Omer Sahinコラム:どの教団、宗教団体が誰に投票する
2013年12月08日付 Radikal 紙


トルコに純粋な政党がないように、純粋な宗教団体はない。この国には、そのルーツが数百年前に遡るような教団や宗教団体がいくつもある。選挙の前に誰がどこに位置しているのか、一覧を覚えておくと便利だろう。

トルコ最大の関心事であるデルスハーネをめぐって勃発したのは「政府vs宗教団体(訳注:フェトゥフッラー・ギュレン派)」の緊張である。政治でも市井でも、“様々な外野席”においてもこの話題でもちきりである。この話題以外、ほとんど話されていない。ソーシャルメディアではまるで嵐が吹いているようだ。我々が直面する新しい情勢とは、目前にせまる3つの重要な選挙である。こういう状況になると皆の頭に同じ疑問が浮かぶ:フェトゥフッラー・ギュレングループ(ヒズメット運動/奉仕運動)はどうするのか?票は共和人民党や民族主義者行動党にはたして流れるのか?候補者ごとに異なる戦略が練られるのか?あるいはそれでもなお、公正発展党(AKP)の候補者を支持するのか?そのクリスタルの花瓶(訳者註:ここではAKPとギュレン派の関係をたとえている)は割れたのか、それともひびが入ったのか議論すべきところだが、今のところこの質問に対する明確な一つの答えはない。ギュレン運動のスポークスマンを担っている新聞記者・作家財団は、いかなる方向づけも行われないと発表した。公正発展党の「公式」見解を見ると、「問題」は一つもない。なぜなら「宗教団体(ギュレン派)の票は3%、公正発展党への影響は多くても1%」だからだ。政府vsギュレン運動の緊張の波及効果は、もう少し待たねばなるまい。デルスハーネ改革の行方と、その見返りとしての「信頼回復のためのステップ」は、両者の関係をさらに異なる局面へと導くだろう。

公正発展党は、最近の緊張で陣営を固める動きをしており、「宗教団体(ギュレン派)の孤立化」ともいえるような戦略をとっている。「民意プラットフォーム」の名の下、新聞各紙に出された広告でこれを見ることができる。様々な保守層のうち100に上る財団や団体、組織が、政府支持を表明する文書に署名した。この広告は次のことを私たちに思い起こさせた:トルコには純粋な政党がないように、純粋な宗教団体もない。この国には、そのルーツが数百年前に遡るような教団や宗教団体がいくつもある。これらの違いは単に儀礼だけではない。ほとんどがメンデレスーオザルーエルドアン・ラインに近いとはいえ、政治的考えが一対一の相関関係にあるとは言えない。近年、公正発展党と「同じ園のバラ/同じ山の風」だとみなされている教団や宗教団体は、自分たちの内部分裂についても忘れてはならない。今日、ヌルジュ派、ナクシュバンディー派、カディリ派として知られるグループの内部では、数十もの下部グループがあるのだ。

まず、述べたことを繰り返そう。トルコでは純粋なる「ヒズメット運動/奉仕運動」は存在しない。宗教団体や教団が(数多く)存在するという点で豊かな国である。近づく選挙の前に誰がどこに位置しているのか、一覧を覚えておくと便利だろう。「宗教団体(ギュレン派)」以外のものに目を向けてみよう。

■ヌルジュ派

ヒズメット運動/奉仕運動(ギュレン派)の着想の源であるサイード・ヌルスィーを「導師」とみなし、彼の作品である『光の書』を読む人びとの総称。「ヌルジュ」。イェニアジア(新アジア派)やイェニネスィル(新世代派)、オクユジュ(読者派)やヤズジュ(書家派)、クルクンジュ・ホジャのようなグループがあることで知られている。サイード・ヌルスィーの弟子で、今も存命な、メフメト・クルクンジュ、メフメト・フルンジュ、サイード・オズデミルは「アービー(訳注:字義どうりなら、『兄』)して知られる。彼らは、エルバカンではなくメンデレスから始まった「民主主義」の伝統に忠実である。彼らのほとんどが「2月28日過程」までデミレルを支持していた。フェトゥフッラー・ギュレングループのように、この流れをくむ者らはオザルから寵愛を受けた。「ヌルジュ」グループでは2002年以降、正道党(民主党)との関係を継続する者がいたが、最近ではほとんどの票が公正発展党へ流れている。目前に迫る選挙でもそうなることが予想されている。

■メンズィルジ派

アドゥヤマンのメンズィル村からその名が付けられた。トルコで最も広範に広まっているグループ。「サマルカンドとビルヴァニス」グループとしても知られている。全産業家実業家協会(TÜMSİAD)の名で最近力を強めてきた実業家協会がある。公正発展党内部でも強い力を持つグループとされている。「メンズィルジ」の中でも大統一党や民族主義者行動党に近い立場の者がいるが、それでもやはり公正発展党にまとまった形で支持が寄せられている。

■イスケンデル・パシャ派

故エルバカンやオザルとの絆が深い宗教団体。公正発展党の主要幹部の多くはこの流れをくむ。「2月28日過程」以降オーストラリアへ移った指導者のエサド・ジョシャン教授は、2001年に交通事故で死去している。後継に息子のヌレッティン・ジョシャン氏が就任。最近の選挙では、民族主義者行動党への投票呼びかけを行ったが、ほとんどが公正発展党に投票していると言われている。イスケンデル・パシャ派は、公正発展党にさらに接近した。イスケンデル・パシャ派の信奉者らは、一部の地域で、自分に近い立場の民族主義者行動党や大統一党、至福党の候補者にも票を入れると言われている。

■イスマイルアーグループ

ファーティフ・チャルシャンバ(地区の名)と同定される、ターバンと法衣で注目を引く団体。シャイフのポストにはマフムト・ウスタオスマンオールが就いている。公正発展党に近く、また、過去はさらにエルバカンホジャ(ネジメッティン・エルバカン)や至福党に投票したことで知られる。若い世代に人気のあるジュッペリ・アフメトホジャも内部にかくまうイスマイルアーグループの方針は、公正発展党と至福党に寄っている。

■エレンキョイグループ

エルビッリ・メフメト・エサト・エフェンディがエレンキョイに購入した邸宅に拠点を置く。ナクシュバンディーの伝統を受け継ぐ。エサトの後継者であるマフムト・サミ・ラマザンオールによって宗教組織化されたともいえる。エレンキョイグループの指揮は、オスマン・ヌリ・トプバシュ・ホジャが執っている。アンカラではムラディイェ財団として知られている。公正発展党と「問題なし」の関係を歩んでいる宗教グループの筆頭がエレンキョイグループである。

■スレイマンジュ派

学生寮やコーラン教室を介して、トルコや世界の各地域で存在感を高めている。創始者がスレイマン・ヒルミ・トゥナハンであることから「スレイマンジュ」として知られる。トゥナハンの娘婿であるケマル・カチャルの死後、二人の孫アフメトとメフメト・デニズオルグンの間に問題が発生した。「指導者」だと見られていたアリフ・アフメト・デニズオルグンが、メスト・ユルマズ政権で短期間だが交通大臣を歴任した。公正発展党との関係が良好ではなく、祖国党と民族主義者行動党を支持してきた。兄弟のメフメト・デニズオルグンはというと、公正発展党から国会議員を二期務めた。スレイマンジュは地方選挙で「候補者(人物)」優先の投票行動を行うと予想されている。大半の票が民族主義者行動党と公正発展党に行く。

■ヤフヤルグループ

カイセリのヤフヤルに拠点を置くナクシュバンディー教団の流れをくむ。その名をヤフヤル・ハジュ・ハサン・エフェンディから取った。カイセリ以外の地域でも組織化されているこの団体は、「ミッリー・ギョルシュ(国民の視座)」の方向性に近い。至福党や人民の声党をも支持する団体であるが、比重は公正発展党にある。

■カディリ教団

カディリ教団は様々な派に分かれている。イスタンブル、アンカラ、デュズジェに集中している「ムハンメディイェ」派のリーダーはセイイド・ムハンマド・ウスタオールである。投票行動は公正発展党寄りである。

■ハルヴェティ・シャバニイェグループ

ハルヴェティ教団の中で最も活動的なグループ。指導者ポストにはメフメト・ドゥムルが就いている。男女が一緒にズィクルに参加することができる。公正発展党に近い立場をとっている。

■ハキカトグループ

フェトゥフッラー・ギュレンをはじめとするヌルジュやスレイマンジュ派の全てのグループに対する厳しい批判で注目を集めている。指導者でゲブゼに暮らすオメル・オンギュトは2年前に亡くなったが、後継に退役軍人が就いた。地域に根差した団体で、特定の政治的傾向はない。

■ティッロとノルシンのシェイフ

メドレセ的伝統をもつ二つの強力なグループとして知られている。ティッロの指導者が支持するのは「義兄弟」タイイプ・エルドアンであり、公正発展党寄りとなっている。ノルシングループは一方、ヌマン・クルトゥルムシュの人民の声党に近かかった。今度の選挙では公正発展党を支持する予定だ。

■ウシュクチュ

ヒュセイン・ヒルミ・ウシュクからその名を取り、トルコ新聞とイフラスホールディングを築き、今年(訳者註:原文では昨年となっているが、亡くなったのは2013年2月22日)亡くなったエンヴェル・オレンに象徴される運動。トゥルグト・オザルの後、公正発展党とエルドアン首相にすべての支持を寄せてきた。このサポートは次回の選挙でも続く予定だ。

■ヒュダ・パルとクルド・イスラム主義者

ヒズボラ運動に近いヒュダ・パルは、東部と南東部の組織。選挙では自らの候補者を支持する予定。トルコのクルド人の間で積極的に活動を行う宗教組織と教団の票は、今日まで公正発展党と平和民主党以外に流れなかった。クルド人の間で活動的なもう一つの団体に、ナクシュバンディー教団系の「ハズネヴィ」がある。

■ハイダルバシュグループ

労働者党の指導者であるドウ・ペリンチェキと同じ見解をもつ、民族主義的団体。指導者であるハイダル・バシュ教授は、カディリ教団の「イジマル派」として知られている。バシュ氏が党首である独立トルコ党を支持している。ハイダル・バシュは、シリアのアサド大統領に反対するものを強く非難していた。

■アドナンホジャ派

昔の言い回しで言うところの「特異な(nevi şahsına münhasır)」運動。アドナンホジャ派は、彼が「私の子猫」と呼ぶモデル風の若い男女の集団として知られている。一時期、エルバカンホジャと近い関係にあったアドナンホジャは、最近彼が「タイイプホジャ」とよぶエルドアン首相と公正発展党に熱いメッセージを送っている。

■ガリビ派

カディリ・ルファイ教団の伝統につながる。一時期「シシチェクメ」の儀式で話題になった、指導者であるハジュ・ガリプ・ハサン・クシュチュオールから「ガリビ派」と名づけられた団体。アンカラで商人の間で組織されている。政治的スタンスは公正発展党に近い。



本記事はAsahi 中東マガジンでも紹介されています。

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( 翻訳者:小川まどか )
( 記事ID:32208 )