Orhan Kemal Cengiz コラム:米「大中東プロジェクト」とハーカン・フィダン
2013年10月21日付 Radikal 紙

「エジプト軍、イスラエル、サウジアラビアはいかなるときもアメリカを失望させたことがない」という言葉から、(ウォールストリート・ジャーナル紙のコラム執筆者が)どのような中東を理想としているか見てとることができる。

映画「マトリックス」では、同じ黒猫が二回通り過ぎると、登場人物たちは何か悪いことが起きることをすぐに察知する。マトリックスで、既視感(デジャヴ)は「バグ」として描かれている。つまり基礎部分で発生した異変は、単純な反復を伴って現れるのである。

ここ数週間のうちにアメリカの新聞に掲載された国家諜報機構(MİT)のハーカン・フィダン事務次官に関するブラックプロパガンダ的な記事も、不吉なデジャヴを起こさせる。シックなスーツを着たウォールストリート・ジャーナルとワシントン・ポストの記者たちが、ビロードの手袋に隠した両手を振りながら、異常に「文明的」な様子で話しているが、その背後の壁の向こうからは異臭が漂ってくる。

国家諜報機構のフィダン事務次官は、シリアのジハード戦士を組織し、イスラエルのために活動しているイラン人らをイランへ密告したと非難されている。シリアに関するトルコの役割については、我々も批判している。しかしアメリカのメディアに掲載された記事を読むと、それが批判や警告などといったものではなく、特定の環境を操作する意図で書かれたことが分かるはずだ。

こうした記事は、対シリア政策においてトルコを追い詰め、イランから天然ガスを、中国から防衛システムを手に入れるのを罰する目的で書かれたと言う者もいる。

疑いなくこの説は有力である。しかし私は、新聞に断片的な情報を与えメディアを操作しているアメリカとイスラエルの諜報機関には、もっと大きな策略があると考えている。こうした記事の目的は、特定の事項における政策の変更をエルドアン首相もしくはフィダン氏に対して迫るというものではないだろう。もしくは、そうであってもせいぜい二番目だろう。

真の狙いは、アメリカ政府をはじめとする欧米全体に対し、公正発展党とエルドアン首相は、パートナーになり得ない、信頼のおけない、狂信的で過激なイスラム主義者であると信じ込ませることである。

今日ハーカン・フィダン氏に対して行なわれている瑣末な攻撃を通して浮かび上がる断片的な事態の根幹は、8月24日付のウォールストリート・ジャーナルの記事にある。ラッセル・ミード氏によるこの記事のタイトルは、「失敗に終わったアメリカの中東大戦略」(The Failed Grand Strategy in the Middle East)である。ミード氏によると、オバマ政権の中東戦略は全て失敗に終わった。この戦略は「穏健イスラム主義者」と共に中東の民主化を進めることを計画していた。アメリカ政府は公正発展党のような穏健イスラム主義グループと手を取り合い、中東に民主主義をもたらし、イスラム主義テロ組織を駆逐するはずだった。

しかしミード氏によると、アメリカ政府はこの目標を策定する際、計算を誤った。支援するイスラム主義グループの(政治における)成熟度と能力を読み誤った。アメリカの同盟国サウジアラビアとイスラエルに対するこの政策の影響力を誤算した。中東のテロリストらの活動に生じた新たなダイナミクスを理解できなかった、等。

ミード氏はもちろんエルドアン首相についても長々と書いている。エルドアン首相は新聞記者を逮捕させ、メディアを脅迫し、デモを乱暴に鎮圧した。公正発展党の主要なメンバーらが乱心していき、問題をユダヤ人や念力や神秘的な力などのせいにするようになった。

残念ながら、こうした分析の一部は正しい。しかしもちろんミード氏はトルコのことを思ってこのような指摘をしているわけではない。
ミード氏はアメリカ政府に「対中東政策を変えるべきだ、かつてのやり方にリセットするべきだ」と言っているのだ。まさに「エジプト軍、イスラエル、サウジアラビアはいかなるときもアメリカを失望させたことがない」という言葉から、彼がどのような中東を理想としているのか見てとれる。

ミード氏のこの記事と、この数週間のうちに次々と出たフィダン氏に関する記事は、数日前にイスラエルのアヴィグドール・リーベルマン前外相がフェイスブックに書き込んだ「エルドアンは過激なイスラム主義者だ」という言葉を、欧米全土の頭に刻み込もうとしている。そしてもちろん、「そんな過激なイスラム主義者たちとは民主主義などありえない」という言葉を読者に言わせたがっている。

公正発展党政権は、この窮地を、さらなる民主主義とEUという綱にさらに強くしがみつくことで脱出するのか。それともさらなる陰謀説、さらなる反イスラエル姿勢、そしてさらに微々たる民主主義によってみずから相手の計略にかかっていくのか。さあ、みんなで注目しましょう。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:31749 )