりさせておこう。アメリカもNATOも、これらの危険からトルコを助けることは出来やしない。トルコは、自衛しなければならないのだ。 この現実を、理解しなければならない。では、トルコはこれらの危険、リスクに対する備えは十分であろうか?それについては次のコラムで答えてみようと思う。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:池永大駿 )
( 記事ID:31346 )