Ismet Berkan コラム:(与党 vs.ギュレン教団)心理戦に勝者はあるのか?
2013年12月28日付 Hurriyet 紙

トルコでは、ずいぶん前から、心理戦が繰り広げられてきた。

2つ勢力の戦いだ。一方は、政府と与党、およびその全宣伝機関。もう一方は、教団(ジェマート)と呼ばれてきた「組織」と、その全宣伝機関。この戦いで、一歩リードすること、ほんの僅かな差でも前にでること、あるいは相手方のリードをつぶすためなら、どんなことでもなされてきた。もっとも神聖で気高いことだと思われてきたことでも、国の将来にとって非常に重要なことでも、何もかもが、この戦いの道具とされている。

さらにいうと、この戦いは、陰でこっそり行われているわけではない。世間の目のまえで、世界中の目が注がれる中で行われている。まずは、これをみていこう。これは、確認作業である。

この戦いは、合法的な政治的手法、合法的な司法手段があるにもかかわらず、腰より下を狙った反則行為や、間接的な、あるいは、意味深な、あるいは、呪い(beddua)だの恨みだのといった演説[注:ギュレン師がネット配信した「呪うbeddua」という言葉を含んだ演説を指す]を通じて行われている。そして、収賄から民主化、教育から経済発展にいたる、全ての重要なことがらが、権力闘争の単純な道具にされている。この戦いは、我々が、いかに腐敗した世界にいきているかの、明らかな証拠となっている。

今、我々は、これまで想像すらできなかったようなことを目にしている。この「想像すらできなかったこと」を普通のことにように受け止めることが求められている。我々に求められているのは、「普通のことのように受け止める」ということだけではない。加えて、今、二つの勢力のどちらの肩をもつのかの選択が求められている。戦いの当事者らにとっては、この戦いは、あまりにも重要で、致命的であるがゆえに、ほかのすべてのことは、シリンダーでつぶしても、回りすべてをぶち壊し、めちゃくちゃにしてもいいと思っている。二つの勢力のひとつを選ぶか、あるいは、消えてなくなれ、というわけだ。まるでほかの選択肢はないというかのように。

心理戦というのは、その性格上、終わりのない、勝者もいない戦いである。その意味で、本当の戦争とはいえないが、どうしても軍事用語で説明しようとするなら、いっこうに終わらない戦闘に喩えることができるだろう。毎日、前線ではなにかがおこる。互いに砲弾がとびかう。どちらかかが僅かに前にでることもあるが、長い目でみると戦況はたいして変わらない。この間に、何百、何千という死者がでる。

今日現在、この心理戦の短期的なターゲットは、3月30日の地方選のようにみえる。一方では、不正収賄疑惑が辺り一面にひろがり、一報では陰謀説がばかまかれる。

この出来事を、まるでサッカーの試合か、遠くの戦争の話のように解説したいものだと思うが、そうもいかない。なぜなら、ほんとうに我々みなの生活がかかっているからだ。子供たちの将来がかかっているからだ。この心理戦によって、我が国の将来の姿も決まろうとしている。

「不正疑惑、徹底究明!」だ。しかし、不正疑惑の追及をしようとしているものすべてが、司法の捜査どころか、イスタンブル新空港を批判しているものまでもが、スパイ容疑だの、祖国への裏切りだの、外国勢力への協力だの、政府に対する陰謀への意識的・無意識での協力だのといって、罪をなすりつけられている。

しかし、今がこの状況なら、明日になったら、我々は為政者をどう監督することができるのだろう。どうやって、過ちを正させることができるのか。今、我々はどんな法的な秩序を作ろうとしているのか。

これに対し、別の見方はできないものなのか。国家のなかに隠れた組織を清算するための方法は、社会のなかの(政府に批判的な)諸層をひとまとめにして「脅迫」としてみることだけではないだろう。そうではなく、国家権力にチェック機能を働かせ、政府を手に入れ権力を手中に収めるという彼らの計画自体を、無に帰するということもあるはずだ。

収賄はトルコでいつも深刻な問題だった。しかし、今になってわかることは、収賄のできないような法体制を、今なお作れないでいたということだ。政府は、入札法を変え続け、この法を成立させる気がないことを示している。

政府のなかの秘密組織や、誰かが後ろで糸を引いているという状況も、今にはじまったことではない。ずっと前から問題になってきたことだ。しかし、それを防ぐ法律もつくっていない。おそらく、防ぐことなど考えられたこともなく、その代わりに、国家権力を自分のものにしておきさえすればいいと思ってきたのだ。

今現在、トルコでは、この戦争が繰り広げられている。しかし、将来、その状況はかわるのだろうか?新しい、より民主的で、よりチェック機能の働く法体制を作れるのか。

私には疑わしい・・。

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( 翻訳者:和泉由美子 )
( 記事ID:32421 )